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アルバイターになるんだろ!

そう自身に喝を入れる面接会場、という名の店舗ガレージの隅。


少し整理された空間に、私とあと6人が列んでいた。

カフェのバイトで、ホールスタッフを3人募集しているようなのだ。

そして、ここにはアリアーコルさんが何故かいる。

どれで応募したのだろう。


店長は20代中盤だと思われる小綺麗な女性だ。

名前の確認をされて、面接が始まる。

数個の質問しかしないようで、しばらく問答をした後に次の人にわたる。

わざわざ全員招き入れる必要はあるのかなんて考えていると、前にいた3人は終わり、私の番が回ってくる。


「リリ・ヴァーグです。ここのこだわりを持った珈琲豆を知って、珈琲が好きなのでここで働きたいと思いました。制服もかわいくて学業と両立がしやすかったので応募しました。」


「シフトはどれくらい入れますか?あと、働けない日はありますか?」

「現在、別の仕事で案件を3個抱えているので休日は難しいのと、学生なので、平日の13時までは働けません。」


書類の備考のところに、働ける時間があまりないことは書いていた。

やる気がないと思われて、落とされても仕方無いぐらいの気持ちで。

ファッションデザインの仕事をSNSで探して受けていたので、何個かすでに仕事があるのだ。

現在は趣味で応募したコンテストで受賞したキャラのデザインのブラッシュアップが1つ仕事で残ってる。

残り2件がアパレルファッションのデザインと、アーティストさんのライブ衣装制作だ。


その後も質疑応答が2個ほど続き、店長のメモが終わると次の人の番になる。

既に、インターネット運用で知名度を頑張って稼ぎながら、仕事を見繕っている。

前世で元々衣装制作をやっていたのもあり、いつか個人ブランドをまた持ちたい。


でも、何よりも、接客には関係ない。

そして、注目のアリアーコルさんの番になる。


「私は、体型を常に保って体重管理もしていて、身なりにはとても気を使っています。接客は、以前勤めていたワトアール喫茶店でも経験があり、綺麗で細かい所作や、お客様への気配りや丁寧な言葉遣いに長けていると自負しています。また学生ですが、通勤時間に時間がかからないので、多く出ることができます」


「以前の喫茶店をやめた理由はなんでしょうか?」


この面接中に始めて聞いた少し緊張している店長の声に私の体も強張る。

ワトアール喫茶店はインターネットにも流れてきたほど有名で、お高い気品のある、辞めるにはもったいない気のする店だ。

チェーン店というわけでもない、ここから少し遠くにあったはずだ。


「以前はワトアール喫茶店のあるキルチスに住んでいたのですが、今の自宅に引っ越すことになり、通勤が厳しくなったので退職させて頂きました。」

「なるほど、アリアコール家系のお方が、うちを選んでいただけた理由を伺えないですかね…?」


店長が恐る恐ると聞く。

アリアコール家のことを最初アリアーコルさんは自慢げにしていたが、やはり有名なのだろうか。

というか、この人はリアリィスさんじゃない気がする。

歴史を見ていたが未だに出てこないのだ、アリアコール家が。


「可愛くてかっこいいものがとても好きで、制服もお料理も素敵だと感じました。家柄に縛られるのは好きではないんですけど、この店が好きなのでここで働きたいと思ったんです。最初にSNSで宣伝動画を見て一目惚れしたんです!」


(嘘だ…!あんた私に相当な物言いしたろうが!)


いやいや家柄自慢してただろ、と思わずツッコみたくなったが、多分リアリィスさんではないかみしれないけど。

別に今言わなくても話は繋がったのに敢えて言う。

第一印象で威嚇をされたこともあってそんな風の不満と疑問を持つ。

妙に胡散臭いと思うが、確かにインターネット上のあちこちで話題になっている店なので、説得力がないわけではない。

それに、この年頃のきちんと甘やかされて育ってそうな子供なら、憧れてもおかしくなさそうではある。

ただ、チープで俗っぽいところに推定高慢お嬢様が惹かれているという違和感以外は。


「んー…、わかりました。では、最後、お願いします」


最後、と言われて目を向けると、豪華で独特の形の服を着ている少女がいる。

ファンシーでドレスのようなでも裾はカットされた形の服で…、所謂ゲームのキャラを彷彿とさせた。

黄緑と緑のオッドアイの瞳にピンク色の髪は華やかで、場違い…で。

ヤカラを言ってしまうと、周りを馬鹿にしたような服を着ることを躊躇わない厚顔無恥さには周りの気力も萎える。


「接客マナー検定1級、飲食サービス技能検定1級、カラーコーディネート検定準1級、コスメマスター検定2級、フォーマルマナー検定1級、メンタルマネージコミュニケーション資格。」

「履歴書にもある通り持っています。また、コーヒーグラインダー資格やオフィスソフトIT資格、美芸教養検定のようなお客様に寄り添えるような知識と技量も持っています。これにより、最適な言葉選び、共感をすることで多くの人の疲れを癒せると考えています。」


前言撤回をする。

凄い量の資格を持っていた。

スパイですか?みたいな資格の量で思わず焦ると同時に感動する。

この世界にもたくさん資格があったのだと。


「わかりました。どうしてそれほどの資格を?」

「あぁ〜…知識を取り入れてから、それを確かめる機会が欲しくて。あと社会に自分の好きと得意を認めてもらえる証明書ですから。」

「分かりました。では後日、改めて合否の連絡を入れさせていただきます。」


その店主の一言に他の人が退出の準備を始める。

カニナさんは準備もせずゆっくりと姿勢を正して座っていた。

少し困ったようにカニナさんがそう言うのを思い出し不思議に感じる。

あの悩むように出力された『あぁ〜…』から出てくるなんてホントに今気づいたように聞こえる。

この子の行動原理は少し変なのかもしれない。


そう思いながら、ようやく私も荷物をまとめる。

2人ほど、既に出始めたから。

私の後ろにはカニナさんだけが残っていて、私は彼女を置いて出ると、駆け足で帰った。


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