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9.3年後

 お祖父様は、魔法の基礎から、一般教養、貴族のマナーなど、多くの分野を私達に叩き込んでいった。


 一般教養については、前世の記憶が助けてくれるおかげか、さほど苦労することなく勉強できている。

 

 ……偶に母が、貴族のマナーについて追加指導をしてくれているのだが、これが厳しい。普段の食事で抜き打ち試験が行われた際には、笑顔で「0点」と告げられてしまった。


 (の、伸び代があるってことだから……!)


 ポジティブに解釈し、何とか気持ちを持ち直している。


 ジャンはというと、火属性への適性が判明したため、初期魔法を練習することになった。

 また、ジャンの剣術の型が特殊だったこともあり、改めてお祖父様に指導してもらっているようだ。

 

 ーー剣を振るうジャンの左耳には、お祖父様から貰ったイヤリングが、炎のようなオレンジの光を纏って揺れていた。


 私は、現在魔力がない分、今後魔法学園で学ぶことになる科目の基礎について必死に学んだ。

 錬金術の基本、魔法陣の理論、創作魔法、魔法薬学などは特に難しく、教本とにらめっこすることになった。

 しかし、主人公のポテンシャルなのか、必死に学べば何とか理解することができたし、お祖父様曰くセンスがあるらしい。腐らず今後も頑張ろうと素直に思えた。


 しばらくすると、ジャンに「お嬢様も戦えた方が良いのでは?」と言われ、慣れない剣を振るうことになった。想像を絶する過酷さだったが、将来、最悪の場合には戦うことになるかもしれないと思い直し、鍛錬を続けることにした。体力づくりとして、走り込みは毎日欠かさず行っている。


 (父様が怒るだろうから、ジャンとこっそり練習してるんだけど、何だか暗殺者の型みたいな動きをさせられているような……?)


 少し不安だが、できることが増えるのは良いことだと思うしかない。

 


◇◇◇



「お嬢様、奥様がお呼びですよ〜」

「はーい!」

 

 

 メイドのハンナの声を受け、椅子から立ち上がる。

 昔よりも伸びた髪がさらりと揺れた。




 ーー前世を思い出してから、3年が経った。



 私の魔力は未だに開花していないが、出来ることをコツコツ頑張っている。


 錬金術については、レシピを覚え、材料の特性について学んでいった。最後に魔力を少量注ぎ込む必要があるものの、その一歩手前までは身につけることができたと思う。まだ基本的なものばかりなので、今後はレアアイテムについても理解を深めたいところだ。


 魔法陣なんかも、最初はその複雑さに苦しんだものだが、今では少しずつ理解できるようになってきた。


 我ながら、着実に成長していると感じる。

 

 ……マナー?それは、うん。「32点」だって。

 ぜ、0点からは進歩したんだよ!私頑張った!うん!


 一方、ジャンはというと、初級魔法をしっかり身につけ、同じ属性の母に才能があると太鼓判を押されていた。その他についても優秀で、お祖父様がよく褒めている。

 ……因みに、父がジャンを拾った際、戸籍に私と同じ年齢を登録したらしく、魔法学園にはやはり同学年として入学することになりそうだ。


「ハンナ、ジャンは今日も鍛錬?」

「あいつなら町におつかいです。お嬢様はお気になさらず〜」

「あはは……」


 ハンナは現在20歳で、去年から伯爵家で働いてくれている。

 ゆるふわのハニーブロンドの髪をお団子状にまとめており、優しげなブラウンの瞳が目を引く女性だ。ダークブラウンを基調としたシックなメイド服が彼女の雰囲気によく似合っている。

 喋り方もおっとりしていてとても可愛らしいのだが、私にぞんざいな態度を取るジャンが許せないらしく、ジャンに対しての当たりが強い。

 ハンナ曰く、「レディにあんな態度を取るなんて、許せません!」とのことだった。


 ハンナは元男爵令嬢で、色々あって王宮で婚約者から婚約破棄を突きつけられた結果、これまた色々あって母が伯爵家(うち)で働くことを勧めたらしい。そのせいか、もう婚約、いや結婚など懲り懲りだとぼやいていた。

 

 因みに魔法学園の卒業生で、土属性の魔法使いだ。

 王都で就職予定だったが、それを振り切ってうちに来てくれたらしい。メイドとして働く他、庭のお手伝いもしてくれている。



 (私は全然気にしてないんだけどな。ジャンが私に雑な対応をするのは、仲が良くなってきた証拠というか……。寧ろ、ジャンがキラキラの笑顔を浮かべてたら、ちょっと、いやかなり怖いかも)




 ーーキラキラの笑顔を浮かべる人物には非常に覚えがあるが、彼については一旦横に置いておく。





 ハンナと2人、母の部屋に向かった。


「母様、お呼びですか?」

「アデル。ハンナも、急に呼んでごめんなさいね」


 編み物をしていた母が私達に気づいて手を止めた。

 そして、向かいのソファに腰掛けるよう促す。ハンナは遠慮し、私の直ぐ後ろに立った。


「今日アデルを呼んだのは、お願いがあるからなの」

「はい、母様。何でもおっしゃってください」


 そう答えるが、母の『お願い』がどのようなものか分からず、少しだけ緊張して母の言葉を待った。

 母は、そんな私に苦笑しながら告げる。




「ーー今年の収穫祭を、アデルにも手伝って欲しいのよ」




 思いもよらない提案に驚いたものの、私は直ぐに「はい」と答えたのだった。

早いもので3年経ち、アデルは8歳になりました!


次話は明日投稿予定です。よろしくお願い致します!

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