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第81話|そのまま戻る

朝、彼は端末を開いた。


一覧は静かに表示される。

更新時刻は整い、

異常欄も存在しない。


画面は今日も完成していた。


彼は一件目を開く。


内容を読み終える。


確認ボタンには触れない。


画面を閉じることもしない。


しばらくして、電話が鳴る。


彼は席を立ち、

短いやり取りを終えて戻ってくる。


端末はそのままだった。


画面も、文章も、

カーソルの位置も変わっていない。


何かを失った感じはしなかった。


午前中の処理は予定どおり進む。


急いだ案件もあれば、

途中で止まった案件もある。


どちらも最後には完了した。


昼前、新しい担当者が席へ戻ってきた。


開いたままの画面を見て、

小さく笑う。


「戻ってこれますね」


彼は頷いた。


「閉じなくても、大丈夫みたいです」


午後、ログを確認する。


完了した案件だけが並んでいる。


途中で席を離れたことも、

途中で考えるのをやめたことも、

途中で戻ってきたことも、


どこにも残っていない。


夕方、一覧へ戻る。


何もない余白は、

もう探す場所ではなかった。


そこがあることで、

途中までのまま戻ってこられる。


そんな気がした。


定時、端末を閉じる。


今日も運用は正常だった。

異常も遅延も表示されていない。


ただ、


戻ることを急がなくてもよい一日が、


静かに終わっていた。

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