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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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74.人型怪物

賢也が襲撃されている銀行へと向かっていた時、SACでは五十嵐の取り調べを始めていた。


「さぁて、昨日は何も話してくれなかったけど、今日は、何か話してくれるかな?」


 五十嵐は、自分の目の前にいる男の顔を鋭い視線で睨みつけた。

 取り調べをしている男は、五十嵐の鋭い視線に恐れ、目を合わせる事が出来ず、五十嵐は、「はんっ」と鼻で笑うだけだった。


「なぁ、お前達のアジトを教えてくれないか?あと、人数がどれ位いるのか?」

「俺をまともに見る事も出来ないような雑魚に話す必要はない」


 手錠により異能は封じられているため、取り調べをしている男の方が今は強いはずなのだが、五十嵐の威圧に負けて弱腰の男に強気で答える。


「くっ…。だったら、お前より強い相手なら話をするという事だな。ちょっと待ってろ」


 取り調べをしていた男は、部屋を出ると、何やら誰かを呼んだらしく、すぐに部屋に戻ってきた。


「すぐに来てくれるからな」

「はっ?来た所で何も話さねぇよ」


 そして3分後、力也が取り調べ室にやって来た。


「来たぞ。全く。取り調べもろくに出来ないのか?」

「すみません…。お願いします」


 力也は、五十嵐の前に座るとふぅっとため息をつくと、五十嵐に問いかけた。


「で、うちの隊員を目で虐めて、楽しいかい?」

「あん?何言ってるんだ?そんなもん楽しいわけ無いだろうが。とっとと開放しやがれ」


 五十嵐は、力也を威圧するが、力也は平然としている。


「俺がその程度の威圧に屈すると思っているのか?無駄だよ」

「へぇ、龍崎以外にも俺の威圧を受けて平然と出来る奴がいたんだな」


 力也は、机の上に手を置くと、五十嵐の顔をじっと見る。

 五十嵐は、何かしてくるのかと警戒するが、力也は特に何もせず、静かに口を開く。


「なぁ、お前は何で『黒の牙』に入ったんだ?」

「関係ねぇだろ、まぁ、面白いからだよ」

「何が面白いんだ?暴れるのがか?」

「あぁ、そうだな。自由に暴れられて、金も好きなように使う。こんな楽しい事は無いだろう?」

「犯罪で稼いだ金を使って楽しいのか?俺は楽しいと思わないがな」

「金は金だ。何も変わらない」

「そうか…」


 力也は、暫く沈黙する。五十嵐には、自分が得をする事を何か提示しなければ、何かしらの情報については何も話さないのだろう。そこで、力也はストレートに聞いてみることにした。


「それじゃあ、今、何が望みだ?お前の望みを叶えたら、話をしてくれるか?」

「へぇ、お前、意外と話が早いんだな」


 五十嵐は、力也の話に少し食い付いてきた。


「そうだな。俺で叶えられる範囲だがな」

「なら、まずは、俺をここから開放しろ。そして、あの龍崎とサシで戦わせろ」

「開放は、流石に無理だ。この後、お前は警察に身柄を渡す事になっている。だが、龍崎との勝負は構わないぞ」


 力也は、本人のいない所で、五十嵐と賢也の戦いを許可する。


「開放は無理かよ。だが、龍崎と戦えるなら少しは話してやってもいいか」


 五十嵐が賢也との勝負という餌に釣られ、『黒の牙』について話をしようとした時、それは異空間の穴と共に突然現れた。


「!」


 力也は、この現れた男の気配ですぐに分かった。


「まだ、潜んでいる奴がいたのか!」

「お、迎えが来たか」


 五十嵐は、現れた男を見てここから出られると確信する。

 リーダーの知人らしく、その力は五指に並ぶ、いや、五指よりも強いと言われている。


「その男は、我々にまだ必要なのでな。迎えに来た」


 力也は、腰に付けているレーザーブレードを取り出し、刀身を伸ばす。


「お前、こいつの正体を分かっていて仲間と言っているのか?」

「あん?どういう事だ?」

「この禍々しい気は、人型の怪物だ」

「何だと?こいつがあの黒死竜の産み出した怪物だっていうのか?」

「ああ、間違いない」

(ちょっと待て。こいつはリーダーの知人だと言っていたぞ。おいおい、何の冗談だよ)


 五十嵐は、リーダーのあの強烈なプレッシャーを理解した。あれは、リーダーも怪物だという事だ。そんな危ない組織に居続ける必要は無い。


「なぁ、あんた俺は戻らなくていい。帰ってくれるか?」

「何を言っているんだ?我々には必要と言ったはずだ。お前の意見は必要無い」


 力也は、男に斬りかかっていった。男は、動く事もなくレーザーブレードを受けるが、服が破れただけで、体には傷一つ付いていない。


「何!高温の剣で斬れないだと」

「そんな玩具で我を斬れると?」


 やはり気を通す事が出来ないレーザーブレードではこいつは斬れないのか。力也の能力では、自身の強化のみ。円月輪を黒死竜に破壊されたのはやはり痛かった。今、力也が使える武器は、このレーザーブレードのみ。


「おい、お前。こいつに付いていくのか?」

「は?怪物の待つ組織なんかに戻りたいわけねぇだろが。お前も元ハンターなんだろ、だったらどうにかしやがれ!」


 力也は、五十嵐の返事を聞くと、五十嵐の手首に付いている手錠を切断する。


「今の俺にはこいつの相手は厳しい。連れ戻されるのが嫌なら、お前も手伝え」

「いいのか?演技かもしれないぜ」

「そんな風には見えなかったぞ」

「ふん。足手まといになるなよ!」


 力也は、身体強化をレベル3で発動。男を直接殴る。力也のレベル3のパワーでもびくともしなかった。


「馬鹿な!?レベル3でも通用しない」

「どけっ!」


 五十嵐が男の腹に触れ、暴風を起こすが、吹き飛ぶどころか、五十嵐の手を掴まえて、


「よし、帰るぞ」

「離せ!黒羽!」

「お前、何を呆けっとしている!早く応援を呼んでこい!」

「は、はい!」


 さっきまで五十嵐の取り調べを担当していた男に応援を呼びに行かせ、力也は、五十嵐の手を掴んでいる黒羽の腕を蹴る。それに合わせて五十嵐も暴風を起こし、黒羽の手を振りほどいた。


「なあ、お前の能力は?」

「あ?風だよ。さっき見て分からなかったのか?」

「いや、その風を俺の腕に纏わせられるか?」

「ふーん。成程。面白そうだな。腕が吹っ飛んでも知らねぇぞ」


 五十嵐は、力也の腕に風を纏わせる。


「全く、手間を取らせるな」


 黒羽が右手の人差し指を力也に向けると、、指先にゴルフボール位の小さな黒い球を作り出す。そして、その球は力也目掛け放たれた。

 力也はその黒い球を躱すと、力也の後ろの壁が激しい爆発音と共に吹き飛んだ。


「なんて破壊力だ。だが、この攻撃はどうだ!」


 五十嵐の暴風を腕に纏わせた力也の渾身のストレートが黒羽の顔面に当たる。


「ほう。これは」


 黒羽は、窓際まで吹き飛ばされたが、ダメージ自体はあまりないようだ。


「くそ!俺の右腕を犠牲にして、この程度かよ!」


 力也は、殴った右腕のダメージが大きかったようで、だらりと下ろしていた。


「左腕もくれてやる!」


 力也が叫び、黒羽を殴り右腕同様、左腕も動かなくなったその時、賢也が取り調べ室に勢いよく入って来た。


「力也さん!」

「「龍崎!」」

「五十嵐!!力也さん?」

「説明は後だ!まずは、そいつだ」


 両腕が使えなくなった力也を見て、頷く。


「力也さんは、優の所へ行って、腕の治療を。五十嵐、お前はそこで大人しくしていろ。逃げるなよ」


 さて、こんな狭い部屋じゃ戦い難い。まずは、外に追い出すか。丁度、窓際にいる事だし。

 賢也は、黒羽に近付く。


「次から次に、邪魔だ」

「それはこっちのセリフだ。取り敢えず、表に出ろ!烈風!」


 黒羽は取り調べ室の壁と一緒に外へ押し出された。


「さあ、久しぶりの怪物退治だ」


 賢也は、【銀狼】を取り出し、外へと飛び出した。

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