77.梶の新作
賢也が黒羽を倒し、再び取り調べ室へと賢也達は集まっていた。
「今回、黒羽が来たのはお前の復讐といった感じか」
「そうですね。五十嵐の回収はついでの感じでした。俺に敵意剥き出しでしたし」
人間よりも強い筈の自分が、見下していた人の手によって死にかける目にあった事が、余程気に食わなかったのだろう。怒りに任せた攻撃だった為、何とか倒せた。
「黒羽の死体は、回収されたみたいですね」
「ああ、梶さんが久しぶりに腕を振るえるって喜んでいたよ」
「それよりも、賢也さん。傷は大丈夫ですか?」
「うん?優が治療してくれたんじゃないのか?」
「治そうと力を使った時には、もう治っていたんです」
賢也は、不思議そうな顔をした後、目を瞑り、久しぶりに自分の能力診断をしてみる。
「あ、自己治癒の異能が増えてる」
「え、それ凄くないですか!」
「きっと【滅】を使っていて、使えるようになったんだな」
賢也達の会話を聞いていた五十嵐が賢也に質問をする。
「どういう事だ?何で武器を使って能力が増える?そもそも能力は、1個が普通だろ。多くても2個だぞ。お前みたいのは聞いた事が無い」
「俺の基本能力は、吸収なんだよ。吸収した能力を使えるようになるのさ」
「そんな当たりの能力があるのかよ!チートじゃねぇか!」
「いや、怪物に直接触れるか、怪物の部位で作られた武器からしか能力を吸収出来ないみたいだからな、もし、同じ能力の人が居ても、同じように強くなるとは限らない。龍崎だからここまで強くなれたんだ」
力也が賢也に代わって答える。優も頷いている。
「なぁ、警察なんかに行かないで、俺をここで働かせてくれないか?五指の実力だぜ。足手まといにはならねぇよ」
「駄目だな。きちんと罪は償うんだ」
賢也ははっきりと五十嵐の申し出を断る。
「くそ、いいじゃねぇかよ」
五十嵐の言葉は無視し、賢也達は話を戻す。
「それよりも、話は戻るが何故こいつを回収しに来たと思う?黒羽とリーダー二人は怪物で決定だとしたら、その三人でも十分に俺達を潰せる位の力はあるだろう?」
「そうですね。こいつが必要だと言っていました。まさかとは思うんですが…」
賢也は、自分の推測を語る。
「こいつの能力を奪う。仮にも『黒の牙』の実力者ともなるとかなりの能力者でしょうから、その力を奪えば、自分達の強化に使える。奴等ならそう考える」
「確かにな。奴等ならあり得そうだ」
「俺の能力を奪うって?どうやって?」
「それは…、食べるんじゃないか。やっぱり」
「多分、そうだろうな。奴等は食べて力を強化するからな」
「俺は、俺達は彼奴等の食糧だっていうのか?」
「分からないが、その為に集められたのかもな」
そこから、五十嵐は黙ったままだった。余程、自分が食糧として集められたかもしれないという話がショックだったのだろう。
それから暫くして、大人しく警察へと連行されていった。
五十嵐が警察へ連行されて、3日後、賢也と力也は梶に呼ばれていた。どうやら黒羽の死体を使って、武器が完成したらしい。人の姿に翼が生えた状態だった為、武器は一振りだけしか作れなかったようだ。
「やぁ、来たね。君達に来てもらったのは他でもない。この出来た一振りの武器を誰に使ってもらうかを話し合いたくてね」
そう言うと梶は完成した武器を取り出した。
「一振りだったんじゃ?」
賢也は、梶が見せてくれた武器を見て、質問をする。
「うん。一振りだよ」
梶は、答える。いや、だって置かれたのは、一つじゃない。骨を加工したのか、二本の棒?そして翼を加工して作ったのであろう、ブーメラン?が2つ。
「梶さん、龍崎が質問するのも当然だ。これをどう見たら一振りに?」
「ふっふっふっ。これは、久しぶりの傑作だよ。これ全部で一つなのさ!」
梶が自信満々に答える。どうやら、何かギミックを取り入れた武器らしい。
「ただ、武器として使うのには、問題は無いだろうけど、それ以外の使用時は、ちょっと扱いが難しいかもしれないんだよね」
「どういう事ですか?」
よく見ると、梶は手や足に包帯を巻いている。これと関係があるのだろうか?
「空を飛べる!」
「「!!!」」
「本当なのか!?」
梶は、力也の質問に頷く。そして、武器の形状を説明した。
「武器は、鎌、ブーメラン、警棒、剣の4形態」
力也の目が輝いている。円月輪に似た武器の種類に、飛行機能。欲しがらない訳が無い。
「それで俺達にこの武器の使用者を選んで欲しいと」
「そう。ちょっとじゃじゃ馬になったから、それなりの実力者でないとね」
「俺が使う」
「うん?」
「俺が使うと言ったんだ」
力也は、自分が使うと言い出した。
「うん。甲斐君、君でも良いんだけど、君、この間レーザーブレードも使ったろ。隊長とはいえ、新しい武器を君ばかりに渡すというのも、皆が納得しないんじゃないかな?」
「…」
力也は梶の言葉に、声を詰まらせる。確かにその通りだ。その通りだが、まあ、力也の気持ちも分からなくはない。賢也は、暫く考え込む。そして、こう結論付けた。
「なら、隊員全員から希望者を募って、適性者を探すのはどうですか?」
賢也の提案により、訓練場は梶の新作を使いたいという者達で溢れていた。各部署から集まったようで、100人は軽く越えていた。賢也は自身の能力で飛べる事もあり、審査する側へと回った。
「じゃあ、早速だが始めたいと思う。梶さん、説明をお願いします」
梶は頷くと、武器の説明を始める。
「えー、まずは、こんなに僕の新作を使いたいと集まってくれて、ありがとう。今からやるテストは、これを一番上手く使える人を選出するためのものです。予想以上に人が集まったので、飛行してもらう前に、この人数を20人位に絞ろうと思います」
梶の言葉に全員がざわつき始める。
「選ばれなかったら、飛行テストもしないで帰らされるって事か?」
「え、飛べるの?」
「お前、知らないで来たのかよ」
賢也がパンッと大きな音を立てて、手を叩く。
「静かに。最初の選別を始めるぞ」
賢也は、的を用意する。皆が何故?という表情で見ていると、
「一人一投で、あの的を狙って投げてくれ。的に当たったら、次の選別に進める。的を外した者は持ち場に戻るんだ」
賢也は、ブーメランを隊員達に配ると、順番に投げさせた。
「外れ!次…」
外して悔しながら帰る者、当たって喜ぶ者。全員が投げ終わった時には、意外と人数が残っており、70人程だった。
「おや、思った以上に残ったな。次、これを一刀で斬るんだ」
隊員達が渡されたのは、刃がボロボロのまるで斬れそうにない鈍らの剣。
「ちょっ。待って下さい!これって、龍崎さん達のような気を操れる人しか無理なんじゃないですか!?」
隊員の一人が抗議する。それに合わせて「そうだ、そうだ」という声が聞こえる。
「何か勘違いをしているようだから、言っておく。この武器は、怪物を相手に想定しているんだ。それなりに力を見せて貰わないと渡せない」
賢也の一言でまたざわつく。
「え?怪物?」
「最近はもう姿を見せなくなったっていうのに、何で今更?」
「お前達、この間の俺の戦闘を知らないのか?」
「あれですよね。『黒の牙』の幹部の取り調べ中に現れた男との戦闘」
「ああ。その男が人型の怪物で、そいつの素材で作ったのが、今回の武器だ。そして、『黒の牙』のリーダーも人型の怪物で有る可能性が高い。つまり、これから、人型等の怪物との戦闘機会が増えると思う。元ハンターでも何でもない者もいるだろう。だから、しっかりと見極める必要があるんだよ」
賢也の言葉に辞退する者も出て来て、結果、15人が達成。いい感じの人数となった。
「残ったのは15人か。よし、次はいよいよ飛行テストだ。これで一番上手く飛行出来た者にこの武器を使ってもらう」
残った15人は、自分の物だという顔で最後の選別へと挑むのだった。




