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リグハーヴス公爵への挨拶

 ルリユール〈Langue de chat〉は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。

 アルフォンスにも一応説明に行きます。


453リグハーヴス公爵への挨拶


 王宮のマクシミリアンの執務室から、リグハーヴス公爵領アルフォンスの執務室へ〈転移〉する。

 いつもなら客人を連れていく場合は、玄関前に出るのだが、外套も来ていないし寒いので省略した。

「あれ?」

 落ち着いた色合いの調度品が置かれている執務室は無人だった。いつもなら執務室にいる時間帯なのに、アルフォンスの姿がない。

「エンデュミオンですか?」

「クラウス」

 執務室の隣にあるアルフォンスの寝室から、執事のクラウスが姿を見せた。虚弱体質のアルフォンスの執務室には隣に寝室がある。

「アルフォンスの具合が悪いのか?」

「冬ですから、風邪の引き始めのようです。先程ヴァルブルガに往診に来てもらいました」

 ヴァルブルガを()べば〈転移〉で来てもらえる。アルフォンスのカルテは魔女(ウィッチ)グレーテルとヴァルブルガで共有しているらしい。人見知りのヴァルブルガだが、患者は別である。

「んー、具合が悪いのならどうしようかな」

「何かやらかしましたか? エンデュミオン」

 クラウスの視線が、執務室を見回しているイサとピルグリムに向く。コボルトのイサは兎も角、ウィスパーのピルグリムは珍しいを超えて異質だろう。

「これからやるから許可をもらいに来たんだ」

「おい、気になって寝ていられないから、こっちに来て話してくれ」

 クラウスに白状したエンデュミオンに、寝室からアルフォンスの声が掛かった。まあ、そうなるだろう。

 とことこと向かった寝室では、カティンカとココシュカが乗ったベッドに、アルフォンスが起き上がっていた。さっと近付いたクラウスが、アルフォンスの肩にガウンを羽織らせる。

「アルフォンス、薬はちゃんと飲んだのか?」

「ああ、ラルスの薬草茶をシュネーバルが届けてくれた」

 薬嫌いのアルフォンスも、ラルスの美味しい薬草茶は飲む。

「アルフォンスの体調も悪いんだし端的に言うとだな、王都の調査の途中で偶然区切られた古代の森を見付けてな。植生が近いリグハーヴス公爵領に移植する許可が欲しいんだ。囲壁の外の草原辺りに、大きさは一キロ四方位で。マクシミリアンにはアルフォンスの許可をもらえと言われたから」

「古代の森? 管理はどうする?」

「管理者はこのイサとピルグリムになる。ピルグリムはウィスパーだが、妖精(フェアリー)に近い魔女だ。イサは賢者になる」

「賢者と魔女が増えるのは有難い話だな。陛下が許可を出しているのなら構わない。ところで……詳しい話はあとでしてもらえるのだろうな? エンデュミオン」

 じろりとアルフォンスがベッドの上からエンデュミオンを見下ろしてくる。流石に、勘づいている。今までのやらかしからか。

「アルフォンスの体調が回復したら詳しい話をしよう。黒森之國(くろもりのくに)の害にはならない話だから安心してくれ。イサ、ピルグリム」

 エンデュミオンに促されたイサとピルグリムが一歩前に出る。

「イサだよ。エンデュミオンの補佐が出来るから、何かあったら協力するよ」

「……ピルグリム。魔女だから、何かあれば診療出来る」

 あえて家名は名乗らない事にしたようだ。

「春になったら、アルフォンスも移植した古代の森の視察に行くといい。イサ、ピルグリム、森に名前はあるのか?」

「……婆ちゃんの名前で皆呼んでた」

「エルネスティーネの森って呼ばれていたんだよ」

「ああ、先代の嵐の大魔女か。じゃあ登録はそれでしよう。マクシミリアンに知らせておく」

一寸(ちょっと)待て」

 〈時空鞄〉から手帳を出してメモを取り、顔を上げたエンデュミオンをアルフォンスが呼び止めた。

「エンデュミオン。嵐の大魔女の名前が付く森って事は、嵐の大魔女が住んでいた森じゃないのか? それでピルグリムは魔女なんだよな?」

「大魔女エルネスティーネが住んでいたのは大昔だぞ。じゃあエンデュミオンは森の移植に行って来る。お大事にな!」

 エンデュミオンはイサとピルグリムを掴んで〈転移〉で逃げた。後で説明するにしても、今回はマクシミリアンの許可があるから、それほどアルフォンスに怒られない筈だ。

 今度〈転移〉で出たのは、リグハーヴスの囲壁の外にある草原上空だった。三人纏めて空中に浮かばせ、寒いので身体の周りの空気を温める。

「イサ、ピルグリム、あそこの丘がさっきいた領主館だ。向こうが地下迷宮がある〈黒き森〉だ」

「へー、リグハーヴスの〈黒き森〉っていきなりある感じなんだ」

 イサが前肢を目の上に翳して、遠くにある暗緑色の森を見る。

「一応手前に普通の森があるが、ハイエルンよりも深い森じゃないんだよ」

 草原と林がまばらにあって、その奥の管理小屋のある普通の森に繋がるように〈黒き森〉がある。ハイエルンのほうは、領地全体が森林と山なので、あまり普通の森と〈黒き森〉の境が解らない。人狼などは〈黒き森〉の浅い部分に集落があるくらいだ。

「囲壁から二キロ位離れた先に、木が数本あるだろう? あそこにくっつける形で移植するのはどうだろう」

「……いいね。木を〈門〉の代わりにする?」

「うん。許可のない者は素通りする感じで魔法陣(マギラッド)を組みたいな、エンデュミオン」

 ピルグリムとイサが揃ってエンデュミオンを見る。エンデュミオンに魔法陣を組んでくれというのだろう。

 エンデュミオンは二人を連れて、木がある場所へと飛んだ。丁度同じ位の太さの木が二本間を開けて生えている。二本の木の幹に、許可制の〈門〉の魔法陣を付与する。

「よし、これで向こうに戻って、この〈門〉と紐づければ大丈夫だ」

「エンデュミオン、これ教えて」

「解った。二人にも魔法陣の授業をしてやるから」

「やった。有難う(ダンケ)

 ヴェスパ達にも授業しているので、一緒に受けさせればいいだろう。イサは先代から直接引き継ぎされていない上に〈異界渡り〉だ。ところどころ基本情報が抜けているようだ。エンデュミオンの場合は元々が長命種だったし、ケットシーの叡智があるので、ある意味反則的な知識量なのだ。

「王都の方の魔法陣を修正して来るから、二人はここにいてくれ。森が現れるから木の向こうにいくなよ。巻き込まれるからな」

うん(ヤー)

「……解った」

 エンデュミオンは〈賢者の穴〉に〈転移〉した。そして壁にある古代の森に入る為の魔法陣に、リグハーヴス側の〈門〉に繋げる文字を書き足す。

「よし」

 魔法陣が銀色に輝いて壁から消えた。ここにそのまま入口があると、このあと来る研究者達に見付けられても困る。

 エンデュミオンは再び、イサとピルグリムの元に戻った。二人の前には、巨大な木々が密集する古代の森が出現していた。リグハーヴスは冬だが、区切られた森は雪のない季節だったので、季節が合うまでは区切られた森の季節は固定にしておいた。下手をすると植物が駄目になってしまうので、こればかりは調整しないといけない。

「エンデュミオン! 凄いな、わさって森が生えたよ!」

「……急に生えた」

「生えたというか、移植な。季節が合わないから、森とリグハーヴスの季節が同じになるまで、森の季節は固定にしておいたぞ」

「うん、解った。有難う。入口は魔法陣を描いた木の間になるのかな」

「そうだぞ」

 表面が凍っている雪の上に下りて森へと歩く。妖精は体重が軽いので、エンデュミオンとイサが乗っても硬い雪は沈まない。ピルグリムはそもそも浮いているので問題ない。

 森の少し手前に下りたので、歩きながらエンデュミオンは気になっている事を、二人に訊く事にした。

「なあ、ヴィンフリートは元々精神も大人だったんだな?」

「……うん。騎士だったんだ。あの時代は小領主が領地を取り合ったり、王族の継承争いが続いてて、ヴィンフリートは今の王朝の先祖を護ってた」

 ふよふよとエンデュミオンの隣に浮かびながら、ピルグリムが答える。

「ヴィンフリートはアムリタを飲んでいたんだな? 違うか?」

「そうだよ。ヴィンフリートは森林族のラライラと恋人だったから、長生きしても問題なかった。首を切られていて死ななかったのは不思議だったけど、生きていて良かった。だけど記憶を失っていたんだ。とても幼くなってしまって。あのアムリタはイサが作ったやつだから、失敗したのかもしれない」

 へにょりとイサの耳と尻尾が垂れる。エンデュミオンはすかさずそれを否定した。

「いや、失敗していたらヴィンフリートは生きていないだろう。イサが月の女神シルヴァーナと関わりがあったとなれば、おそらく女神の気紛れじゃないかな」

 自分が目を掛けた者に対する憐憫だろう。ヴィンフリートを喪えば、イサが悲しむから。

「気紛れ?」

「ああ。だが、命にかかわる件については代償が伴うんだ。時を完全に扱えるのはシルヴァーナだけだ。イサとピルグリムは時の魔法は使えるか?」

「〈治癒〉くらいかな? あとは植物の〈成長促進〉とか」

 イサとピルグリムが同じ方向に頭を傾げる。どうにも行動がエンデュミオンより確実に年下で可愛い。

「〈治癒〉なら、失った手足を生やしたり」

「生やせるの!?」

「……生えるの?」

「生やせるんだが、代償に物凄く魔力を消費する」

 えー! と、イサとピルグリムに信じられない者を見る目を向けられる。

「七番ってさあ」

「……おかしい」

「七番の〈柱〉は戦時中に前線に出されていたから、ないものは生やしてやらんと人手が足りなかったんだ」

「ごめんね」

「……ごめん」

 イサとピルグリムに左右から抱き着かれた。同じ〈柱〉同士、こう言う会話が出来るのはいいものだなとエンデュミオンは思った。

「凍土の魔女のヴァルブルガも手足を生やさないから、エンデュミオンの系譜だけ変わっているのかもしれないぞ」

 エンデュミオンの前任者が、やけっぱちで怪我人の手足を生やした説も無きにしも非ずだ。エンデュミオンとしては弟子のヴェスパにも教えるつもりではあるのだが。

「それでだな、命にかかわる時の魔法は、使用者に代償を払わせるんだ。エンデュミオンなら魔力なんだが、魔力を取れない者の場合は、別のものが代償になると思われる。それが〈成長という時〉だ」

「成長?」

「うちの子で言うとルッツだ」

(さび)柄の可愛いケットシー?」

 イサはケットシー好きなのかもしれない。

「ああ。ルッツは過去から現代に送られて来た疑いがあるんだが、身体も完全に成体になっていないし、ずっと幼児のままだ。ただし、成長はしないが、学習は出来る。ヴィンフリートも最初に比べたら、多少なりとも出来る事が増えていないか?」

「……あ、そうかも」

 ぽふ、とピルグリムが袖と袖を打ち合わせる。

「エンデュミオンは、長命種だからこその代償と救いだと思う」

「ゆっくりと精神が育つのか。そっか……」

 ルッツと異なり、ヴィンフリートの場合は大人だった頃を知っている分もどかしい時もあるだろう。しかし、周りが皆長命種なのだから、気長に生活すればいいのだ。エンデュミオンは、将来的にヴィンフリートは十代半ばくらいの精神年齢になるのではないかと思っている。

「多分ヴィンフリートはこれからの方が学習が進むんじゃないか? 森の時が進み始めるし、精神年齢が同じ位の妖精達がリグハーヴスにはいるからな。遊んでいる内に色々覚えるだろう」

「他にも妖精がいるの?」

「いるいる。うちの隣にいる靴磨きの妖精達も同じくらいだ。うちはリグハーヴスの囲壁の中にある、〈Langue(ラング) de() chat(シャ)〉というルリユールだから遊びに来ればいい。近道の〈扉〉を付けるから」

「助かるよ」

 孝宏(たかひろ)の親戚でもあるイサを放り出すつもりはない。森という広範囲の土地持ちなので囲壁の外に移植したものの、どうやら彼らは馬や馬車は持っていないようなので、買い物をするにしても〈Langue de chat〉経由の方が便利だろう。

 場所さえ覚えれば〈転移〉で移動出来るだろうが、それはイサとピルグリムだけだ。

 〈門〉になる木と木の間は、馬車が通れるくらいの幅がある。エンデュミオン達は森の一部に見える〈門〉を潜った。ここで登録されていない者は森の向こう側に出されるのだが、エンデュミオン達は無事にエルネスティーネの森の中に入った。

「わあ、凄い!」

 イサが振り返って後ろを見る。

「あ、ちゃんと向こうが外だ」

 古代の木々の向こうに、〈門〉になっている木が見えている。

「もし馬車を使えるようにするなら、道を作らないと駄目だがなあ」

「〈転移〉で運んじゃえばいい気がする」

「……うん」

 〈転移〉を使える妖精は、大体が規格外である。ここは保護地区になるので、一般住人は入らないし、それでいいのかもしれない。

「家の近くに、エンデュミオンの領地と繋がる〈扉〉を付けるから、あまりこっちは使わないかもな」

「エンデュミオンは領地持ちなのか!?」

「昔、ヴァイツェアにある緑の冠岩という、岩壁に囲まれた土地を貰ったんだ」

「あそこ、岩じゃないの?」

 イサは緑の冠岩を知っていたようだ。昔からその名称で呼ばれていたらしい。

「内側に〈精霊水〉が湧く森がある。知られていなかっただけで」

「良い土地だね!」

 最近はもっぱら年少組の遊び場だったり、大雀や大フジイロムシクイの厩舎になっているのだが。

 森の中を細道を通って、家のある広場に戻ってきた。

 残っていた孝宏達は、そのままお茶をしていたようだが、ヴィンフリートと闇竜キーゼル、ルッツ達妖精組がいなかった。ラライラもいないので、彼らと一緒だろう。

「ただいま。子供達はどうしたんだ? 孝宏」

「お帰り。木のおうちを見学させてもらって、そのままお昼寝してるって」

 おやつを食べたら眠くなったらしい。

「陛下とリグハーヴス公爵には説明してこれたのか?」

 テオがお茶を新しくカップに注いでくれる。ルッツとエアネストの席が空いているので、イサとピルグリムも同じテーブルに着く。

「マクシミリアンには許可をもらって、アルフォンスにも一応説明してきた。もうこの森をリグハーヴスの囲壁の外に移植したぞ」

「え!?」

「早っ!」

 エーヴァルトとヨルクが驚きの声を上げた。孝宏とテオ、プラネルトは慣れたのか苦笑するだけだ。

「あ、空の色がさっきと違うかも」

「冬空になってる?」

 薄い青灰色の冬空を見上げる人狼二人が、驚きの声を上げる。

「エンデュミオンはやる事早いよね。ところでリグハーヴス公爵に一応説明したの、()()ってどうして?」

 プラネルトが細長い貝の形のマドレーヌを、イサとピルグリムに勧めながら聞いて来る。このマドレーヌはラズベリーのジャムを一匙落として焼いているジャム入りだ。

「アルフォンスが風邪を引いていてベッドにいたから、詳しい事は後日にしたんだ。マクシミリアンからも〈柱〉が増える件は言ってもいいが、イサがアムリタを作れる事は秘密にしておけと言われたし」

「アムリタって飲むと不老不死になるやつだっけ? イサ、作れるの?」

 凄いねえ、と孝宏が笑う。孝宏の反応がエンデュミオンの想像通りだったので、口を肉球で押さえて、くふっと笑いを堪える。

 マドレーヌの匂いを嗅いで尻尾を振っていたイサが、顔を上げ溜め息を吐いた。

「材料があれば作れるんだけどね。今は流通していないから、作らないように頼まれた」

「そっか、今の黒森之國って妖精(フェアリー)精霊(ジンニー)と契約した人が長生きして老化が遅いって感じだもんね」

 イサの答えに、孝宏が納得顔になる。現在の黒森之國では、故意による不老長寿ではなく、偶然による不老長寿なのだ。欲深い者に、妖精や精霊は憑かない。

「黒森之國の住人自体それなりに長寿だしな。下手にアムリタで長命種ばかりになると、子孫を作らなくなったりしかねない」

 國として、ある程度の新陳代謝は必要だ。平和な分、子作りに勤しまなくなる危険性を孕むのがアムリタだ。

「リグハーヴス公爵に余計な心労はかけたくないよね」

「〈柱〉がリグハーヴスに二柱増えるってだけでも、過剰戦力だもんな」

 テオとプラネルトが空笑いする。エンデュミオンはなで肩を竦めた。

「エンデュミオンと違って、嵐は凍土と同じで医療系だし、碧羅は知識の〈柱〉だけどな」

 他の〈柱〉が不在の間も健在だった翡翠の〈柱〉は、色んな事が出来るようになってしまったが、本来は碧羅のような賢者寄りである。ヴァルブルガの凍土の魔導書は医療系なのだが、地味に攻撃力もある。なぜか嵐や凍土という物騒な称号が医療系の魔導書なのだ。

「戦時中も嵐と碧羅は表に出て来なかっただろう? 攻撃よりも守備型なんだ。まあ、きちんと引き継ぎ出来ていないから、五割くらいか? 使えるのは」

「そうだねえ。これからエンデュミオンに教えて貰わないと、魔法陣読み解けない」

「……そうだねえ。ピルグリムも手足生やせるようになりたいかな」

 イサとピルグリムが、もそもそとマドレーヌを食べながら言った。

「とりあえず、魔法使い(ウィザード)ギルドと魔女(ウィッチ)ギルドに登録だな。登録しないと、うっかりなんかやらかした時に困るから」

「それは体験談?」

 ちろ、とイサがエンデュミオンを横目で見る。エンデュミオンはフンと鼻を鳴らした。

「無駄に魔力があると、なんかやらかすぞ。ピルグリム、魔女ギルドに登録しておかないと、治療費貰えないからな」

「……大事だった」

 ピルグリムが衝撃を受けたように、黄緑色の光の玉が大きくなった。

「魔法陣の授業はエンデュミオンの他に、コボルトの双子の魔法使いがいるから教えてもらうといい。ケットシーの里にいるケットシー達も暇潰しに教えてくれるだろうしな」

「そんなに簡単にケットシーの里に行けないだろ」

「生憎と、うちから行けるんだよ」

 どこかの元王様ケットシーのせいで。

「ねえ、エンデュミオン達のおうち、おかしくない?」

「……おかしいよね」

 話せば話すほど、(いぶか)しがられるのはなぜだろう。

「あはははは」

 堪え切れずに孝宏が笑い出す。

「イシュカが寛容でよかったよね、エンディ」

「やらかしたのは、エンデュミオンだけじゃないんだぞ……」

 ギルベルトのやらかしも、エンデュミオンが被っていたりするのだ。

「エンデュミオン、他に何があるの? イサ、凄く気になる」

「……そういえばピルグリム、靴磨きの妖精に会った事がない。どんな姿してる?」

 真顔になって問い詰めてくるイサとピルグリムに、必死で目を逸らすエンデュミオンだった。


普通のおうちには他の所に行けちゃう〈扉〉はないし、秘境にあるはずのケットシーの里に街中から行けたりもしない訳です。

魔女のおうちで暮らしていたイサとピルグリムですが、きちんと引き継ぎされていなくて魔導書の魔法を使いこなせていない為、ぽんぽんと空間を移動するような魔法は使っていませんでした。

翡翠の魔導書だけ突き抜けて経験を積んだために、エンデュミオンだけが異常に能力値が高い〈柱〉になってしまっています。

手足を生やせるのは、巷ではエンデュミオンだけだったという事実……。


聖女が代々引き継いでいる〈明星〉の魔導書でも出来るけど、あっちは信仰力が加算されて、エンデュミオンよりも魔力消費しないで欠損を〈治癒〉出来て、女神の奇跡扱いになっています。

エンデュミオンは聖属性が殆どないので、信仰力ブーストは使えないのです。それなのに、治療費も貰えないという……。滅多に使わないけども。



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― 新着の感想 ―
エンデュミオンに〈柱〉仲間が増えて良かったです。 あとルッツの親御さんが帰って来たあたりから 世界観の情報が沢山出てきてすごく楽しいです。
壁|w・)エンデュミオンは色々やらかしてるよね。 まぁギルベルトあたりと違って、事前にやること通達してくるけどw
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