プロローグ
(1/3)今日は3話投稿します。
第一章「AIに支配された世界」開幕です。
「ティッシュ持った?」
「持ったよ」
「ハンカチは?」
「持ったよ」
「本当に?」
「本当だってば」
靴を履き、鞄を持ってドアを開ける。
「行ってきます」
ドアを閉め、つま先で数回地面に小突き、駅へと向かう。
今日は、死ぬほど勉強して合格した高校の入学式だ。
電車に揺られて数十分、高校の体育館に入る。
「新入生の皆さん、こんにちは。私は校長のーーーーです。あなたたちは────」
ねむ⋯⋯。
目を覆い、欠伸を噛み殺す。忙しなく足を組みかえながら、退屈な入学式が終わるように祈った。
◇◇◇◇◇◇
振り分けられたクラスでの自己紹介はうまくいき、今はトイレで用を足していた。
友達もできたし、これで高校生活は安泰だな。
そう思っていると、入り口の方からガラの悪い三人組がやってきた。
一応、偏差値は高い方の高校なのだが、どんな学校にもこんな奴はいるんだな。
チャックを閉め、トイレから出ようとした。
「そこの新入生。金、貸してくんない?」
校内用のサンダルの色で、先輩だとわかる。
下卑た笑みを浮かべて、指をクイッと曲げている。
「⋯⋯嫌です」
端的に言い、すぐさま教室へ向かった。
放課後、廊下を歩いていると。
「おい」
先ほど、俺に金を要求してきた先輩だった。周りからは「目をつけられたな」、「近づかないでおこう」などと聞こえてくる。それを一喝して黙らせると。
「ツラ貸せや」
◇◇◇◇◇◇
「ぐえっ」
「オレを舐めやがってよ!」
腹部を殴打され、くの字に体を折り曲げる。
それを残りの二人が囃し立てていた。それで調子に乗ってさらに殴りつけてくる。
「黙って金を貸しゃいいのによお!」
言いながら、俺の体を投げ飛ばす。動けなくなった自分を尻目に鞄を漁る。財布をとり出すと、中を検めた。
「コイツ、一万円も持ってやがらあ!」
「新入生の癖に!」
「お前、明日から毎日三千円は持ってこいよ!」
口から涎を垂らしながら、苦痛と屈辱に耐えた。そんな姿を見て、写真を撮った三人組は笑いながら去っていった。
◇◇◇◇◇◇
登校すると、俺の居場所は無くなっていた。あの三人組に目をつけられた俺に関わることで、自分も何かされることに怯えていた。昨日は積極的に話しかけてくれた友達も、俯いて黙る俺を遠巻きに見つめるだけだ。授業が終わり、休み時間になると、自分の周りだけ見えない壁が存在しているように、ぽっかりと距離がある。
自分だけがクラスの輪から外れるような、そんな感覚がした。
放課後になると、トイレに呼び出され、三千円をむしり取られる日々。
暴力を振るわれないように、痛い思いをしないように、ビクビクと周りの視線を気にしながら過ごす日々。そんな日々に嫌気がさしていった。
家に帰り、無気力にベッドに倒れ込む。親の言葉には全て生返事をしてしまう。
だんだんと起床する時間が遅くなり、ついに不登校になった。
「どうして、学校に行かないの?」
そんな親の疑問に「うん」とか「ああ」と気のない返事をして、毎日をのらりくらりと過ごしていく。夜、布団にくるまりスマホを眺めていたら、釣り専用アプリの通知がきた。
『今日は大潮で満月! 釣りに出かけよう!』
嘆息しながら、通知を上にスワイプした。ベッドから抜け出し、窓を開けてベランダに出る。少し肌寒い風を浴び、体を落ち着ける。
「やっぱ、まだ寒いな」
そう言い、振り返る。しかし、そこに自分の部屋はなかった。
「⋯⋯は?」
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