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11.練習あるのみ

「違います、お嬢様。そこはターンです。はいやり直し」

「っ、はい!」


 ジャンの指摘を受け、自分のミスを自覚する。額を伝う汗をやや乱暴に拭った。

 


 ーー私は収穫祭に向け、豊穣の舞を練習していた。



 あの後。

 母に真意を尋ねたところ、母も私に舞を踊らせるのは酷だと思ったらしいのだが、何と、お祖父様が私が舞を踊ることを預言したと言う。

 預言の重要さを知っている母は、悩んだ末、私にこの大役を任せることにしたのだと教えてくれた。


 (詳しくはお祖父様に聞くよう言われたけど、お祖父様はここ最近忙しいみたいで、お会いできてないんだよね)


 お祖父様は毎年この収穫祭を楽しみにしており、まるっと5連休を申請するため、現在仕事に打ち込んでいるらしいのだ。

 魔法使いのショーにも参加予定だと聞いているので、かなり予定が詰まっていることが想像できる。

 

 かく言う私も、残された時間は少ない。


(収穫祭まで、あと2ヶ月……!!ぎりぎり及第点ってところまで仕上げないと!)


 ジャンとハンナも協力してくれている。ダンスも、昨日よりは、成長している筈だ。そうだと信じたい。


 誰だって苦手なものはある。でも、人間は成長する生き物だ。努力すれば、一歩ずつでも前に進めると信じている。


「お嬢様、今日はもう辞めにしますか?」

「っ、まだまだ……!!」


 私達の特訓は、始まったばかりだ。




◇◇◇



「アデルは大丈夫なのか?」


 収穫祭の準備に勤しむウィリアムを手伝っていると、突然そう尋ねられた。


「アリシア、君が匙を投げたんだろう。酷なことだが、向いていないのならアデルが傷つかないうちに辞めさせるべきだ。例え義父上の預言があったとしても、アデルが苦しむ姿は見たくない」


 ウィリアムの言い分は理解できる。私も少し前までそう考えて悩んでいたからだ。


「……不思議なのよ」


「ん?」


「アデルの踊りは、下手というよりもーー」


 私はそこで、躊躇うように言葉を区切る。次いで、どう表現すれば良いのか迷いながらも、心の内を吐露していった。


「……不自然なの。どれだけ練習しても、踊り慣れていないかのような動きをするのよ」


「それは、本当に踊り慣れていないからでは……」


「違うのよ。あの子はーー」




 何故『私』が踊っているんだろう?




 そんな顔をして、不思議そうに踊るのだ。




 ◇◇◇



「はあっ、はあ……!!け、結構上達したんじゃないかな!?」

「はい、お嬢様!ハンナは感動しました!こんな、こんな、痣だらけになるまで踊るなんて!お嬢様は努力の天才です!」

「上達したよね!?」

「お嬢様は素晴らしい方です!」

「上ー」

「お嬢様、ハンナさんを困らせるのは辞めてあげてください」

「なんで!?」


 あれから1ヶ月が経ち、収穫祭まで残り半分となった。我ながら進歩していると思うのだが、2人にとってはまだまだのようだ。


「勿論最初に比べれば、マシになってますよ。ですが、兎に角時間が足りません。このままでは、人間のふりをした何かの踊りを披露することになってしまいます」

「人間のふりって何!?私はちゃんと人間だよ!?」


 私達が言い争っていると、ハンナがとある提案した。


「ずっと練習していても気分が滅入ってしまいますし、ここはひとつ、気分転換をしに行きませんか?」


「気分転換?」


「はい!みんなで女神様に、お嬢様の舞が上達するよう、お願いをしに行きましょう!」

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