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第1話:ジョグジャカルタの12月、温もりの中のカウントダウン

#サイコスリラー #都市伝説 #ネットストーキング #大学の闇 #復讐劇 #国際陰謀 #泣けるホラー #サスペンス

2014年12月。インドネシアの古都ジョグジャカルタの空気には、いつも独特の匂いがあった。夕方に降るスコールが乾いた大地を濡らす土の匂いと、通りに漂う伝統料理の甘い香り。


「エド兄さん! 本ばかり読んでないで、こんな肌寒い日はサテ(串焼き肉)でも食べに行こうよ!」


甲高くて元気な声が、私の集中を途切れさせた。私の前に立っていたのは、20歳になる妹のエミだった。彼女はまだ、ガジャ・マダ大学(UGM)医学部の白い実験着を着たままだった。24時間、図書館に籠もって日本文学の博士課程(S3)の古い文献を漁っている陰気な私とは違い、彼女の笑顔はいつもエネルギーに満ち溢れていた。


「お前なぁ。奇数学期の期末試験が終わったばかりだろう? 少しは休んだらどうだ」

私は苦笑しながら、目の前の分厚い本を閉じた。


「試験が終わったからこそ、お祝いしたいの! エド兄さん、約束覚えてるよね? 1月になったら、二人で東京に旅行に行くんだから!」

エミは満面の笑みを浮かべ、その瞳を期待に輝かせていた。


エミは非常に論理的な少女だった。医学生である彼女が信じるのは、科学とデータ、そして人間の解剖学だけ。私のことを「小説の探偵気取りで、細かいことばかり分析する」とよくからかっていた。


「わかってるよ。2015年1月の航空券はもう手配してある。浅草の浅草寺に行こう」

私はそう言って、彼女の長い黒髪を小突いた。彼女がとても大切にお手入れしていた、自慢の黒髪だ。


あの時、部屋の温かい明かりの下で、エミの無邪気な笑い声を聞きながら、私は夢にも思わなかった。

2014年の12月が、彼女の笑顔を見られる最後の月になるなんて。

そして、彼女が大切にしていたあの美しい長い黒髪が、そう遠くない未来、冷たく錆び臭い貯水タンクの闇の中で、配管に絡みつくことになるなんて――。

ジョグジャカルタの温かい日常は、東京での冷酷な悪夢の始まりに過ぎませんでした。

次回、待ちに待った2015年1月の東京旅行が始まります。しかし、浅草寺の激しい線香の煙の向こうで、大きな悲劇が二人を待ち受けています。


わずか数秒の間に、エミはどのようにして姿を消したのか?

第2話「足跡を消す線香の煙」に続きます。

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