第84話 動揺する評議会
継承評議会は、かつてない緊張の中で開かれた。
議題は単純。
――期限内に王位を確定させるか否か。
だが空気は重い。
大公クラウディウスが最初に口を開いた。
「もはや猶予はない」
「継承順位に従い、即位宣言を行うべきだ」
王太子を推す発言。
だが純粋な支持ではない。
安定優先。
財務卿も頷く。
「市場は確定を望む」
軍務卿は別の方向を見る。
「北方は力を測っている」
「強い意思を示す必要がある」
それは第二王子寄り。
商会代表マルコは冷静に言う。
「誰でもよい」
「確定せよ」
冷酷だが本音。
セラフィナは視線を巡らせる。
「基準は未完だ」
「最終評価はまだ出ていない」
だが期限は迫る。
レオンが静かに言う。
「辞退を再検討する」
室内がざわつく。
「私が残ることで均衡が続くなら、揺らぎも続く」
王太子が顔を上げる。
「逃げるな」
初めて感情が滲む。
「私は逃げぬ」
レオンは即座に返す。
「だが国家は均衡では守れぬ時もある」
沈黙。
第二王子が言う。
「兄上が即位するなら、私は従う」
穏やかだが重い。
「だが北方への即応判断は私に委ねよ」
条件提示。
実質的な分権。
大公の目が細まる。
分権は王権を弱める。
議論は割れる。
即位優先派。
基準完遂派。
暫定体制派。
声が重なる。
制度設計監査室長としての発言を求められる。
全員の視線が集まる。
リリアーナは立ち上がる。
「基準未完の即位は、制度を損ないます」
静かな声。
「だが市場凍結は国家を損ないます」
矛盾を認める。
「選択は二つではありません」
円卓を見渡す。
「王位確定と同時に、継承評議会を恒久機関として法制化」
「即位後も評価は続く」
室内が静まる。
「王は確定する」
「だが制度は終わらない」
折衷案。
セラフィナがゆっくり頷く。
「それなら基準は生きる」
大公は低く言う。
「王太子が即位し、弟が軍事を担う」
第二王子は無言。
レオンは目を伏せる。
議論は収束しかける。
だが。
城下で小規模暴動発生の報が入る。
「王を決めろ」
叫び。
兵が出動。
室内の空気が一変する。
時間は残り十二日。
市場は揺れ。
北方は待ち。
城下は不安。
動揺は評議会の中にも広がっていた。
そして。
リリアーナは初めて明確に感じる。
自分の設計が、今、国家の重さに押されていることを。
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