第83話 連盟の条件強化
南方交易都市連盟からの第二書簡は、北方代表滞在中に届いた。
封は赤。
緊急扱い。
財務卿が読み上げる。
「王位継承の確定期限を十四日以内とする」
円卓室の空気が凍る。
北方と同じ期限。
偶然ではない。
「期限内に王位が確定しない場合、対王国長期投資の一部凍結を実施」
実行予告。
交渉ではない。
市場原理。
王太子が低く問う。
「凍結規模は」
「全体の三割」
重い。
港湾整備、穀物輸入、軍需契約。
全てに波及する。
レオンが即座に言う。
「為替が動く」
財務卿が頷く。
「すでに商会が様子見に入っている」
第二王子が静かに言う。
「合理だ」
「不安定な国に資本は流れぬ」
セラフィナが淡々と整理する。
「北方の圧」
「連盟の凍結」
「期限は同時」
王位問題は、もはや国内の議論ではない。
夜。
城下。
穀物価格が上昇。
商人が仕入れを控える。
噂が広がる。
「王を決めろ」
「戦になるぞ」
市場は理屈より速い。
制度設計監査室。
ルークが報告する。
「小規模な取り付け騒ぎが発生」
預金引き出し。
信用不安。
リリアーナは静かに言う。
「想定より早い」
制度は整っている。
だが市場は待たない。
翌朝。
連盟副代表リヴィア・セレスが王宮へ現れる。
若い。
だが目は冷静。
「市場は感情で動きません」
穏やかな声。
「安定が見えなければ切る」
リリアーナと視線が交わる。
似ている。
だが温度が違う。
「十四日以内に王位確定」
「さもなくば凍結実行」
交渉の余地は少ない。
「暫定宣言では不十分か」
王太子が問う。
「十分ではありません」
即答。
「市場は“確定”を好みます」
冷徹。
だが理にかなう。
回廊。
リヴィアがリリアーナに言う。
「あなたは均衡を好む」
「はい」
「市場は決断を好む」
短い沈黙。
「あなたならどうしますか」
リリアーナが問う。
「即決します」
迷いなく。
「痛みは短く、早く」
冷たい合理。
夜。
円卓室。
三候補が集まる。
王太子。
第二王子。
レオン。
十四日。
北方圧。
投資凍結。
市場不安。
沈黙の中。
第二王子が言う。
「決めるべきだ」
王太子は目を閉じる。
レオンは何も言わない。
そして。
リリアーナは初めて、自分の設計が時間に追いつかないことを感じていた。
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