65.3号、4号との決着
ドーム状の空間に閉じ込められた賢也だったが、五十嵐も同様の状態だった。
どちらの道も広いドーム状の空間に繋がっており、侵入者を閉じ込める為に、1号が転送システムを止め、通路を塞いだのだった。
二人を閉じ込めたのを確認した1号は、オリジナル達と相談をする。
「侵入者は二人共閉じ込めに成功しましたが、どうしますか?」
「人間はこのまま放っておけば、その内、死ぬだろう」
「3号、その前に奴らが破壊して脱出する可能性もあるぞ」
「そうですね。4号の言う通り、人間は何をするか分かりません。破壊される前に、処分するのが良いでしょう」
オリジナルの一言で、3号、4号はならばと、
「あたしが行こう」、「我も行くぞ」
「二人共、お願いします」
「じゃあ、あたしは左に」
「では、我は右に。1号頼む」
「分かりました。では、送りますよ」
1号はシステムを起動すると、二人を転送した。
賢也は、来た道が分からなくならないように、あの男の気を探る。
「うん?方向はあっちだが、あの男も止まっている。俺と同じ状況か。ひょっとして…」
という事は、どっちに進んでも同じだった?とにかく、脱出方法を探そう。
その時、空間の中心が光り出す。賢也は、光の中から現れた分身体に剣を向ける。
「あんたの相手は、あたしだよ。さあ、始めようか」
3号は、水の剣を作り出し、賢也そっくりの構えを取る。
「お前、その構えは」
「やっぱり、自分の構えは分かるかい。そうさ、あんたのデータから、あんたの攻撃パターンをコピーさせてもらったよ。さて、自分自身に勝てるかな」
3号は賢也の目の前まで一瞬で間合いを詰める。
「速い!」
少し前に戦った時と比べものにならない。3号は、そのまま横に薙いできた。水の剣をガード出来るのかという疑問を一瞬浮かべる。その一瞬の疑問が避けるにもガードするにも間に合わない状態となり、3号の攻撃は賢也の右腕を掠める。
「ちぃっ」
「ふふふ。どうだ?さっき半身を焼かれたからな。更にバージョンアップしたあたしは強いぞ」
「この程度の傷、大した事はないさ!」
賢也は、バックステップで1m程下がると、【風刃】、【雷刃】をしまい、ランスを取り出し、3号に向け突き出す。3号は、突きをまともに受け、腹に穴が空く。
「ぐぅっ。何だ、その武器は?これまでの戦闘データにそんな物は無いぞ」
「【白牙】だ。剣を使う俺は、殆ど使わない武器だからな。お前は確か水の能力を手に入れたはずだよな?こいつは俺の水の能力を強化してくれるからな。水対決だ」
「面白い!あんたの戦い方、学習させてもらうよ」
3号は、水の剣をランスに変え、賢也の構えを真似る。
今までと違う。学習能力も成長したのか?だが、ランスは俺自身全くの素人だから、それを真似られた所で、どうということは無い。賢也は、ランスの先に水球を作り出し、3号に向け放つ。3号は、水球をランスで払うと、既に突きの体勢に入った賢也が目の前にいた。
「水球は、牽制か」
賢也は、体を半身回りながら突きを放った。3号は、ガードが間に合わないと判断し躱す為、右に飛んだ。着地し、反撃しようとした時、ザシュッという音と共に自分の左足が千切れ飛んだのが見えた。
「馬鹿な。何が起きた?」
3号は千切れた足を拾い上げ、修復する。
「足がもう治った…。回復速度も上がってるのか」
賢也は、再び突きの構えを取る。それに合わせて3号も構えを取り、同時に突く。互いのランスの先端がぶつかり仰け反る。
「くっ」
「まだっ!」
賢也は、仰け反った体勢のまま、左手に水を纏わせ、振り上げる。そこから鋭い水の刃が3号の右腕を斬り落とした。
「これがさっきの正体か。なら!」
3号も同様に残った左手で水の刃を放つが賢也はこれを躱す。そして、間合いを詰め、ランスを突き出した。
「氷牙突・砕氷!」
渾身の突きを3号の顔に当てると、ランスの刺さった場所から3号が凍りつき始めた。
「な、凍る…」
「悪いな。水と旋の合成技、砕氷だ。凍りついて、砕けてもらう」
みるみると3号の体は全身が凍りつき、賢也がランスを抜いた瞬間、砕け散った。
「コアはやれたか?」
暫く様子を伺うが、3号も復活する様子は無い。よし、二体目。だが、この空間からはどうやって出る?
賢也は、3号が出現したポイントの床を調べていると、賢也の周りを光が覆い出した。
「!、転送される?」
そして、全身が光に包まれた瞬間、賢也は転送されたのだった。
「3号まで…。お帰りなさい…」
賢也が転送された先は、さっきまで賢也がいた部屋と似ている部屋だった。違う点と言えば、4号と男が戦っていた。そして、4号が賢也に気付く。
「主は?!まさか、3号を」
「戦いの最中に余所見なんかするんじゃねぇよ!」
「主は、我の敵では無い。分をわきまえよ」
4号に殴りかかって来ていた五十嵐の横を滑るようにすり抜けると、炎を纏った拳を叩き付けた。
「ぐぅっ」
4号の攻撃を受け、五十嵐は膝を突く。よく見れば、五十嵐はボロボロになっていた。
「くそっ。五指の俺がこんなロボットなんかに。なんて様だ…」
「仕方あるまい。これまでの戦闘データで飛躍的に強化された我に、同じ徒手空拳で挑めば自ずとこうなる。更には、風と炎では、炎の方が明らかに攻撃向きだ」
4号は指先を尖らせ、五十嵐の心臓目掛けて、突き出す。
しかし、賢也が4号の腕を掴みこれを阻止した。
「そこまでだ。『黒の牙』の人間とはいえ、目の前で殺されそうな奴を助けない訳にはいかないだろう」
「やはり主が我らの最大の障害か」
4号は、賢也の手を振り払うと、後ろに飛び退きながら、火球を5発放って来た。
「ちぃっ。水!」
賢也も水球を放ち、これを迎撃すると、五十嵐が立ち上がり、賢也を殴ろうと腕を大きく振りかぶった。
「余計な事をするんじゃねぇ!」
「五月蝿い!大人しく寝てろ!」
賢也は、五十嵐の攻撃が届く前に、肘打ちを鳩尾に入れ、五十嵐の動きが止まった所に、顎を殴りつけ五十嵐を気絶させる。
「助けておいて気絶させるとは」
「邪魔にならなくていいだろ。行くぞ」
賢也は、4号に水球を放ち、牽制しながら間合いを詰めに行く。4号は水球を火球で相殺しながら、賢也の背後に回り込む。そして、五十嵐にしたように背後から、炎を纏った拳を賢也に叩き込む。
「甘いぜ!」
賢也は、背後に回った4号に後ろ向きのまま、ランスを突き出す。突きが来た為、4号は飛び退いた。
「むぅ。やるな」
「背後に回り込んで来るのが分かっていれば、対処出来るさ」
4号は、火球を目の前に4つ横並びに作り出し、賢也に向け放った。賢也はランスに水を纏わせると薙ぎ払う。4号は、その間に、目の前から姿を消していた。
「!。ステルスか!?」
成程。これにやられたんだな。あいつは。だが、俺にはこれがある。気絶しているあいつには悪いが。
「重!10倍!」
賢也の周囲を10倍の重力層で包み込んだ。そして、【白牙】をしまい、【紅蓮】に変える。
「動きが遅くなっているから、これは躱せないだろう。蒼炎舞!」
賢也を中心に蒼炎が渦を巻く。重力層で動けなくなった4号
は、これをまともに受け、姿を現した。
「くっ。だが、炎は我には効かぬ!」
4号は、自身を燃やそうとする蒼炎を右手で吸収し始めた。
「吸収している?させない!」
賢也は【紅蓮】をしまい、両拳に水を纏わせ、水の刃を飛ばした。2つの刃は、1つは、蒼炎を吸収している右腕を斬り落とし、もう1つは、4号の炎によって相殺された。そして、4号は蒼炎を左手で再び吸収し始め、結局、4号の力に変えられてしまった。
「ふふふ。右腕は、切断されたが、主の炎は、我の力を増幅させた。ゆくぞ!」
右腕の切り口から、炎の鞭が現れ、右腕を拾い上げる。右腕は、修復されると鞭を賢也に向け、打って来た。
バチーン!鞭を躱した賢也の横で床を叩いた鞭が激しく乾いた音を上げる。あんなのを喰らったらひとたまりもない。4号は更に鞭を振り上げ、連続で鞭を打ちつけてきた。鞭の切っ先は、物凄いスピードで賢也に襲いかかって来る。賢也は、それを何とか躱し、4号の懐へと徐々に近付いていく。
「此奴!やはり慣れぬ武器は使うものでは無いか」
4号は鞭を消すと拳に炎を纏わせ、懐へと近付いた賢也にパンチを連打する。それに対し、賢也も右拳に氷を左拳に水を纏わせ、応戦する。
「これで!どうだぁ!」
4号の右手を左手で払い、右手の氷を4号の腹に叩き込む。4号の腹に当たった感触をしっかりと感じた瞬間、
「砕氷!」
賢也の触れた部分から4号の体が凍り始める。
「我が凍る!させぬ!」
4号は、自身の体を炎で包み込み、凍り付いた部分を解凍する。
「隙あり!爆雷!」
賢也の放った爆雷が直撃。4号の体が縦に真っ二つに割れた。
「あっ」
コアに掠ったか?止めに賢也は、二つに割れた4号の体を紫炎で一瞬で燃やした。
「よし、いくら炎に耐性があっても燃え尽きたか」
復活してこない4号の様子を伺う。暫く様子を見たが、4号が復活する事は無かった。
「これであとは1号とオリジナルだけか。そして…」
賢也は、気絶させた五十嵐の方を見ると、姿が消えていた。部屋には、入口は無い。何処に消えた?不思議に思いながらも、先に進む道が何処かに無いか、部屋の中を調べ始めた。
「4号も…。あの男…」




