2. - 理不尽な贈物 -
はじめましてです。
よくわかりませんが、至らぬ点ご教授くださりたくお願いいたします。
加筆修正する可能性もあります。
作品のことは、
レクイエムです。俺の悔い改めでもあります。
ひとりでも多くの魂に届きますように。
そんなつもりじゃ無いのに、
色目で見られ続ける。
私のせいじゃ無いのに、
色欲の罪を着せられ迫害される…
ーーーーーー
「これ、アキヒトからおみやげ」
「ありがとう!」
わたしは素直にハルコが渡してくれる小さな包みを受け取る。何かな。
ハルコとアキヒトは付き合っているので、
きっと、ハルコも同じものをもらったのだろう。
いつも仲良しのわたしの分まで気を遣ってくれた、良い彼氏さんだと思う。
ハルコがそれ以上なんの説明をしそうにもなかったので、
どこのなんのおみやげかは分からなかったが、
わたしは他人の彼氏と必要以上に仲良くする趣味もなかったので特に追求しなかった。
わたしは幼馴染のハルコが大好きだったので、
ハルコが良い彼氏と付き合えて良かったと思う。
すぐ帰る雰囲気になったので、そのまま何も考えずに、包みの中身を確かめることなく帰る。
わたしは知らなかった。
ハルコが幸せじゃ無いこと。
それを隠してわたしの前では笑顔でいたこと。
「はい、これ」
包みを取り出して、そう言ったハルコの表情を、わたしは見ていなかった。
そのあと無造作に差し出されたのは、いつもの満開の笑顔だったから。
友達の彼氏なんだから、変に関わる必要もないし、別にお礼も要らないだろう。
そこまでは考えたのに、わたしは、もったいない精神も相まって
包みに入っていた少し派手なキーホルダーをカバンにつけてしまった。
ちょうど通勤中の車窓に映る自分のいつもの装いに、面白みがないなあと思ってたところだったのだ。渡りに船のような心持ちで、何も深く考えず、何も慎重に自分の行動を精査しなかった。まったく無邪気に、これで”付けてる”感が出せる、とやや安心していたのも事実だ。
この時渡された、そのキーホルダーによって、
わたしの忙しくも平穏な暮らしは
即座に崩れ去ってしまう…
ーーーーーー
「ナツミのその新しいキーホルダー、かわいいね」
「あ、ありがとうございます」
仕事仲間が社交辞令で言ってくれるのを、何の気なしに受け流す。
キーホルダーへのわたしの無頓着な感じに何かピンときたのか、
「ナニ、男?」とニヤニヤされる。男は男だけど…
「いや、あの、友達からです」自然と返答の調子も素っ気なくなる。
「も〜ナツミちゃんかわいいんだから、恋愛に興味ないの、勿体無いよ」
「何が勿体無いのか、全く分からないです」
「むかつく〜!顔と身体、代わってよ〜!」
ミーハーで恋愛好きの仕事仲間は、
しょっちゅうテレビスターや職場の男性にキャーキャー言っては
誰とも真剣な関係に発展できずに年を重ねている。
わたしは恋愛未経験で30代になってしまったけど、
仕事が充実しているので、周りになんの引け目も感じることなく、
毎日やりがいと、達成感に満たされて過ごしていた。
仕事仲間たちはわたしの仕事ぶりに助けられているので、
嫉妬は思うほどには無い。むしろ、よく知らない男性から
女性のくせに…と僻まれるのが主だった。
気の合う仕事仲間とは男女関係なく友達になって
みんなで楽しく余暇を過ごすのも好きだったけど
性別問わずどうしても浅い付き合いで終わっているような気がしていた。
だからこそ、幼馴染のハルコとは深い付き合いができていると思っていたし、
同級生のつながりは主にハルコを通じてつながっていたので、
とても大事にしていた。少なくともわたしはそのつもりで…
キーホルダーは最近流行りのゆるキャラの顔のようなもので、
やや大きめのラメ入りのアクリル製のものだった。
あるとき、そのキーホルダーがしゃべったのだった。
「おまえ、地獄に落ちるぞ」
不意に見た目に似合わない低い地響きなような声が聞こえて、
驚いて、キーホルダーをまじまじと見つめる。
それは特段変わりなく、わたしは空耳かと思った。
そのとき不気味に思ってすぐに外せば良かったのに、
わたしは結構そのキーホルダーのおかげで色々な人と会話する機会を得たので、
なんとなくその存在を手放すのを惜しんでいた。
なんか雷が光ったような気がした。ラメかな。
「気にしすぎかな。疲れた。仕事、しすぎかな」
とりあえず家に帰ろうと電車に乗り込んで、いつもの帰路についた。
家に帰って、カバンを置いて、お風呂に入る。
わたしはすっかりそのキーホルダーのことを忘れて、
色々揃えている入浴剤を、ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜、と、わくわく選んで、うきうき入浴した。
その日も夕飯は職場で済ませたし、少しの身支度をしたら、
すぐに布団に入って眠ってしまった。
明日はあれをして、あれをもう少し練って…
ーーーーーー
ジリリリリリリリリリリリリリリ。
目覚ましが鳴った…はずだった。
でもわたしはなぜか、起き上がると法廷の椅子に座らされていた。拘束されている。
え?大勢のスーツ姿の人がパジャマ姿のわたしを冷徹な顔で覗き込んでいる。
「こちらをご覧ください」
そのうちの一人が眼鏡の位置を直しながら言う。
突如としてスクリーンに大きく映し出されたのは、
電車に乗り込むわたし、とそれからズームインして、カバン、あの、
あのキーホルダー……!
どよどよと、場がざわめいた。
「あまり見かけないデザインですから…」
「鑑識は?照合結果は?」
「それにしても…」
「皆さん落ち着いてください。照合結果は、陽性です。」
「なんと!」「不埒だ」「不誠実だ」
一気にざわめきのボリュームがあがる。皆興奮しているようだ。
あるものは軽蔑し、あるものは激昂し、あるものはどちらともつかない感情のまま、大声でそれらしいことを叫び続けている。慎重な沈黙を守るのは、ハルコだけだった。ハルコ…?!そこにいるの?!わたしを助けて!なんだかよく分からないまま、こんなことになってしまったの…!ハルコ助けて!
半円のようにわたしを取り囲むものたちのうちで、ハルコはわたしから少しだけ離れた場所に静かに座ったまま、何を考えているのかよく分からない表情をしていた。この世の不幸をかき集めたような雰囲気をしていた。怒っているのか、悲しんでいるのか、興味がないのか、深く考えているのか、よく分からなかった。
わたしの声は出ず、代わりにアキヒトのものと思われる声が響いた。
「ナツミはすごい。俺なんかより仕事ができるのにやさしい。よく分からないキーホルダーも受け取って、捨てずに使ってくれる。」
「ハルコは便利だ。俺より無能で言うことを何でも聞く。付き合っているハルコ以外の女性にプレゼントをするのに、全くなんの文句も言わずに従う。」
ハルコはわたしと”同じ側”に座っていた。ハルコはわたしのほうを見なかった。
「このキーホルダーは”ヤる価値のある”女の目印だ。キーホルダーには高性能のGPSをつけている。組織には相手の手に渡ったことが確定してから固有アドレスを報告する。報告すれば、組織の人間がターゲットに目をつけて、拘束して高値で売ることになっている。商品として俺たちを楽しませるのが仕事になる。」
いったい、何を言っているんだ?
”ヤる価値のある”ってなんだ?
ハルコだってじゅうぶん可愛い。こいつは何を言っている?
わたしはたいして知らないまま良い彼氏だね、と決めつけていた
アキヒトへの考えをすっかり改める。
当然ながら、そんなにちゃんと知ろうとしなかったけど、倫理観がぶっ壊れている。
わたしはだんだん腹が立ってきて、でも拘束されている現状に無駄な動きで消耗もしたくなかったので、じっと反撃の隙をうかがうことにする。多分だけど、こういう思考の男性は、自分のコンプレックスを、性行為で解消できると本気で考えているんだ。自分よりすごい相手を制圧して、自分の価値を感じていたいんだ。最低だ。
俯いて黙ったままのハルコの代わりに、わたしが頑張って主張しなくては、このまま裁かれてしまう。
わたしは叫んだ。
「おい!アキヒトォ!他人の人生を、何だと思っているんだよ!女性は男性の慰みものじゃねえんだよ!」
ーーーーーー
パチン。
スイッチを押す音が聞こえて、電気が点いた。
ベッドの上だ。家だ。見慣れない…
感覚がバグっているのか…?
「おはよう」
誰も居ないはず、のわたしの部屋、に人の声が聞こえる。え?
ハルコが入ってくる。ハルコ…?
「アキヒト、早く起きて」
そう淡々と言われて布団をはがされる。
さっさと背を向けて部屋を後にして、扉を閉めようとするハルコに声をかける。
「あの、朝ごはんは…?」
「自分で適当にしてね」
思い通りに口が動かず、唖然としたまま、自分の身体に目をやる。
股間に、付いているはずの無いものが付いていた。
大きく腫れ上がるように立ってテントを作っている。
朝勃ちか……
わたしは何とも言えないムラムラとイライラでいっぱいになりながら
起きたばかりのはっきりしない頭で
いましがた聞いたばかりの冷たいハルコの声を何度も再生していた。
(終)
わたしは信仰者です。イエス様に出会って救われ、聖書を読んでいます。
目についた聖書箇所を記しておきます。
マタイ筆・福音書5章27節から32節(JCBリビングバイブル訳)
27:あなたがたの教えでは、『姦淫してはならない』とあります。
28:しかし、だれでもみだらな思いで女性を見るなら、それだけでもう、心の中では姦淫したことになるのです。
29:ですから、もしあなたの目が情欲を引き起こすなら、その目をえぐり出して捨てなさい。体の一部を失っても、体全体が地獄に投げ込まれるより、よっぽどましです。
30:また、もしあなたの手が罪を犯させるなら、そんな手は切り捨てなさい。地獄に落ちるより、そのほうがどんなによいでしょう。
31:また、あなたがたの教えでは、『離縁状を手渡すだけで、妻を離縁できる』とあります。
32:しかし、わたしは言いましょう。だれでも、不倫以外の理由で妻を離縁するなら、その女性が再婚した場合、彼女にも、彼女と結婚する相手にも姦淫の罪を犯させることになるのです。
レビ記19章
14:耳の聞こえぬ者を悪く言ったり、目の見えぬ者の前に障害物を置いてはならない。あなたの神を畏れなさい。わたしは主である。
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- 理不尽な贈物 - (アンリーズナブル・ギフト)




