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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい


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2/10

第一話

第一章『AIに支配された世界』開幕です。

今日は3話投稿します。(2/3)

「どこだよ⋯⋯⋯⋯ここ」


俺がいたのは自分の家のベランダでは無く、ネオン煌く都市だった。現代の都会というより、未来の世界を思わせるような流線形のビル群が立ち並んでいる。空には車のような飛行物体が飛んでいた。


「すげえ、ドラえもんの22世紀の世界みたいだ。しっかし、あれどうやって飛んでんだ?」


おっと、いけない。そこに興味を示している場合ではないな。周りを見渡してみると、何人か歩いているのが見えた。緊張しながら話しかけた。


「あのー、すみません。ここってどこですか?」


俺が話しかけた女性は、不思議そうな顔をして、じっと俺を見つめた。なんだ、俺の顔になんかついてるのか?


「アナタノ個体識別番号ヲ提示シテクダサイ」


⋯⋯⋯⋯?


「えっと、どういう意味で?」

「アナタノ個体識別番号ヲ提示シテクダサイ」


ダメだ。さっぱり話が通じない。別の人に話しかけた方が良いのか?

そう思い、離れようとした時だった。


「コレガ最後ノ警告デス。アナタノ個体識別番号ヲ提示シテクダサイ」


何だ。この世界、何かがおかしい。


「⋯⋯⋯⋯アナタヲ人類ト認識シマシタ。排除します」


冷酷で平坦な声音で告げられた言葉はあまりにも奇妙だった。

自分を見つめていた黒い目が、赤く染まっていく。おもむろに手のひらをこちらに向けた。手のひらの中央が、黄色く光った。何かを発射する寸前みたいだ。


本能が警鐘をけたたましく鳴らした。それに身を委ね、全力で走る。

近くにあったビルの路地裏に逃げ込む。

ピキュッと発射音が鳴り、着弾した箇所を溶かした。


「アイアンマンのリパルサー・レイかよ!」


そうツッコミつつ、狭い入り組んだ路地裏を突き進む。

手のひらから、光線を出すなんて人間ができることじゃない。それに、あの言葉。まるで人間が悪者みたいな言い草だった。もしかしたら、この世界は⋯⋯⋯⋯。


「「「人類ヲ排除シマス」」」

「な、何だ!?」


辺りからサイレンが鳴り響き、その数が次第に増していっている。どうやら、あのサイレンで仲間を呼び寄せているみたいだ。来た道からガシャガシャと人間ではない何かが所狭しと追いかけてきているのを見て、たまらず駆け出す。


「はあ⋯⋯はあ⋯⋯くっそ、いつまで⋯⋯追いかけてくんだよ」


引きこもっていた弊害で運動していなかったため、体力が底をつきかけていた。

路地裏をがむしゃらに突き進む。何度目かの曲がり角を曲がると、誰かとぶつかった。


「こっちに来てください」

「おぶっ!?」


俺の顔を見るなり服を掴まれ、ビルの中へと引き摺り込まれた。



◇◇◇◇◇◇



「ありがとう。助かったよ」

「大丈夫ですよ」


フードを目深に被った少女は俺の礼に首を振って答えると、フードを下ろした。

フードの中から目が覚めるような鮮やかな青い髪がのぞいて見える。

青い髪とは対照的なピンクの丸い花の刺繍がされている髪留めを着けていた。

そこには、俺を追いかけてきた人間ではない何かと同じく、赤色を目に灯していた。


「っ! お前!」

「いえ、私はあいつらとは違います」


悲痛な声で訴えてきた。


「じゃあ、何なんだよ」

「確かに、私はAIです。しかし、私は人間の味方です」

「人間の⋯⋯味方⋯⋯?」

「はい、そうです。組み込まれているプログラムで攻撃する意思がなくても赤く灯ってしまうのです」


やっぱり、この世界はどこか狂ってるみたいだ。この世界から抜け出すためにも、情報が欲しい。


「この世界は一体何が起きてるんだ?」

「⋯⋯ 実は、少し前にAIと人類の戦争が起こったのです。それで、人類側が負けてしまって」

「⋯⋯マジかよ」


どうやら俺はイージーでファンシーな異世界では無く、超ハードモードの異世界に転移してしまったらしい。


「それで、人類最後の砦が反抗しようとしているグループがいるのを聞いて」

「そこの場所は知ってるのか?」

「はい。私も行きたかったのですが、私だけだと、AIだと見破られてしまう可能性があるのです。しかし、あなたがいれば⋯⋯」

「そういうことか⋯⋯」


ここで、同行するのを断ったら、俺一人では俺が生きていけない。もしかしたら、機嫌を損ねて今ここで殺されてしまうかもしれない。


「⋯⋯わかった。案内してくれ」

「ついてきてください」

「⋯⋯あ、君の名前は?」

「⋯⋯マキナです。そちらは」

「篠村トウマだ」


先にマキナに出て行ってもらい、周りにAIがいないか偵察してもらう。

ゴーサインが出ると同時に、自分も顔を出す。


「なあ、あのでっかい塔は何なんだ?」

「あれは東京セントラルタワーです。あそこに、全てのAIのデータを司る『マスターサーバー』があるのです」

「と、東京!?」


東京。どうして俺が元いた世界と同じ地名が存在してるんだ。ただの偶然として片付けるには不自然だな。ここは本当に異世界なのか?


「何故、そのように驚かれるのですか」

「い、いや。何でもない」


なんか、変な感じがするな。途中式がわかるのに、肝心の解がわからない、そんな感じだ。


「つきました」

「ここか」


ここのドアを開けたら一体何が起こるのだろうか。緊張で顔が強張るまま、ノックした。


「誰だ」


ドアの向こう側から、くぐもった声が聞こえてきた。


「俺、人間なんだけど」

「名前は」

「篠村トウマです⋯⋯?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯良し」


ガチャガチャと鍵を開ける音がする。厳重にしているからか、全ての鍵が開くまで数十秒を要した。

出てきた人は男で、やられたら「あべしっ」とか「たわばっ」と言いそうなコワモテだった。


「そこの女は」

「⋯⋯篠村マキナだ」

「兄弟か?」

「あ、ああ。妹なんだ」


それを聞いた男は無言で中に入るよう、首をしゃくった。


「ここで座って待ってろ。今、大将を連れてくる」


そういうと、コワモテは奥の方へ消えていった。


「ごめんな勝手に兄妹にして。気持ち悪かっただろ」

「いえ、助かりました。それに不快ではありませんよ。新鮮な気持ちになりました」


新鮮? 一体どういうことだ。新鮮の意図を聞こうとすると、さっきのコワモテが男を連れて戻ってきた。


「この人が大将だ」

「柊レイだ。よろしくね」

「俺は篠村トウマで、こっちが妹のマキナです」


柊レイと名乗った男は白髪で、垂れ目から柔和な雰囲気を醸し出していた。


「そうかい、外では大変な思いをしただろう。お腹は減ってるかい?」

「まあ、それなりには」

「そっちのマキナちゃんは?」

「私はそんなに⋯⋯」

「ふふっ。そうかい。⋯⋯⋯⋯レオ、この子達にご飯を食べさせて、部屋にまで連れていってくれ」

「⋯⋯へい。ついてこい」


どこかへ行ってしまうレオの後をヒヨコのようについていく。


「お前ら、ここがどんなところか知ってて来たのか?」

「いえ」

「⋯⋯ここはな、レイさんが残りの人類をかき集めて作った組織、『レジスタンス』だ。民間人が98603名、戦闘員が48510名の計147113名だ」

「スターウォーズみたいですね」

「ああ、そうだ。レイさんが名付けたんだ」

「本当にこれだけなんですか?」

「見た限りは、な」


思ったより大分人類の数が少なかったな。そして、スターウォーズを知っているとは思いもしなかった。

この世界は案外、元の世界に近いのかも知れない。


「ここで食え。そんで地図を渡すから、後は自分でやれ」


そう言って地図を手渡し、レオはどこかへ行ってしまった。



◇◇◇◇◇◇



「ここが俺たちの部屋だな」

「そうですね」


ドアを開け、中に入る。室内は意外と広く、風呂も空調も完備されている。

どうやら、周りのビルや家の設備をかっぱらってきたようだ。


「俺と一緒でよかったのか?」

「はい、信用できるのはトウマさんしかいないので」


言いながら、微笑みをこちらに向けた。人間ではないと分かっていても、どうしてもビジュアルの良い女性に笑顔を向けられたら緊張してしまう。これは引きこもりの弊害なのだろうか?


「とりあえず、俺風呂に入るから。あとで入る?」

「いえ、私にお風呂は不要ですよ。自動で汚れを落としてくれる機能がついているので」

「へえ、便利だな」

「そうでしょうか。⋯⋯背中、流しましょうか」

「いっ、いや、良い!」

「ふふっ、冗談ですよ」


マキナのやつ、AIのクセして冗談を言ってきやがった。⋯⋯というか、意識してなかったけど、マキナには感情があるんだよな。俺からしたら、感情を持つAIなんて存在を疑うところだ。⋯⋯だから、人間と戦争が起こったのか。納得だ。


浴室のドアを開けた。


「綺麗だな」


椅子に座って蛇口を捻り、シャワーを体にかける。風呂の様式は基本世界と変わらないみたいだ。手早く髪と体を洗い、浴室からでる。俺は風呂はあまり好きではない。

基本世界では親に「カラスかよ」とツッコまれるほど、早風呂だった。しかし、綺麗好きなので風呂は欠かしたことがない。我ながら結構矛盾していると思う。


「良い風呂だった」


髪を乾かすのもほどほどに、ベッドに飛ぶこむ。


「早いですね」

「まあね」


明日から何をするのだろうか。



◇◇◇◇◇◇



「会議があるから、レイさんと話した場所に来い」


早朝にレオが部屋にやって来て伝言を残していった。



「こいつが新人かい?」

「新人の篠村トウマです」

「妹のマキナです」

「あたしは倉敷リネ」


そう名乗ったのは、特徴的なピンクの髪をしている女性だった。一目見ただけで男勝りな性格に見える。驚いたことに、左腕が義手になっている。


「彼女は元軍人なんだ。左腕は名誉の傷と言うヤツだね」


物珍しそうに見つめるマキナに、レイが説明した。


「あたしもそれぐらい自分で言えるし!」

「ふふっ、そうかい」

「⋯⋯この左手は戦争の時に、AIのクソどもに持ってかれちまったんだよ。以来、こんなダセー義手をつけないとなんだ」


俺としては大変厨二心をくすぐられる代物でございます。


「やっぱり、戦争は激化したんですか?」

「そりゃあな。最初はあちこちで小競り合いが起きる程度だったんだが、ある時、AIの王が現れてな。『マスターサーバー』って言うらしいんだ。そいつが戦争を起こしたんだよ。結果は人類側が負けてこのザマさ」


リネが説明を終えた後、レイが口を開いた。


「我々が打倒AIを掲げているのは知っているね? 倒すには全てのAIを統率している『マスターサーバー』を破壊すれば良いのだが、肝心の場所がわからなくてね。探っても居場所を特定できないのだよ」

「それなら私が──────」


横に座っているマキナが話そうとする内容を察して咄嗟に手を握る。不思議そうな目でこちらを見てくるが、俺の真剣な眼差しを見て。


「どうしたんだい?」

「いえ、なんでもありません」


危なかった。レジスタンスが総出で調べてもわからない『マスターサーバー』の居場所を俺たちが話したら、スパイだと思われるかもしれない。


「そもそも、なんで新参の俺たちをこのような会議に出席させたんですか?」

「それはね、君たちが昨日までの世界を見たからだ。私たちのアジトは絶対にばれてはいけないからね、滅多に外には出ないのだよ。そこで、僕たちより外の世界の情勢や実態に詳しいと思った君たちから、何か情報は得られないかと思ってここに呼んだのだ」

「あぁ、そう言うことですか」

「何か言うことはあるかい?」

「いえ、昨日まで外にいたんですけど、僕たちも家にこもっていたので、特にお力にはなれないかと」

「そうかい、呼び出して悪かったね。戻って良いよ」

「はい、失礼します」

「失礼します」



◇◇◇◇◇◇



「何故、トウマさんは私を止めたのですか」

「さっき、レイさんが言ってたろ? まだ『マスターサーバー』の居場所がわからないって。ぽっと出の俺たちがペラペラ場所を話したらどう思う?」

「⋯⋯スパイだと疑いますね」

「だろ? いらない誤解は招きたくないから、話すのは後にしたほうが良いと思ったんだ」


ふかふかのベッドの上をゴロゴロと転がる。


「トウマさんはそこまで考えていたのですね。すごいです」

「そうか?」


なんとなく照れてしまい、隠すためにもっとベッドをゴロゴロと転がり、掛け布団を体に巻き付ける。


なんか、レイさんは俺たちを疑っていたような気がする。まさか、マキナの正体を──────ってそれは考えすぎか。

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