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蹴り飛ばせ! 恋するカエル姫は愛しの王子様の元へと蹴り進む!!  作者: 功野 涼し


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よく寝てよく食べればよくなる!

 ベッドで横になっているプレスの胸に聴診器を当て音を確認した医者は、耳から外した聴診器を首にかける。


「寝不足と疲労からくるものだろう。栄養のあるものを食べてゆっくり休んだら治るはずだ」


「ありがとうございます」


「ありがと」


 医者の言葉にランロットがお礼を述べるとそれにアメが続く。


「それにしても倒れるまでお仕事とは穏やかではないな。職人の世界は厳しいとは聞くが倒れてしまっては元も子もないと思うんだがね……おっと愚痴っぽくなってしまった。これは失礼」


「いえいえ、全く同意でございます」


 医者とランロットが言葉を交わしているなか、目をうっすらと開けたプレスが自分をジッと見つめるアメを見て目を丸くして驚く。


「起きた」


「こ、ここは……」


「こら、起きたらダメだ」


 見知らぬ場所に加え、見知らない少女が目の前にいたことから不安と焦りから体を起こそうとしたプレスをアメが手で押さえつける。巨体のプレスがもがくがアメの手の力が強すぎて起き上がることができない。


「アメ様、力が強すぎます」


「あ、ごめん」


 ランロットに注意されたアメは謝罪しながら手を放す。解放されたプレスはアメに押さえつけられないために、体を起こさないように注意しながら、おそるおそるアメたちを見ている。


「誰か知らんけどよく休め」


 アメが近づくとプレスがビクッと体を震わせて身を引くのでアメは自分の右手を見つめてから左で押さえる。


「お名前はプレス様で合ってますでしょうか?」


 ランロットが尋ねるとプレスは無言でうなずく。


「簡単に説明いたしますとプレス様は仕事場で倒れられていたのです。仕事場のお仲間の反対はありましたが、我々が強引に病院に連れてきました」


 ランロットの言葉を聞いた瞬間プレスが目を見開き体を起こしてベッドから出ようとする。


「寝てないとダメだろ」


 だがアメに押されてあっさりとベッドに戻される。小さな見た目にそぐわない強い力に驚きを隠せない様子でまじまじとアメを見る。


「よく寝てよく食べろってお医者が言ってる。ちゃんと守れ」


「の、納期が……ある。やらないと」


 プレスが必死に訴えたときいつの間にか入って来ていた、病室の入り口に一人の男が立っていて壁を叩く。


「いいこと言うじゃねえか。仕事もせずにこんなとこで寝てる暇ねえもんな」


「フォルジェさん……」


「さあ帰るぞ!」


 フォルジェがプレスの元に乱暴な足音をたてながら向かって行くが、アメが立ち塞がる。


「んだこのガキ? あぁあれか、最近噂になってるガキが来てプレスを連れて行ったとかうちのヤツが言ってたな」


 フォルジェが眉間にしわを寄せにらむが、アメは気にすることもなく目をパチパチさせて見つめ返す。


「そんで噂のガキはうちの従業員をどうするつもりだ?」


「よく食べさせて、よく眠ってもらう」


「はぁ? そんなガキみたいなことさせてどうすんだ? いいかこいつにはやらなきゃいけない仕事があるんだ。分かるよな?」


 顔を近づけ、すごむフォルジェだがアメには効果がなく表情も変えずに見ている。それが気に食わないのかフォルジェは舌打ちをして手を伸ばしてアメの胸ぐらを掴もうとする。


「あんたらの事情は分からんけど医者として言わせてもらえれば、今の状態でこの患者を働かせるのは常識的になしだがな。せめて今日一日は安静にさせることをオススメする。まあ、ここで無理させて一生を棒に振らせるって言うんなら止めはせんが」


 ヒートアップするフォルジェとアメのやり取りに口を挟んできた医者は、アメを掴む手を止めたフォルジェだけでなくプレスの方も見ながら両方に諭すように話す。


「ちっ、いいか明日から倍働けよ! てめえのせいで納期が遅れたらただじゃおかねえからな!」


 医者の一言にあからさまに苛立ち、捨て台詞を吐きながらフォルジェはその場を去って行く。


「うるさいのが帰った。これで寝れるな」


 フォルジェがいなくなってすぐにアメが嬉しそうにプレスの方を振り返り肩をパシパシと叩く。


「な、なんで……こんなに世話してくれる? ……知り合いでも……ないのに」


 かすれた声で尋ねるプレスに対してアメが満面の笑みで答える。


「お腹空いてる人と、困っている人は助ける。アメも助けてもらったからな」


「アメ様はそのようなお方ですのでお気になさらずに。それではわたくしたちはこれにて失礼いたします。また明日の朝お伺いいたし、お仕事の場所まで送らせていただきます」


「そ、そこまで……」


「また明日! よく食べるんだ」


 遠慮がちなプレスの言葉を遮ってアメがプレスの肩を叩くと機嫌よく出て行く。


「それでは失礼いたします」


 続いてランロットがお辞儀をして去って行く。残されたプレスは二人が去った入り口を見つめ戸惑いの表情を見せる。

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