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海の街からの移住者達(前)

ルリユール<Langue de chat>は、製本及び痛んだ本の修復を致します。店内には素材の見本の他、製本後の本の見本もございます。本の試し読みも出来ますので、詳しくは店員にお訪ね下さい。

移住者の面接をします。

206海の街からの移住者達(前)


「カティンカ、お迎えに来たよ」

「ににゃにゃー、エルゼ!」

 ソファーからぴょんと飛び降りたカティンカがエルゼの脚に抱き付く。

 仕事を終えたエルゼが迎えに来る夕方、カティンカは待ち遠しいのかケットシー語で良く歌を歌う。

 クラウスに随分慣れたカティンカは、膝に乗ってくるようにもなったが、やはりあるじは別格なのだ。

「お先に失礼します。ヘア・クラウス」

「ク、クラウス、じゃあね」

 エルゼに抱き上げられたカティンカが、前肢をクラウスに振る。

「ええ、また明日」

 二人を見送った後、クラウスは執事室を出てアルフォンスの執務室に向かった。

 ポンッ。

 執務室のドアを開けたと同時に、グリューネヴァルトを頭に乗せたエンデュミオンが〈転移〉してきた。精霊ジンニー便を出していたのだが、時間ぴったりにやって来た。

「呼んだか?」

「ああ、出向いてもらってすまん」

 アルフォンスが身振りでエンデュミオンにソファーを勧め、自らも向かいの一人掛けのソファーに腰を下ろした。

 クラウスはミルクティー(ミルヒテー)を淹れ、エンデュミオンとグリューネヴァルト、アルフォンスに出す。今日のお茶は花のような香りがするお茶だ。

 お茶請けには大粒の胡桃がぎっしり入ったバターが多目の焼き菓子だ。孝宏たかひろが見たら「フィナンシェみたい」と言っただろう。

「貰うといい」

「きゅー」

 いそいそとグリューネヴァルトがエンデュミオンの頭からテーブルの上に下り、焼き菓子を両前肢で持って齧りつく。

 ──うまー。

「美味しいそうだ」

「それは良かった。嵐避けの防護壁を作ってくれたお礼がまだだったが何が良い?」

 ──林檎アプフェル。木の実。

 はぐはぐと菓子を頬張りながら、エンデュミオンへグリューネヴァルトが伝えてくる。

「グリューネヴァルトは、林檎と胡桃なんかの木の実が良いそうだ」

「エンデュミオンは?」

「働いたのはグリューネヴァルトだからな、エンデュミオンも旨い林檎があれば良いな」

「では、収穫出来たら贈ろう」

「楽しみにしてる」

 エンデュミオンはティーカップの二つある持ち手に前肢を差し込み、ミルクティーを舐める。濃く淹れたミルクティーに蜂蜜ホーニックが溶かし混んであって美味しい。

「それでもう一つ新しい頼みがあるのだが」

「何だ?」

 ちらりと上目遣いで、エンデュミオンがアルフォンスに黄緑色の瞳を向ける。話は聞いてくれるらしい。

「フィッツェンドルフからの移民希望者の面会に付き合ってほしいのだ」

「カティンカは──無理だな」

 ヴァルブルガと張り合える、極度の人見知りのカティンカには荷が重い。何しろまだ幼児だ。

「ヨナタン達と遊ぶようになって、明るくなったんだがな」

 人見知りはそのままで、知らないメイドと会うとクラウスの陰に隠れてしまう。

「エンデュミオンが居て何か出来る訳でもないと思うが?」

「あからさまに妖精フェアリーに害意がある者は、永住するかもしれない移住者として認められない」

「ふうん」

 ぺろりと口の回りを桃色の舌で舐め、エンデュミオンが目を細める。

 グリューネヴァルトは自分の分の菓子を食べてしまい、ミルクティーを舐めている。

 エンデュミオンはグリューネヴァルトの菓子皿に、自分の菓子を半分置いてやった。残りの半分は味見がわりに口に入れる。

「……つまり善人判定をしろと言うんだな?」

「ああ」

「エンデュミオンも変な奴がリグハーヴスに住み着くのは好ましくないから引き受けてやる」

「宜しく頼む。近々面接に来る予定だ。日程が決まったら知らせる」

「解った。ギルベルトも暇そうだったら声を掛ける。イェレミアスに順調に腕を上げていると伝えてくれ。ではな」

 エンデュミオンは菓子を食べ終えたグリューネヴァルトを頭に乗せ、帰って行った。


「ここがリグハーヴス騎士団か……」

 マティアスは〈転移陣〉のある魔法使いギルドから出て、真っ直ぐにリグハーヴス騎士団に来た。

 マティアスはフィッツェンドルフの騎士だ。

 元々は王都生まれだったが、妻がフィッツェンドルフ生まれで結婚後に移籍したのだ。

 だが、その妻も先日出産の折りに亡くなった。驚くべき事に、フィッツェンドルフに薬草魔女ヘクセが居なくなっていたのだ。フィッツェンドルフの街には魔女ウィッチも居なかった。魔法が使えない医者ドクトルだけでは手に負えなかったのだ。

 薬草魔女も魔女も、領主が街から追い出していた。マティアスは暗澹たる気持ちを抱えたまま、生まれた息子を抱く事になった。

 それでも日中は子守りに息子を預けて仕事をしていたが、嵐の夜に家が高潮で海水に浸かり、家財のすべてを失った時に何かがポキリと折れてしまった。

 子守りが息子と共に避難してくれていた為、最後の綱は保ったマティアスは、フィッツェンドルフを出る決意を固めたのだ。

 そこに来たのがリグハーヴス公爵領への移住案内だった。

 リグハーヴスはフィッツェンドルフと違い冬には雪が降る寒い土地だ。そして地下迷宮ダンジョンを領内に持つ冒険者の街だ。故に推奨されるのは、手に職を持つ者だったが、家族の同伴も許されている。最も重要な項目は『妖精や精霊、竜を迫害しないもの』だった。これを犯したものは即刻領から追放されるらしい。

 リグハーヴス公爵は妖精擁護者で有名だ。それはフィッツェンドルフでも知られている。フィッツェンドルフでは妖精は目にする事はないが、居ないのはろくな目に合わないと解っているからだろう。妖精だって馬鹿ではない。

「にゃーにゃー」

 聞きなれない声にパッと振り向くと、青みのある黒い毛にオレンジ色の毛が混じるケットシーを肩車して歩く青年がいた。

「ケットシー?」

 普通に妖精が出歩いていた。

「マティアス……」

 ぎゅうっと、マティアスのズボンが握られた。そこにいたのは、青灰色の毛並みの人狼の少年だ。マティアスの息子アルノーの子守りケヴィンだ。身寄りがなく、住み込みで雇っていたので一緒につれてきたのだ。

「大丈夫だよ」

 マティアスの腰の位置にある頭を撫でてやった。首から吊ったスリングの中のアルノーもぐっすり眠っている。

「よし」

 気合いを入れ、マティアスはケヴィンと手を繋いで騎士団のドアを開けたのだった。


 騎士団の広い一室に、リグハーヴスへの移住希望者が集められた。

 マティアス達の他には商人らしき平原族の男女や、体格のよい採掘族の鍛冶職人が居た。これだけだとは思えないので、時間を分けて面接しているのだろう。

「お待たせした」

 予定の時間と同時にドアが開き、執事服の男と身なりのよい男、警護らしき騎士団員が二人が入ってきた。そしてその後から鯖虎柄さばとらがらのケットシーと、そのケットシーより倍以上大きい黒いケットシーが入ってきた。ケヴィンと同じ位の大きさがある黒いケットシーは襟元の毛が真っ白だ。

 くるりとマティアス達の方を向いた黒いケットシーのふさふさした尻尾がびょんと立ち上がった。マティアスの隣でケヴィンの尻尾の毛がぼふりと逆立つ。

「赤ん坊と人狼の子供か」

 嬉しそうに黒いケットシーが近付いて来るなり、ケヴィンの頭を大きな桃色の肉球で撫でた。

「可愛いな」

「お、おっきい! もふもふ!」

 ケヴィンがギルベルトに抱き付く。

「こ、こらケヴィン!」

「あー、ギルベルトは子供が好きなんだ。赤ん坊も預けて大丈夫だぞ」

 慌ててマティアスが止めるが、もう一人の鯖虎ケットシーが頭をぽしぽし掻きながら言った。

「そこで見てもらっていると良い」

 そこ、とは部屋の一角に敷かれた毛足の長いラグマットだった。

「どれ、赤ん坊をこちらに」

 少し年寄り臭い口調でギルベルトはマティアスからアルノーを抱き取った。

「名前は?」

「アルノーです。こちらはケヴィン」

「解った。ケヴィン、行こう」

 ギルベルトはケヴィンとアルノーを連れてラグマットの上に移動してしまった。

「じゃあ始めようか、アルフォンス」

 鯖虎ケットシーが椅子によじ登り、領主であるアルフォンス・リグハーヴスに言った。領主に!

(このケットシーは一体……)

 フィッツェンドルフから来たマティアス達は皆目を剥いたのだが、当のアルフォンス・リグハーヴスは平然と口火を切った。

「初めまして。私がアルフォンス・リグハーヴスだ。移住募集要項にあった通り、リグハーヴスにはリグハーヴスの条例がある。それを厳守出来る者だけを受け入れるつもりだ」

 出入りする冒険者と違い、永住する可能性の高い移住者には、最初から条例を知らないと言わせない手段が面接なのだろう。

「リグハーヴスには主持ちの妖精が多数暮らしている。彼らに危害を与えるものは騎士団に追われるし、妖精本人からも呪われると肝に命じてほしい。その他リグハーヴス中の妖精達からも呪われる」

「ふふふ」

 アルフォンスの隣に座った鯖虎ケットシーが、黄緑色の瞳をギラリと光らせた。

「では話を聞いていこうか。ヘア・マティアスは騎士だそうだが、リグハーヴス騎士団に移籍と言う扱いで宜しいかな?」

「はい、可能であれば。ただ私は男やもめで子供が居ります。日中子供を預けられれば、になります」

「リグハーヴスの教会で子供は預かってくれるので大丈夫だ。勤務時間も調整出来る。そちらのケヴィンも小姓とすれば一緒に寮に入れるぞ」

「寮に入れるのですか?」

「家族を持つと寮を出る団員も居るが、ヘア・マティアスであれば初めは食事も出る寮の方が良かろう」

「それは助かります」

 好条件にマティアスは驚いた。それに何故か既に採用される気配だ。

「ふにゃ、ふにゃあ」

 唐突にアルノーがぐずりだした。空腹かおしめのどちらかだろう。このまま泣き続けると、面接に支障があろうかと、マティアスは部屋を出る事にした。

「御前を失礼させて頂いても……」

「腹が減ったか? よしよしアルノー。エンデュミオン、ミルクだ」

 アルノーが泣き出し、椅子から腰を上げ掛けたマティアスだったが、立ち上がるよりもギルベルトが早かった。

「ふむ」

 エンデュミオンと呼ばれた鯖虎ケットシーが〈時空鞄〉から、当然のように哺乳瓶と粉ミルクを取り出した。粉ミルクを適量を哺乳瓶に入れ、水の精霊魔法(マイム)でミルクを作りだす。

「よっと。はい、ギルベルト」

 エンデュミオンが椅子から下り、哺乳瓶をギルベルトに手渡す。

有難う(ダンケ)。アルノー、ミルクだぞ」

 ギルベルトは手慣れた仕種で左前肢で支えたアルノーに哺乳瓶の吸い口を吸わせた。すぐにアルノーがミルクを飲み始める。じいっとギルベルトを見詰めながら飲んでいるのが気になるが、ミルクの味や温度に不満はなさそうだ。

「ケヴィンも腹は減っていないか? 好きな物を食べると良い」

 エンデュミオンは〈時空鞄〉から、ジンジャーブレッドやクッキー(プレッツヒェン)の包みと、ラルスの香草茶が入った水筒とコップを取り出し、ラグマットの上に並べた。

「お気遣い頂いて申し訳ない」

「この程度気にするな」

 椅子に戻ってきたエンデュミオンは、マティアスに前肢を振った。

 アルフォンスがエンデュミオンに囁いた。

「あれはアハトのミルクでは?」

「ケットシーも人族と同じミルクが飲めるんだ」

「そうなのか」

 どうやらアルノーはケットシーのミルクを頂戴してしまったらしい。しかし、着の身着のままだったマティアスにはとても有難い。

 ケヴィンも出してもらった菓子を口に入れ、尻尾をぶんぶん振っている。随分美味しいようだ。

「マティアスの給金や勤務形態については後程のちほど騎士団副団長と話し合って欲しい」

「は……い? あの、採用なのでしょうか」

「ああ、採用だ」

「有難うございます!」

 これで子供二人を抱えて路頭に迷わなくてすむ。

 その後、アルフォンスは鍛冶屋の採掘族の男と話をしたが、家族と火蜥蜴サラマンダーと共に移住予定のその鍛冶屋も採用された。

 最後に残ったのは商人風の男女だった。暖簾分けでリグハーヴスに来るつもりなのか、まだ若い。

「私どもは印刷を生業にしております」

 男の方が、口を開く。

「ほう、印刷か。フィッツェンドルフであれば聖都シルヴィアナからの仕事があったであろうが、リグハーヴスでは新聞や商店の紙袋程度の印刷しかないのだが」

「リグハーヴスではこの所、説話集ではない物語を書く方がいらっしゃるそうではありませんか」

「確かにいるが、あれはルリユールの製本見本を客に貸しているのだ」

「それでは勿体のうございます。領主様がその方から原稿を買い上げて、本にして黒森之國くろもりのくに中に販売すれば、多大な利益が生まれますよ」

 男の言葉にアルフォンスは薄く笑った。

「それがフィッツェンドルフのやり方か? だが相手を良く調べてからやらねばな。まず書いている当人がそれを望んでおらぬのが第一」

 前に出した右手の親指をアルフォンスが畳む。

「そしてその者は〈異界渡り〉であり、聖都公認でリグハーヴスの庇護下にある」

 人差し指が畳まれる。

「彼を保護したのはリグハーヴスに居住するヴァイツェアの第二位継承者であり」

 中指が畳まれる。

「彼に憑いたのは、ケットシーの大魔法使い(マイスター)エンデュミオンだ」

 薬指が畳まれる。

「そしてその〈異界渡り〉は全ての妖精達に好かれている」

 小指が畳まれる。

「下手な手を打てば、黒森之國中の妖精達に呪われるぞ。ちなみに先程名前を呼ばれていたから気付いたろうが、彼がエンデュミオンだ」

 アルフォンスの隣で鯖虎ケットシーが、黒い肉球のある右前肢を挙げた。ニヤリとした笑みを浮かべて。

「ちなみにそちらにいる子供好きなケットシーは、元王様ケットシーのギルベルト。公爵相当の扱いを受ける方だ」

 ギルベルトはミルクを飲み終わったアルノーの背中を擦ってけぷりと空気を吐き出させていた。手慣れている。縦抱きにしたアルノーを撫でる姿が優しい。

「結論としては、リグハーヴスで店を開くのならば、もう少し下調べをした方が良い。自分のところで書き手を持つくらいでないとな」

 アルフォンスは印刷屋を保留とした。

 面接が終わり、アルフォンスとクラウスを見送ったあと、まだフィッツェンドルフに家がある鍛冶屋と印刷屋は帰ったが、マティアス達はそのまま残った。何しろ家がないのだ。このまま騎士団に案内される事になっている。

「アルノーとケヴィンを見ていてくれて有難う」

「何、良いのだ」

 マティアスが礼を言うと、ギルベルトがふふと笑った。それからアルノーとケヴィンの額にポンポンと肉球を押した。

「〈ケットシーの祝福を〉」

「えっ!?」

 〈ケットシーの祝福〉は、祝福したケットシーの加護を与えるものだ。危機には助けに来てくれるとも言われている。

「あー、フィッツェンドルフからこっちに来るなら知り合いも居ないだろうし、貰えるものは貰っておくと良い」

 エンデュミオンはマティアスの膝を、慰めるように肉球で叩いた。

「騎士団にはケヴィンよりは少し年上だが人狼の子がいるぞ。団長のつがいだが」

「その子は随分幼くて番を見付けたんですね」

「団長のマインラートが精霊憑きで老けるのが遅いから、長く一緒に居られるだろう」

 人狼の番は同族とは限らないのだ。

「エンデュミオン達はこれで帰るが、仕事中に子供を預けるならこの騎士団の裏にある教会にいる、小さな黒いケットシーを連れたイージドールと言う司祭プファラーに頼むと良い。イージドールの手が空かなければ、ルリユールの〈Langue(ラング) de() chat(シャ)〉か、仕立屋の〈ナーデル紡糸(スピン)〉に連れてこい」

「ルリユールと仕立屋?」

「ルリユールの方がエンデュミオン、仕立屋の方がギルベルトの家なんだ」

「子守りを頼んでも良いと?」

「だって知り合いがいないんだろう? 急に来てミルクがある場所は限られるぞ。エンデュミオンの知り合いでは、他には家具大工のクルトの所位だ。エンデュミオンの弟のグラッフェンがいるから伝えておく」

「弟?」

「ケットシーにも兄弟はいるが」

 聞き返されたのが意外だったのか、エンデュミオンは黄緑色の瞳をぱちくりさせた。

 そうではなく、マティアスは同じ街にケットシーの兄弟が居るのが不思議だったのだ。おまけに初対面なのに親切に対応してくれるのが。

「何故、こんなに親身にしてくれるんですか?」

「それはマティアス達が悪人ではないからだな。妖精は人の善悪が解る。妖精やその主に害を及ぼす恐れのある者をリグハーヴスに入れられぬ」

「そうなんですか」

「うむ。危害を加えるのなら迷わず呪う」

「呪う?」

「呪う」

 確認したが頷かれてしまった。元大魔法使いでもその辺りは遠慮なしらしい。

「〈Langue de chat〉では貸本もしているから借りに来ると良い。銅貨三枚で一冊だが、子供向けの本を子供が借りるなら銅貨一枚だ」

「それは有難いです」

 マティアスは余りお金が無かった。フィッツェンドルフの医者は高いのだ。

「リグハーヴスには医者と魔女と薬草魔女がいるぞ。ケットシーの魔女でも構わなければ、うちにも居るから具合が悪くなったら来い。リグハーヴスの診療代は良心的だから」

「はい」

「診療所の場所は後で騎士団員に聞くと良い」

 エンデュミオンは残った菓子を紙袋に入れてケヴィンに渡した。思ったよりもケヴィンが食べなかったからだろう。

「マティアスとゆっくり食べろ」

「有難う」

 ギルベルトもアルノーをマティアスに渡すと、もう一度ケヴィンを抱き締めて頬擦りした。

「ではな」

 ポポンと音を立てて二人のケットシーが消える。

(夢、じゃないよな)

 リグハーヴスに来て直ぐに仕事が決まって、ケットシーに子供達が祝福を受けるなんて。


 マティアスは知らなかった。

 リグハーヴスでもケットシーの祝福を受けた者は殆どいないのだと。

 そして知らなかった。リグハーヴス在住の妖精の多さを。

 マティアス達の驚異の日々は始まったばかりである。

男やもめのマティアス。息子と子守を連れて移住です。このあとケヴィンを養子にしています。

マティアスは外警担当になりますが、仕事中にもあちこちで妖精を見て驚く事になります。

ケヴィンはエリアスと一緒にお勉強です。

アルノーは日中はイージドールとシュヴァルツシルトに預けられる事になります。

メインの聖務はベネディクトがしているので、イージドールはベネディクトの補佐と、孤児院の仕事をしています。



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