死ねないですゲーム
それはある日のことだった。
その日を境に私を取り巻く全ての環境が、世界が変わってしまい ―
「おい、どういうことだ。
この辺で倒れている奴ら、皆しんd ―」
「やめろ、見るな!」
― 私は死んでも死ねなくなった。
「不味い、皆、離れろ!
「いやぁっ!離してぇ!!」
― あ、不味い
鳴り響く爆音
全身をうちつけるいたみ
なんだ?
ぜんしんが やけるように あつい?
なにかが こげるにおい?
おにく やけてますよ?
おにく こげましたよ?
おにく す
― GAME OVER
― NEW GAME
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―――――
――――
―――
「オイ、おい、お嬢ちゃん。
だめだ、こっちも反応がねぇ。」
「こ、ここは?」
「お、おい!
生きてるぞ、外傷は・・・ないな。
立てそうか?だめか?
動かすから何か悪いところがあったらすぐ言ってくれよ。」
「動けるやつは此方に」
「どういうことだ?ログアウトができねぇぞ?」
「誰か、手を貸して―
「ねえお願い、家に―
「痛ぇ、何で―
荒れ果てた大地
砂埃が舞っているのか赤っぽい空には太陽の陽光らしきものが疎らに差し込む
・・・そろそろかな?
『5』
―おい、どういうことだ・・・
『4』
―この辺で倒れている奴ら・・・
―やめろ、見る・・・
『3』
「ち、不味いッ!」
『2』
浮遊感
『1』
地面に投げ出された直後
全てを揺るがすかのような轟音
最早音とは認識できないほどの圧倒的な振動の伝播。
頭上を吹き荒れる暴風。
断続的に続く地響きとゴオゴオという風の音
静寂
沈黙すること暫く
頃合を計り早々
立ち上がる。
凄まじい光景だった。
火砕流でもあったかのように辺りの草木は焼け果て、いまだ空気がこんがりと熱い。
僅か数メートル先がクレーターのように大地は窪んでおり、地面の割れ目は溶岩が噴出しそうなほど紅い。
ほんの数十秒、数百秒前まではあちらの側にいたのだ。
恐らくあのまま移動しなければ死んでいただろう。
否
実際それで先程死んでいるのだから間違いではないはずだ。
そんな凄惨たる光景の中、
荒れ果てた大地の一部
クレーターとは別の、縦穴のような窪んでいる箇所の一つに私は投げ出されていた。
否
咄嗟に私を担いで運んでくれていたおっさんに窪んだ部分に投げだされていた。
ゴルフボールの如く私がホールインワンされた瞬間、
何事かがこの大地を灼熱の地獄に変えたのだ。
塹壕のような場所で熱風と衝撃に守られた私は奇跡的に無傷だった。
だがオッサンは?
「へへ、無事だったよう・・・ダナ」
四肢はまるで炭のようになっており、
全身が赤黒くなっていて
最早個人の判別は付かない有様だが
その声は確かに此方まで私を運び届けてくれたおっさんの声であり、
先程までとは違いとてもか細い声だった。
「はは・・・そう気に病むな、
一人ぐれぇ救うことができて、良かった・・・。
なあ、アンタ。
一つ頼まれてくれねえか。
俺の胸元に入ってる・・・手紙を・・・ブラックキャロルの・・・ダニエラへ・・・・」
そう言い残したきり、オッサンは喋りもせず、
またピクリともしなくなった。
炭のようになったオッサンの体の胸元に手を回すと、嫌な感触とともに
まるで見えない力に守られていたかのように損傷のない封筒が一つ。
再び静寂が訪れる。
生暖かい風の音
いまだ響き渡る悲鳴と怨嗟、悲しみ咽びなく声
何か巨大な生物の泣き声
・・・そろそろだな。
『5』
塹壕へ引き返す
『4』
何かの滑空音
『3』
縦穴に入る
『2』
轟音
『1』
・・・
再び様子を窺いつつ忍び出ること早々
私が隠れていた穴の両脇には亀裂が走っており、その先にいるであろうオッサンの遺体は跡形もなく消えていた。
とても現実とは思えない、恐ろしい光景を前に私はふと思う。
私は何故ここにいるのだろう。
どうして生きているのだろう。
オッサンが託したこれは何なのだろう。
一体これからどうすればいいのだろう。
ところでまあ、こんなこと言うのなんだけどさ。
いやね、あのさ・・・
悪いけどさ・・・
これから何を、どうすれば良いかとかなんてさ
ぶっちゃけ
知 っ て る ん だ わ 。
ごめん。
だってもう100周以上してるから。
うん
本当はオッサン、死ぬの分かってたわ。
知ってた上で見殺しにしてるんだわ。
すまん。
でもさ、
これ負けイベントなんだわ。
そんなゲームみたいなこと言うなって?
いやさ、現状説明申し上げますと
これ
ゲ ー ム の 世 界 な ん す わ 。
ごめんねー、意味不明なこと口走っちゃって。
デモ、本当のことなんDA☆彡
掻い摘んで説明すると
あるVRMMOタイトルの世界が
ある日突然・・・
脱出不能の異世界っぽいところに変わっちゃいました。
― パチパチパチ!
変わった瞬間は今より2時間ほど前で
3万人程のプレイヤーたちは今
異世界、きてます。
― ひゅうひゅう!
まあ先程、5千人ほど帰らぬ人となりましたけどね。
― ええ~?
ちなみに怪我して死んでも教会で復活するわけも無く、普通にお葬式が開かれるし
モンスター沢山倒してもお金は出ないので億万長者にもなれません。
随分詳しいじゃないかって?
だってもう100周以上してるんだもん。
ごめんねー。
正直、本当は封筒も取らんでええんやで?
あの後すぐ取らないとドラゴン来て遺体ごと持ってかれるわけですが、
そうなるとゲーム的にはクエスト進行不可能でルートが一つパー。
でもさ、先の展開知ってるから。
なんたって100周してるからね。
クエスト的にはアウトでも厳密にはここゲームじゃないからね、ある程度融通きくんですわ。
だからさ、ブラックキャロルのカレルINNに行ってダニエラの女将さんに
「アランのオッサン、あんたのこと愛してるってよ」
みたいな?ことを伝えればそれで問題ないんですわ。
それで無くとも、既に手紙の内容
一字一句覚えてる。
だって100周してるしね。
そんな訳で何時も見殺しにしてる件、
正直すまんと思ってる。
でも負けイベントだしね。頑張ってもアンタ死ぬんだわ。
私が寝たフリしようが前知識使って救出図ろうがどうあがいてもお陀仏するぐらいには死亡ルートしか見えないんですもの。
あれだけがんばったのにねー。
残念。
だから手紙は気持ち的にね。
それに後々分かることだが異世界っぽくてもさ、グランドクエスト的なの用意してあるの。
選択肢多すぎて難しいけども。
私には関係の無い話だけども。
それでもここで生きていくプレイヤーと呼ばれる人間には必要なの。
『元の世界に帰る手がかりガー』、みたいな?
まあ帰れないんだけどね。
死んだら復活するし、手がかりにたどり着いても復活するし。
それ言っても信じて貰えないんだけどさ。
そして不幸なことに、この手紙がないとそういった連中が後々面倒なことを起こす展開がまってるのよね。
帰れないことはあきらめた。
100周したからね。
皆は口をそろえて
ここは異世界で神様の悪戯で連れてこられただけ。
きっと元の世界に返る試練を乗り越えられたら無事に戻れる。
そんな同じお花畑を歩んでいる人間も大勢いるの。
私みたいに早々にあきらめてなじんでいく人間もいる。
皆はここが異世界だ、現実だ。
と言うが、私は違う。
「死ねないデスゲーム」
いくら現実的なあれこれがこの身に降りかかるとはいえ、痛かろうが苦しかろうが蘇り
100周もすれば誰もが知っている行動を示すようになる。
私が死んだ途端、それまで苦しみながら死んでいった人間は元に戻り、また死んでいく。
そして厄介なことに、蘇った私以外は繰り返す事実をすっかり忘れてしまってる。
なので同じ行動、同じ過ちを皆さん同じように繰り返す。
何度でも
何度でも
まるでゲームの中のNPCみたいにね。
今となっては異世界にいるのかゲームをしているのかも分からなくなる始末だ。
そうして同じような展開を重ねてこの死ねないデスゲームをエンディングへと導いてみたが
まっていたのはあの時と同じ紅い空だった。
だから、帰れないことはあきらめた。
100周したからね。
そんなわけだからせめて、痛くなく、苦しくもない。
悠々自適に平凡な生活をしていきたいの、私は。
そしてその願望を実現させるための鍵はこの手紙が担っている。
じゃあそれをどうするのかって?
運命を託された勇者としてまた同じようにこの異世界を攻略するのかって?
チガウ、チガーウ。
すると私は魔法使いっぽい法衣の内ポケットにしまわれた手帳を取り出し
>>set replace_0 npc
最初の一行にそのような文字を書き込み
書き込んだページを剥ぎ取り、丁寧に折りたたんだ後
手帳とは別のポケットにそれぞれを収納する。
下準備はOK
さて、私は何をしようとしているのか。
そうだな。
改めてこの世界に迷い込んだ住人の希望を彼らに押し付けてくること、かな。




