憑き神GET
これは中々期待できる出来ですぞ。
ギルドでは現在非常に危険視している魔物が二匹いた。
一匹は最近アルーバル王国東部に接してる海で発見された魚型の魔物で、漁の妨害から始まり最近ではS級冒険者2人・A級冒険者3人のパーティーを返り討ちにし、新たにX級の魔物として登録された"海震"。
もう一匹は「魔の森」の東北東部に出現し、今は亡きゴブリンキングに代わって南南東部を縄張りとする「最強の軍隊」と名高きオーガ軍団の遠征軍を蹴散らし、東北東部の主に収まった"金獅子"。
ミストが次元門でやってきたのは、その"金獅子"が日常的に住処としていて他の魔物が寄ってこない場所。
そして"金獅子"の正体はミストに東北東部の守護を命じられたオリハルコン・スライムの織晴だった。
遠征軍、特にその隊長を務めていた「神鬼」という種族の斧使いはX級の魔物であり、二年前の織晴程度が倒せる相手ではなかったがそこは割愛する。
金獅子の住処ではミストと玄野が胡座をかいていた。
玄野の顔は好敵手と思っていた相手に助けられたせいで不機嫌さがありありと出ていた。
不機嫌さをむき出しに玄野は口を開く。
「で、なんで俺を助けた?どっかの主人公みたいなウザい理由だったら命の恩人だろうが殺すぞ。……もちろんお前の能力の通用しない手段でな」
もちろん我らがミストガン・シャテンドゥほど主人公から程遠い人間はいない。
悪巧み、もしくはただイラついた以外で人助なんてする筈がない!
ミストは見た者がイラっとする笑みを幻覚で隠して口を開く。
「個人的な話なんだが……復讐したい相手がいるんだ。だがその復讐相手が強くてな」
世界最強の龍の一匹、黄金龍様である。
「だからお前に恩を売って協力してもらおうと…止めだ!
直球で言おう!俺の"なかま"にならないか?」
「…!」
"仲間"
その言葉は玄野の心を揺さぶった。
何せ玄野は転生してから自分が"憑き神"という存在であることを打ち明けたことはなく、相手に仲間と認識されても他人に仲間と認識されても玄野本人には全く仲間と言えるものは無かった。
だが今、目の前に自分と実力が拮抗し自分が"憑き神"である事を知り、自分に仲間にならないかと言ってる者がいる。
孤独に嫌気がさしていた玄野がこの申し出を受け入れてしまうのは仕方がないことだろう。
「……いいだろう」
玄野が照れながら了承したその時、
《「仙人(神魂」個体名『シュン・クロノ』が眷属になりました》
という音がミストに聞こえた。
玄野は自分が眷属にされたのが信じられないのか呆然としている。
玄野の事なぞ気にせずにミストはネタばらしを始める。
「心配するな、ただの認識の違いだ。
俺にとって"なかま"とは盾か足でしかなく、言わば下僕と大差なかったのだ。
だから俺が「眷属にならないか?」と言ってお前が了承したらお前は俺の眷属になった、ただそれだけだ。
心配すんな。下僕として扱ってやるよ」
再びミストは見た者がイラっとする笑みをした。今度は隠していなかった。
こうしてミストガン・シャテンドゥは、後に彼のツッコミ担当ともお母さんとも呼ばれる頼れる"憑き神"を仲間にすることに成功した。
一体同じ手法で何人を毒牙にかけるのか、それはまさに「神のみぞ知る」。
これに対してどう思ったのか、感想ください。




