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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第1章 黒死竜討伐編

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19.空と海

諸井が強盗に入って来た翌日、賢也は、依頼されていた怪物討伐に向かう。

 協会支部の前に着くと男が1人立っていた。その男は賢也に気が付くと駆け寄ってきた。男は臼井だった。


「龍崎!お前、諸井さんをどうしたんだよ」

「臼井さん?どうしたって、なんの事ですか?」

「昨日、お前の家から諸井さんがパトカーで連れていかれる所を見たんだよ」

「それなら、諸井さんが家に強盗として入って来たので、捕まえてもらっただけですよ」

「え、嘘だろ。諸井さん、そんな事したのか」

「ええ、臼井さん知ってたんじゃないですか?いつも一緒だったじゃないですか」

「いや、流石にそれは。そうか、付き合う人間違えたな」


 いつも強気に出ていた臼井にいままでの勢いがない。どうやら、諸井がいたから、威張れていただけのようだ。

 臼井の様子を暫く見ていたが、これ以上の話しは無いようなので、賢也は別れを言い、協会の中に入っていった。


 支部局長室に行き、出発の挨拶をする。


「阿部さん、では、依頼の討伐に出発します」

「よろしく頼む。それにしても昨日は大変だったな」

「まぁ、何も無かったから良かったですが、これからは防犯をもっとしっかりしないといけないですね。では、失礼します」

「ちょっと待った。今回は私も一緒に行くことにしたから」


 これまでの賢也の戦績とこの間の飛燕を直に見て、戦う姿を見てみたいと思ったのだ。


「大丈夫ですか?危険だと思いますけど」


 賢也は、阿部の身を案じる。今回はいつもと違い、空中戦になる。勝手が違うから自分の事で精一杯になるだろう。他人を護る余裕はない。


「大丈夫だ。自分の身ぐらい、自分で護るさ」


 阿部はそう言うと、机の引き出しから1丁の銃と盾のようなものを取り出した。


「そこまで言うのなら。しりませんよ」


 賢也と阿部は、屋上に上がると、ヘリに乗り込み出発した。


「ところで、その怪物は何処にいるんですか?すぐに見付かるものなんです?」


 賢也は、阿部に質問する。ヘリで出発したのは良いが、見付からなかったでは、意味がない。

 以前の怪物は、新種ということもあり、多数の情報が入ったため、向かうことが出来たが、本来、怪物は神出鬼没。いつどこで出会うのか分からない。今回は新種ではなく、既知のDランクと聞いていた。そんな怪物を狙うハンターはいない。何処にいるのか分からないはずなのだ。


「それなら大丈夫だ。もうすぐ奴が現れる空域に入るよ。今回の怪物は、特定の空域を通る飛行機やヘリを襲う習性があるんだ。だから、民間の飛行機やヘリはそこを進入禁止にしているから、最近の被害自体は、討伐に向かったハンターだけだ」


 阿部が答え、盾と銃を身に付ける。もしものために背中には、パラシュートも装着する。

 ヘリの中がピリピリと緊張感が漂っている。

 賢也もパラシュートを装着した。暫く進むと、パイロットが叫び声を上げる。


「レーダーに反応!周囲に姿は見えないぞ」


 賢也も怪物の気配を感じ取る。


「下だ!」


 怪物が下から飛び上がって来ていた。既知の怪物と言っていたが、データベースに入っている同類の怪物よりかなり大きく、ヘリよりも大きい。頭には一本角が生えていた。


「あいつは本当に既知の怪物なのか?」


 カメラで確認する。データベースでは、やはりDランクの鳥型の怪物でヒットした。

 特徴は、急降下による嘴や爪での攻撃。空を飛んでいるため、攻撃が当てづらい。


(どう見ても、別物だろ。こいつ)


 声には出さず、賢也は心の中で愚痴る。


「このままじゃ、ぶつかりますよ。回避してください!あと、ドアのロック解除とシートベルト忘れないで!」


 賢也は全員に叫び、席を立つ。ヘリは、右に旋回すると何とか、直撃は免れた。しかし、怪物の通過した、風圧でバランスを崩す。


「うわぁ!」


 賢也以外、悲鳴を上げる。


「パイロットさん、姿勢制御!」


 賢也が叫び、パイロットがヘリの姿勢を制御する。ヘリのドアと怪物の正面が向き合う。


「さてと、」


 賢也は【銀狼】を抜く。


「今から戦闘開始しますよ。気を付けてください。ヘリの操縦も頼みます」


 乗組員全員が息を飲む。賢也は飛燕を放つ為に気を練り始める。怪物は、危険を察知したのか、上昇し、賢也の目の前から消える。


「くそ、上昇して!」


 賢也は、パイロットに指示を出し、すぐにヘリが上昇開始する。その時には、怪物がヘリに向かって下降してきていた。

 何とかこの突進も回避するが、風圧で再びバランスを崩し

てしまう。ヘリが再びバランスを取り戻す。怪物は、ヘリの真正面にいて、賢也は攻撃出来ない。ヘリが賢也の攻撃出来る横側を怪物の正面に向けると、怪物は、すぐに下降して、賢也の正面から逃げてしまう。

 ヘリが怪物を追いかけていくと、怪物はヘリに向かって突進する。その突進を回避。風圧で飛ばされる。これの繰り返しだった。


「あいつ、俺が攻撃しようとしているのが、分かっているのか?」


 全く攻撃する事が出来ず、このままでは、ただやられるだけだ。何か手が無いか。賢也は、考えていた。


「阿部さん、ヘリは傷付いても大丈夫ですか?」

「え、それは戦っているんだから、問題はないが」

「じゃあ、次に奴が正面に来たら、皆さん伏せてください。首が、飛ぶかもしれないので」

「わ、分かった」


 全員、ゾッとしながら頷く。

 そして、怪物がヘリの正面に来た。


「今、伏せて!飛燕!」


 合図と同時に全力の飛燕を放つ。飛燕はヘリのフロントガラスを斬り裂き、怪物に向かって飛んでいくが、怪物が上昇し、躱そうとしたが、飛燕が一瞬早く命中。怪物の右足を切断した。


「ピギャアー!」


 怪物の悲鳴が轟く。余りの大きさに耳を塞ぐ程だった。

 足を斬られ、怪物は逃げたのか、ヘリから距離を取り始めた。


「逃がさないで!」


 ヘリが怪物を追いかけようと、前進した時、怪物がこちらに振り返った。逃げていたわけではなさそうだ。

 怪物は翼を大きく羽ばたき出した。すると、強風に煽られ、ヘリの操縦が利かなくなってしまった。


「駄目だ。風が強くて動けないぞ」

「この距離でこれ程の強風だと、飛燕も威力が落ちてしまって、致命傷は与えられない。何とか近付けませんか?」


 賢也はパイロットに頼むが、


「無理だ。操舵出来ない」


 その時、怪物の角が光出した。


「何か、やばいぞ。あれは」

「SOSだ。ヘリから脱出するんだ」


 阿部が、パイロットに救難信号を出すように指示する。パイロットはすぐに救難信号を発信した。賢也が叫ぶ。


「早く、飛び降りろ!」


 賢也以外、全員がヘリから飛び降りた瞬間、角から雷が発生し、ヘリ目掛けて飛んで来た。


「龍崎ー!」


 雷がヘリに直撃し、爆発する。


「誰か!龍崎が脱出したのを見たか?」


 落下しながら、阿部が確認するが、誰も賢也がヘリから脱出した姿を見ていなかった。


「そんな。俺が依頼なんかしなければ、こんな事には」


 全員パラシュートを開く。パラシュートで上の様子が見えないが、怪物はこちらに向かって来ていないようだ。


「おい、あいつはこっちに来ていないのか?」


 ヘリの破片が周りに落下し始めた。


「おかしいですね。襲ってこないなんて」


 その時、一人が叫んだ。


「おい、上を見ろ!凄いぞ」


 全員、パラシュートで視界が狭かったが、上を見ると、何かがとび跳ねている。

 よく見ると、ヘリの残骸を足場にして、賢也が怪物に斬りかかっていた。


 「うぉー」


 賢也は、足場になりそうな大きさの残骸を使っては、飛び上がって、怪物に近付いていった。

 剣の届く距離まで近付く。怪物は、気にもとめていないのか、ヘリのあった方向を向いている。

 脱出したメンバーのパラシュートが開いた瞬間、そちらに顔を向け、移動しようとした時、

賢也の攻撃が怪物の腹を掠める。


「ちっ、浅い。くそっ足場になりそうな残骸はもう無いか」


 怪物は、自分が斬られた事に腹をたてた。ターゲットを賢也に絞る。


「よし、これで皆は無事に降下出来るか」


 自分に注意が向いた事で、突進してくれれば、攻撃のチャンスも増えるはず。怪物は賢也の思惑通りに、賢也に向かって降下してきた。空中では回避が出来ない。賢也は、飛燕を怪物に向けて放つ。しかし、顔を掠めただけで、怯む事なく突っ込んで来る。


「これなら!」


 賢也は怪物が剣の届く範囲に入った瞬間に剣を振る。斬られまいと怪物が一瞬止まる。その瞬間を逃さず、賢也は飛燕を放つ。至近距離で放った飛燕は怪物の右翼に直撃した。羽がバサッと舞い散るが致命傷にはなっておらず、まだ飛ぶ事も出来た。怪物はその場で滞空している。落下していく賢也と距離が開いていく。ある程度距離が離れた時、怪物の角が光始めた。


「ヤバい。さっきの雷か!」


 雷を放たれては間違いなく死ぬだろう。


「只でやられてたまるかぁ!」


 賢也は全力で飛燕を放った。怪物が雷を放つ前に、飛燕が怪物の右翼に直撃する。今度は完全に翼を体から斬り離す事に成功した。

 翼を斬られバランスを崩し、雷は賢也とは全く違う方向に放たれ、賢也は助かった。怪物は落下していく。賢也はパラシュートを開き助かったと安堵のため息をついた。


「ふぅ。何とか生き延びたな」


 下を見ると、海が一面にひろがっていた。

 怪物が阿部達の横を通り過ぎ、海に落ちる。大きな飛沫が上がった。


「!」


 次の瞬間、賢也は感じ取ってしまった。さっきの怪物とは違う怪物の気配だ。飛沫の上がった後に、巨大な魚のような怪物が、落ちて来た怪物を咥えて、海から飛び上がり、潜っていった。その後に続いて、阿部達も着水する。


「おいおい、嘘だろ」

「早く逃げろ」


 皆、その場から離れようと泳ぎ始める。

 何故かさっきの怪物は姿を現さなかった。阿部達は必死に泳いで逃げている。その先には、小さな船の姿が遠くに見えた。遅れて賢也が着水した。阿部達と合流するために泳ぎ始めたその時、大きな影が海の中から近付いて来ているのが見えた。


「来る!」


 浮かび上がった怪物はさっきと違っていた。頭には角が生え、ヒレだった部位は翼に変化していた。鳥型の怪物を食べ、進化したようだ。怪物が賢也達に向かって、泳ぎ出す。あっという間に賢也に追い付いた。賢也を食べようと、大きな口を開けている。

 賢也は、怪物の顔を斬りつけるが、泳ぎながらでは、力が乗らず硬い鱗に弾かれてしまう。それでも何とか顔を反らし、食べられるのを防ぐ。


「空といい、海といい、今日は思うように戦えない日だ…」


 逃げながら、怪物が襲ってくる度に顔を斬りつけ、何とか防ぐを繰り返すが、じり貧である事は明白だった。


(このままでは、いつかやられる。阿部さん達もまだ必死に泳いでいるが、体力も限界に近いはず。何か、何か無いか?)


 その時、漸く怪物が諦めてくれたのか、賢也に向かって来るのを止めた。


「よく分からないが、今の内だ」


 遠くにあった船もこちらに気付いてくれたのか、近付いて来ているようだった。

 船に向かって泳いでいた時、怪物が気になり、振り返る。

 すると、怪物の角が光っていた。


「まさか、さっきの鳥と同じ雷か」


 こんな海の中で使われたら、直撃しなくても感電してしまう。どう考えても間に合わない。


「ここでやられてしまうのか。くそー」


 その時、ドーン!大きな爆発音が轟いた。

 怪物に船からの砲撃が命中した音だった。怪物にはダメージはなさそうだったが、角の光は消えていた。助かった。

 そして次の砲撃が命中する。怪物が海に潜っていった。


「おーい。大丈夫かー」


 賢也達は船に引き上げられ、何とか助かった。


「助かりました。ありがとうございます」


 賢也は、船員に礼を言う。


「SOSの信号を受信して、来てみたら、あんた達がさっきの怪物に襲われていたから、急いで来たんだ。間に合って良かった」


 阿部が続けて礼を言う。


「本当に助かりました。ヘリを撃墜されてしまって、どうなることかと…」


 阿部が話しているのを遮るように、賢也が叫んだ。


「全員、伏せろ!」


 次の瞬間、怪物が海から飛び上がって来た。

 賢也の声で、伏せたお陰で誰も怪我は無かった。


「奴はまだ諦めていないみたいだ」

「あいつピンピンしているじゃないか。この船の装備じゃ勝てない。撤退するぞ!」


 船長が、船員に指示を出す。


「駄目だ。あいつは雷を放てる。離れればやられてしまいますよ。俺がやります」


 賢也が撤退を止めるように船長に話す。


「船の砲撃で傷がつかない怪物相手に何を言ってる。撤退だ」


 怪物は船の周りをグルグルと回っている。賢也は、船首に行くと【紅蓮】を抜いた。


「あいつ海の中の怪物相手に剣なんか抜いてどうするつもりだ。あいつのことは気にするな。撤退準備急げ!」


 船長は賢也の事は放っておいて、撤退に掛かろうとするが、怪物が船の周りを回っているため、動けなかった。

 賢也が【紅蓮】に炎を纏わせる。そして、タイミングを見計らい、海中にいる怪物に向けて飛燕を放つ。ジュウッと海水が蒸発し、怪物が飛び上がった。

 その背には、飛燕で受けた傷が付いている。


「よし、いける!」


 賢也は、怪物を斬れると確信すると、連続で飛燕を放った。

 その度に、怪物の背に傷が増える。堪らなくなった怪物は、船目掛けて体当たりをしてきた。船が大きく揺れる。立っていられない程だった。そして、そのまま飛び上がり、船上の賢也目掛けて落下してきた。


「うわぁ!」


 船に乗っている皆が、叫び、慌てふためいている。

 あの質量が船に落ちたら、船が沈んでしまう。


「うぉー」


 賢也は、怪物目掛けて飛び上がると、右足に全力を込め、腹を蹴飛ばした。ボゴォ!物凄い打撃音と共に怪物が吹き飛び、船への落下を免れた。

 吹き飛ばされた怪物は、飛び上がり噛みつこうとしてきたが、賢也は横に躱し、賢也の横を通り過ぎる怪物に向け、奥義を放つ。


「奥義!桜華連斬!」


 高速の8連斬りが炸裂し、怪物の血飛沫が舞った。


「ギャアー!」


 怪物が悲鳴を上げながら、海に戻る。


「今の桜華連斬は、かなり手応えがあったぞ。さて、次はどう来る?」


 これまでの攻防でかなりダメージは与えたはず。潜って逃げられると、面倒なことになる。ここで一気に退治しておきたい。

 海に戻った怪物は中々出て来なかった。


(まずい。逃げたか)


 そう思った時、離れた位置で怪物が姿を現す。海上に浮遊していた。


「あいつ、翼は飾りじゃないのか。この距離ヤバい。雷か!」


 賢也はすぐに飛燕を放ったが、怪物も雷を放ってきた。

 雷が船に直撃する。

 ドガーン!爆発音と衝撃が凄い。


「SOS出して、すぐに退避ー!船が沈むぞー」


 雷を放った後、怪物に賢也の放った飛燕が命中。左目が潰れた。怪物は、そのまま飛行して、突進してきた。賢也は、沈む船の船首に立ち、怪物の突進を待ち構える。


「これで、止めだ。鳴神!」


 突進してきた怪物目掛けて、鳴神を放つ。超高速の上段斬りが突進してきた怪物を真っ二つに斬り裂いた。


「よし。やったぞ」


 賢也は怪物を倒すと海に飛び込んだ。


「すげぇ。あいつ倒しやがった」

「でも、これじゃあな」

「今、怪物に襲われたら全員おしまいじゃないか?」

 海に放り出された状態で、全員不安だったが、賢也は、

「大丈夫ですよ。怪物の気配はこの辺りにはもうないですから。救助が来るのを待ちましょう」


 30分後、ハンター協会からの救助ヘリが到着し、全員無事に救助された。

 

「空と海での戦闘は、地上での戦いと全く違ったな。いい経験にはなったけど、空が飛べると戦う場所を気にしないでいいんだけど。漫画みたいにそううまくはいかないよな」


 救助された賢也は、呟きながら、今日1日の戦いを振り返りながら帰還するのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


今後もよろしくお願いします。


良ければ、感想や評価もよろしくお願いします。

今後の励みになるので。

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