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勇者のタマゴ達──②




「ゆ、勇者様だ! 勇者様が召喚された!」



 気がつくと、俺はどこぞの王族の玉座の間を彷彿とさせるような部屋に座り込んでいた。


 俺の方を鎧を来た男たちが歓声を上げながら見つめている。


 勇者……って、なんのことだ?


 なんとなく居心地の悪さを感じて、目線を逸らす。


 辺りを見回すと、俺だけではなくて他のやつらもこの場に来ているようだった。


 みな、何事かと小声で話し合っている。


 ──アイツだけはじっと空席になってる玉座を見つめていたが。


 そんなアイツの直ぐ隣に、不安そうに大きな瞳を揺るがせているエリの姿が目に入った。



「エリ──」



 俺はエリの元へと近寄ろうと声を上げた。


 だがしかし、俺の声に被せるようにしてエリが「ユウくん……」とアイツの名前を呼んでアイツの腕に縋りついている。



「カツキ……」

「クソが」



 アイツを睨みつける俺に、アキラが心配そうに声をかけてきた。



「勇者様!」



 ふと、後ろから女の声がした。


 誰だ?


 振り返るとそこには()()によく似た顔立ちの女──宝石が至るところに散りばめられているピンクのドレスを着ている金髪碧眼の女だった──が立っている。


 ドクン、と心臓が大きく波打つ。



「な、なあ、エリに似てねえ?」

「ああ……」



 俺にそう耳打ちするアキラに、どことなく上の空のまま相槌を打つ。


 本当によく似ている。


 少し頬を赤らめて、目の前のエリに似ている女がはにかんだ笑顔を見せる。



(わたくし)の顔に何かついてます? そんなに見つめられると……恥ずかしいですわ……」



 目の前の女が()()()()()()恥じらいを見せた。



「か……」

「かわいい」



 俺の声にまたも被さるようにして、アキラと双子の声が聞こえてきた。



「勇者様」


 

 エリに良く似た女が俺の目をみてそう言葉を紡ぐ。



「え?」



 お、俺?と困惑しながら自分の指で自分の顔を指差す。



「ええ、そうです」



 貴方様のことですわ、と、女が微笑む。



「俺が……勇者……」

「ええ」



 女が俺の目の前に座り込んだかと思うと耳元で「貴方様が選ばれし勇者様なのです」と囁く。


 彼女のものだろうか、いい香りが鼻孔をくすぐる。



「エリ……」



 不意に漏れた声にハッとして口を手で覆う。



「ご、ごめん。 つい……」

「いえ、問題ございませんわ、勇者様」

「え?」



 思わずエリの名を呼んでしまったことに気まずさを覚えてそらした目を女に向ける。



「私も……エリという名前なのです」

「そう、なのか?」

「ええ」



 なんだか頭がぼうっとし始める。


 目の前の女……いや、エリから目が離せない。



「よろしかったら皆様、私の部屋に来ません?」



 まさかの誘いに俺達も、こちらを静かに見つめていた兵士たちまでもがどよめきはじめる。



「いけません、聖女様!」



 先程まで俺だけを見つめていたサファイアのように美しい瞳を潤ませながら、聖女と呼ばれた女が兵士たちに視線を向ける。



「だめ……でしょうか?」



 今にも泣き出しそうな瞳に、動揺を見せる兵士たち。



「いや、でも」

「そうです! まずは王に勇者様の紹介を」

「私……寂しかったのです」



 兵士たちの言葉を遮るように女が口を開く。



「せっかく……同じ境遇の方が現れたのですもの、お話したいのです」

「……わかりました」

「おい! 何を勝手に了承して」

「ありがとう」



 兵士たちに向かって女が微笑むとみな、顔を赤らめて微動だにしなくなった。



「いえ!」

「聖女様のお望みとあらば!」

「それでは、いきましょうか?」



 勇者様──と、差し伸べられた手をいつの間にか掴む俺。



「お、おい! カツキ!」

「さあ、行きましょう? 皆様も、勇者様と一緒に」






 

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