冒険者アメの初仕事
アメを挟んで左右にランロットとプレスが横に並ぶ。
彼女たちの前にいるのはギルドマスターであるシモン・マンダールである。彼は隣にいるスタッフから羊皮紙が入ったお盆を受け取ると、立派なお盆ごとアメに差し出す。
瞳の光をきゅるっと動かしたアメがお盆を受け取るとぎこちないお辞儀をする。それに合わせランロットとプレスも深々とお辞儀をする。
「以上の手続きを持ってアメ、ランロット、プレスの三名を正式に冒険者として認める。これからの活躍を期待している」
こくりと頷いたアメがチラッと隣にいるランロットを見ると、ランロットがほぼ口を開かずに呟く。それに反応し耳をぴくっと動かしたアメは、シモンを自信満々な表情で見つめる。
「ご期待に応えられるよう精進いたします」
元気よく発言するアメにランロットとプレスはもちろん、シモンたちをはじめとした周りの人たちも微笑み温かい拍手で称える。
***
そこそこ大きめな建物を前に立ったアメは屋根を見上げ見る。緑色の屋根やクリーム色の壁は塗りたてなのか真新しい光沢を放っている。
「綺麗に仕上がっておりますね」
「うん、大工さんたち頑張ってくれた」
「それも彼らの思いに誠実にお応えしたアメ様のお人柄あってのこそです」
塗りたての建物を見上げていたアメはランロットの言葉に首をかしげ不思議そうな顔をする。
「普通に依頼をこなしただけだけど」
「魔物討伐ではなく害獣に畑や、木材を得るための森林を荒らされるなどの依頼は報奨金も低く人気がありませんゆえ受ける人も少ないのが現実です。最速で完璧にこなされたアメ様には皆が感謝されていました」
「そうなの? 喜んでくれたならいいけど」
ニコッと笑ったアメにランロットとプレスは微笑んで応える。そのまま建物の中に入った三人は感嘆のため息をつく。
「内装もさることながらテーブルや椅子や家具まで作ってくださるとは感謝してもしきれませんね」
「立派な鍛冶場も作ってくれた……嬉しい」
ランロットとプレスの言葉に笑顔のアメが大きく頷く。
「さて、立派な台所もありますことですし、お昼ご飯の準備をいたしましょうか」
「わ~い! お昼ご飯好き!」
アメが両手を挙げて喜んだときだった。玄関のドアが鉄の輪でできたノッカーで叩かれる。
「おや? お客様のようですね」
足を止めたランロットが玄関へ向かう。扉を開けるとそこに立っていた小太りな男性が一人立っていた。ランロットを見てホッとしたのか額の汗を服の袖でぬぐうと慌てて握りしめていた丸まった羊皮紙を差し出す。
「突然申し訳ありません! 私ギルドのブロルと申します。こちらに勇者の再来と言われる冒険者アメの力を借りたく馳せ参じました」
「ギルドの方が直接依頼とは穏やかではありませんね。立ち話もなんでしょうからどうぞこちへ」
ランロットが促すと少し戸惑った様子のブロルだったが言われるがまま真新しい椅子に座り、出されたお茶に口をつける。
「今しがた引っ越したばかりでして大したおもてなしができず申し訳ございません」
「いいやお構いなく。おっとそれよりもこちらを」
ブロルはもう一度お茶に口をつけると丸めていた羊皮紙を開いてテーブルに広げる。アメたち三人がのぞき込んだところでブロルが説明を始める。
「冒険者アメたちにお願いしたいのは行方不明……いえ正しくはある屋敷の中に入ってから出てこない冒険者たちの捜索と救助をお願いしたいのです」
「屋敷の中? 場所が分からないのならまだしも分かっているのでしたらそこへ派遣すればよろしいのではないでしょうか?」
ランロットの指摘にブロルは頭をかく。
「え、ええ既に三チーム手配し救助に向かってもらったのですが……その、誰も帰還せずもうどうしようもなく。そこでとてもお強いと噂される冒険者アメにお願いしに来た次第です……はい」
言いずらそうにし話を終えたブロルがアメの方をチラッと見るとアメは考えるまでもないといった様子で頷く。
「いいよ。依頼受ける」
あっさりと承諾するアメに呆気にとられたブロルだったが軽く首を横に振って表情を引き締めると立ち上がり頭を下げる。
「本当にありがとうございます。探索依頼は未知な要素と救助という観点から危険が伴うことも多くあまり受けてもらえず困っておりまして。まして既に三チームも帰ってこないとなると誰も相手をしてくれませんでして。ここには藁にも縋る思いで来まして。はぁ~いやはや本当に助かります」
ホッとしたのか色々と内情をぶちまけてしまうブロルだが、それにも気づかずにアメに手を差し出し握手を求める。握手に応じたアメの手をブンブンと縦に振り簡単な説明を終えたブロルは足早に帰っていく。
「さてさて、正式な冒険者になって早速の依頼でございますね。準備に取りかかりましょう。おっとまずはお昼ご飯が先ですね」
「うん、お昼ご飯!」
依頼を受けてもマイペースな二人を見て笑いながらプレスもお昼ご飯の準備を手伝いに行くのだった。




