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マスター・オブ・ザ・ギア【Ma$ter 0F da GEAR】  作者: ポリニンゲン
地下村編
17/17

ボックス【βOメ】

目の前には謎のイケメンが俺の服を持って笑いかけている。この、清々しい朝の光の中で何やってるんだ? コイツ!


「くせもの!!」


「いやぁ、ドゥネルが大好きなモノで身体を拝見させていただきました! 申し訳なし! 一発殴って良いですよ」シュルッ


 そう言って、羽織っていた革製のジャケットを脱ぎ捨てる。その下から現れたのは、肌着一枚の身体。

 腕の太さは平均的だ。しかしそこには隠しきれていない筋肉。


 なにより俺の目を引いたのは、少し膨らんだ胸部……気のせいか?


「やだなぁ、あんまり見られると恥ずかしいって言うか、もっと脱ぎたくなりますよ!」シュ

 

 あまつさえ、今度は肌着を脱ごうとし始めた。皮膚に指をなぞらせ、ゆっくりとめくり上げる。


 俺の心は恐怖に染まる。自分が理解できないものって、こうも恐ろしいのか!


「へ、変態だぁ!」


———ガチャッ!


 その時、ドアが激しく開く。見えた顔は……ペグだっ! とても安心!


「あっペグさーん!」


 変態が馴れ馴れしく呼ぶ。


 彼はこの部屋の光景を見た。

 そして固まった。

 表情は焦ったものから、とても微妙なものへと変化していく。


 彼なりに少し悩んだのだろうか、少しの間を置いて紡ぐ言葉は——


「邪魔したね」ガチャッ


「マテーー!」


         ほぼ一分後


「はぁ、はぁ」


 戦闘服を着直した俺。まだ肩で息をしている。


「うーん。もうちょっと脱いで良いですか?」


「ダメだよエクンノ。さっきのは面白かったけど」


 しかしまだ脱ごうとする変態。それを静止するペグ。まったく、朝から頭が痛い……


「えっと、エクンノって言ったっけ?アンタ、なな、なんで俺を裸にしたんだ?」


「テツヤさんは、聞けばドゥネルに身体を改造されたとか。なので調査したいな、などと思い上がりまして! いやぁ実に面白かったです! 今度は()を調べても?」


「……助けてペグ」ゾワッ


 自然とペグに泣きついてしまう。クソッあのウォルフンと同じ事をしている気がする。しかし脊椎が下した信号がコレなんだから、しょうがない。


「エクンノはすごい人なんだよ、ちょっと変わってるけど。僕も同じ魔術士なのに、君の考えることは底知れないや」


 ()()()()()……そう言う呼び名か。エクンノも魔術士ということは、ドゥネルと戦えるくらい強いってことか。


「僕の考える事ですか? 簡単ですよ。いつかドゥネルでハーレムを作るんです!」


 喋ってる目は眩しい程にキラキラしてる。


「?」


 ドゥネルでハーレムと言えば、何か? 見ると発狂する化け物を従えて地球侵略でもするのだろうか?


「さっすが研究者、目の付け所が違うなぁ」


 とペグは本当に感心したように、しみじみと言った。本心からの言葉なら……少し教えてやらなければならない、いかんぞと。


 こんな感じで、カオスの味を朝一番に味わった。胃がもたれたような気がする。


 その後、俺は二人に連れられ薄暗い廊下に出る。そして、居住棟二階のとある一室の前に来た。


「ったく、今日の配給だ」


 隈が濃くひどく猫背の青年が、ぶっきらぼうに言い放つ。ペグとエクンノは懐から紙きれと木製の器を三つづつ取り出した。その紙切れはマス目が入った小さなもの。大きく一文字書かれている。


 男はそれらを受け取ると、わざとらしく間近で観察し扉の奥に入っていく。次に出てきた時、右手にはスープの入った器を三つ、左手にはパンを三つ、器用に持っていた。


 そして一つも落とす事なくコチラに渡す。スープを持てば確かな重さを感じる。器が思ったより深いのか。白色の液体の上には野菜が浮かんでいる。

 

 パンまで渡し終えれば彼は眉をひそめ、シッシッと手を振り退場を促す。この態度、近くのショップ店員を思い出す。


 だが、二人がすぐに去っていくので同調して歩いて行った。


「なんか態度が凄いな」


「彼は食糧管理係、及び料理長のサヴァドゥーだ。君がこれから一番世話になるだろう人さ。悪そうなのは見た目と態度と口だけ」


「だいぶ悪いだろそれ」


「いやいや、頼めばほんと大体やってくれる。食べたい料理があれば配給を変えてもらうことも可能だし、塩分の調整とか、量とか融通を利かせてくれる」


「なんか不平等にならないか?」


「それが、いつも不思議なことに全員が満足するんだ。彼が料理長に就いてから3年、今日まで不満なし。凄いでしょ?」


「すごっ」ズズッ


 気になってスープを啜ってみる。立ち飲みとかやった事ないが……なにせ腹が空いている。昨日の夜は食べていなかったからだろう。


———グッ!


 瞬間、脳内を駆け巡る刺激。電気ショックを喰らわせられたような衝撃が頭の先端から足先まで貫く。それに顔を思わず顰める。


 快楽物質が……溢れる!


 それもそうだ、ここら辺はずっとレーションしか食べてなかった。レーションは人工的な甘さしかない。だが! これは! 旨みがある! 塩も! しかも、野菜のほのかな甘味が絶妙なタイミングで来る!


「……ぐっ」


「どうしたのいきなり」


 少し驚いた顔で見る。


「いやぁぁぁぁぁ……なんでもねぇ!」


「あれ? 久しぶりの食事のあまりの美味しさに顔を顰めたとかじゃ無いんです?」


「なんでわかんだよ……」


 その後は同じく二階にあるペグの部屋で食事を摂ることにした。そこには歓喜の声が響いたという。 

 

***


 目の前のガラス机には空の皿とスプーンが置かれている。底が見えるほど綺麗に完食。確かに満足だ。


 すると、体内のジェネレーターが動き出す。脂肪発電方式だから義体を動かすためにも食わなければならない。


 今のエネルギー摂取量だと、二時間分とトントンといったところ。あのレーション、必須栄養素とカロリーだけはあったからな……


「それは良かった……ともうこんな時間か。ちょっと僕行かなきゃ」


 彼が立ち上がろうとする。


「どこに?」


「僕はいつも魔道具製作の仕事してるんだ。作成は自室だけど、勤務塔に魔木マギは生えてるからね。往復しなくちゃいけない」


 魔木ってあれか、あの棟に生えてた奴か。

 

 たしかに、彼の部屋には変な物の入ったビンや釜戸など色々怪しげなものが見える。気になるな。


「へぇ、良ければついて——」


「ダメですよ!」


 突如大声を出して立ち上がるのはエクンノ。


「テツヤさんには神器を見てもらいます! これまで使い道の無かったモノの使い道が分かるかもしれません。ペグさん! この人借りてきますよ!」


「おっけー」


「えぇっ!? エクンノと?!」


 てなわけで居住棟の裏口に引っ付いている小さな倉庫に連れて来られた。そういえば、ここは紹介されてなかったな。


 そのスライド式の鉄扉を開ければ、倉庫の外観と一致しないだだっ広い空間に多くのガラクタが積み重ねられていた。

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