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デスげーむのモテあそびかた  作者: ヒキコモリタイナー
デスげーむの始まり方
1/9

愛し合う夫婦のモテあそびかた

限りなくゲームなリアルと限りなくリアルなゲーム

この両者に違いがあるとすれば果たして何なのだろうか?


物事の始まりから終わりにかけてまでの道筋が徹頭徹尾定義されたリアル?

一つの事象に対して曖昧な多数の要因が絡みつき、状況が臨機応変に変化されるゲーム?


そもそもゲームとは本物を模した偽者である。

生み出す側の法則をシミュレートし、そこにそうであって欲しい願望を付け加える。

都合が良くあって欲しいのだと願う。


そうして人は思い通りに暮らしやすい世界を構築する。

仮想とはそれを現実にする為の媒体。

自らの背中に翼が生えた世界。

出来ないことを体現した理想の世界。

一方でどこか現実に即して貰いたい世界。

個性を持って作り出された神秘の数々を何時しか現実のものとせんと、

人は現実を限りなく空想まで近づける。

ソレなのに空想は弾き出した現実を何処までも模倣する。


そうしてゲームはリアルへと近づいていく。

リアルもゲームへと近づいていく。



どこまでも、どこまでも。




例えば頭の中の妄想での出来事と目の前で繰り広げられている出来事が一致しているとする。

当人にとってその両者に違いを感じることはありもせず、

また、起きた事象も彼が正しく観測された事実として結び付けられれば、

客観的に証言を求めても食い違いなど生じえず、

たとえ彼が目の前の事象を認識していなかったのだとしても、

頭の中の出来事と現実とが結びついてしまった場合、

客観的に見て彼はどちらを生きていたなのかなど知る由もないのである。



では、もし愛し合っている夫婦のうちどちらかが入れ替わっていた場合はどうだろうか。

平時は通じ合った両者には違和感を生じえるのは当然のことだろう。


がしかし、

それは客観的に見たら入れ替わった当人は赤の他人でも相手にとっては愛し合うもの同士だった場合はどうなるのだろう?

あるいは客観的にみて愛し合ったもの同士でも入れ替わった相手にとっては赤の他人だった場合はどうなるのだろう?



他方から見れば知らない相手と幸せそうに浮気している妻と夫に見えているのか

あるいは余所余所しく接しあう離婚寸前の夫婦に見えるのか



夫婦はどうなってしまうのだろう?

興味深いなあ・・・


が、しかし。

いずれにしても世間体が悪いことがこの上ない。

それでは私も困るのだよ。



なのでこれはどうだろう?


限りなく赤の他人に近い夫と限りなく夫に近い赤の他人がいたとする。

妻はどちらを選ぶのだろうか?


尚、前者はどこか面影があるが記憶の上でも書面の上でも赤の他人であり

後者は何処に惚れたのかすら分からないくらい夫の印象を感じないが記憶の上でも書面の上でも夫であるものとする。



さて、ようやく本題だ。

私はこの興味深い議題に理解を深めるべく今日から君の妻の夫になるので、君は今から独身を満喫して貰えないだろうか?




「おい、こんなことをして許されると思っているのか!?

 今すぐ彼女を解放してこの拘束をやめろッ!

 でないとお前には冷たい土の中で眠ってもらうことになるぞ!」



「ねぇお願い!彼を放して!

 今ならまだ許してもらえるから、ねえっ!!」



とある客間の一室には3人が在室している。


一人は踏みつけられ床に伏して

もう一人は少しはなれたところで手を伸ばし

もう一人は刃物のようなものをかざし、男を踏みつけている。


緊迫した雰囲気もつかの間。



「それを決めるのは私次第だ。

それではゆっくり此方に近づいて来てくれ。

次に要求する内容がこの紙に書かれている。

大丈夫、たいしたことではない。

君たちに危害を加えるつもりはないし、それを読んで貰えればすぐにでも彼を解放しよう。」



そういって刃物をかざす手をチラつかせながら、反対の手で一枚の紙を差し出す一人。


その両の手に握られたものを見比べながらも踏みつけられた男とアイコンタクトをとり、進む一人。



恐る恐る、

ゆっくりと。


差し出された一枚の紙をそっと受け取る


瞬間―


突然暴れだすうつ伏せの夫

押し飛ばす妻

突き飛ばされる犯人。

転がり落ちる刃物と犯人


妻はその場で脱力し夫は犯人を抑えに掛かる。

抵抗むなしく、次は先程自身が行っていたように床に縫い付けられる犯人。



たちまちのうちに移り代わる両者の関係

荒い呼吸の声

暫くの間をおいて切り出される言葉。



「っはぁ、よくもあんなまねをしてくれたものだ。

ましてやこの家を狙おうなんて大それたコトを。

さて、目的はなんだ?さっきまでの御託はどういう意味か答えて貰おうか?ぇえッ!!」


そういって力強く踏みつける夫を他所に、少し呼吸を整えた妻も言論に加わる。



「それにしても物騒ね、

アナタの客人だって言うから、紹介状も見せて貰ったし。

本当、有名になるって言うのは良いことがないわね。」



「全く、耳が痛いよ。

彼には今一度人を見る目を見直して貰わないと。」



おとなしく床に伏す一人を他所に調子を取り戻していく二人。



「それにしても一体何を見せようとしていたのかし―」



がしかし、今床で寝ている何者かに受け渡された紙を見た瞬間



「アナタぁぁぁぁッー!」



「おい、どうし―」



先程の光景をなぞるかのように、踏みつけていた側が突き飛ばされる光景

訳もわからず飛ばされる旦那。

豹変した妻が取り押さえにかかる。


「お、おい、なにを!」


「大丈夫!?アナタ

私が抑えているうちに早く!!」


夫に投げかけられた言葉は夫を見ていない。


そうして事態が思わぬ展開を見せ、たちあがる一人。



「助かったよアナスタシタ、すぐ終わらせるからそのまま取り押さえていてもらえないか?」


「ええ、はやく!」


「おい、何をするんだ?!

どうしてしまったんだ、クソッ」


暴れる夫とそれを取り押さえる妻。

悠然と構える見知らぬ客人。


そんな奇怪な光景は客人が新たに取り出した一枚の紙を男に差し出すことにより、変わる。



「受け取りたまえ?」



「は?」



予想だにしない自体が続き、いったん放心状態で受け取り、読み取る。



「私の言うコトを理解してくれたかな?」



「・・・ああ、分かった。」



そうして客人は奥方に目配せすると奥方は静かに拘束を解き、そして主人は静かに立ち上がると何も言わず部屋を出て、やがて屋敷を出て行くのだった。

客間の窓から消え往く夫の姿を確認してから妻が口を開く。


「ねぇ、アナタ本当に良かったの?」


「ああ、大丈夫。

・・・もう終わったよ。」



「もう、後でしっかり説明して貰いますからね。」



そうして何事もなかったなかったかのように、否

まるで客人を自らの伴侶と認めているかのような振る舞い。

明らかな異常

それでも整然と紡がれる会話

あくまでも自然に、

まるで最初からそうであったかのように。



「ふむ、実は彼、君のファンだったんだ。

それを私が自慢げに彼に話すモノだからつい、ね。

彼は随分と君にほれ込んでいてね。

あそこまでされちゃ黙っちゃおけないと思うけどアレでもかわいい僕の部下だったんだ。

君には申し訳ないけどこの問題はきっちり私がけじめをつけるよ。」


「・・・」



やや散らかった室内に二人

しばし訪れる沈黙。


のち


開口




「そ―」



「そ?」



何かを零す妻とそれを追う夫ではない夫。



「そんなっ!私のファンだなんてっ!!」



「ガハッ」



突如振りかざされる暴力

まるで逆襲にあったかのように突き刺される推定、夫。

何処からか取り出された包丁で行われるハートフルサスペンスラブコメディ


何かに悶えるような声を出す偽装夫と仮定妻

両者の顔色は対照的だ。


「あれ?」


何かに気が付いたらしい類推、妻は力なく横たわる仮称、夫を前に更なるヒステリーが産み落とされる。


「え?嘘、何で??

どう言うコト?嘘、嘘よ!ねえ、アナタ?冗談なんでしょう?

ねえ、おきて、起きてよ!!」



追い討ちを掛けるかの如く繰り返される刺突の数々。

気が付いているのだろうか?

今アナタが刺しているのは愛すべき夫だというコトを?

あるいは見ず知らずの赤の他人だというコトを?


もしかして見ず知らずの夫を奪った最愛の他人だと気が付いてそうしているのだろうか?

だとすれば天晴れと賛辞を送ろう。



ケーキ入刀


おめでとう。

これで彼らはは名実ともに立派な夫婦として認められたのだ。


愛すべき人物であるかはともかくとして。



心臓への一突きを頂、真にお礼申し上げ候。

此れにて心身ともに通い合った仲と相成りましたが、どうやらここでお別れのようです。

それでは皆さん、御機嫌よう。

近い将来、また会いましょう。


I'm afraid it's time to say goodbye.

Don't worry,

I'll see you soon.






― GAME OVER







― NEW GAME

→ CONTINUE








Start...






―――――

――――

―――






「オイ、おい、お嬢ちゃん。

 だめだ、こっちも反応がねぇ。」




どうやら眠っていたようだ。

ああ、この声が聞こえると言うコトは、また死んでしまったと言うコトか。

そうか。

全く。



「自力で動けそうにない者は返事をしてくれ。

 ああ畜生、待ってろ今行く。」



― 動けるやつは此方に

― どういうことだ?ログアウトができねぇぞ?

― 誰か、手を貸して

― ねえお願い、家に

― 痛ぇ、何で




それはある日のことだった。

その日を境に私を取り巻く全ての環境が、世界が変わってしまい ―



「おい、どういうことだ。

この辺で倒れている奴ら、皆しんd ―」


「やめろ、見るな!」




― 私は死んでも死ねなくなった。



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