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カトレア vs アイリス

「特別にユーリがどれだけ私たちを愛しているか、教えてあげるね♪」


 戦いの場だというのに花嫁衣装を着て、可愛く笑うアイリス。

 男共が相手なら釣られて笑顔を返しそうな所だが。


「全く笑えねぇ……」


 肌がヒリつく程に何倍にも膨れ上がったアイリスの魔力がそれを許さない。


 おいおい、マジで何が起きてやがる!? 今まで魔力を抑えていたのか!?


 焦る気持ちを落ち着かせ、まずはアイリスの出方を見る事にした。

 一挙一動を見逃すまいと集中する。


「それじゃあ、行くよ」


 視界からアイリスの姿がフッと消え、トンッという感触に腹へ視線を向けると、彼女の右手が触れていた。


鳴振波動(ナルカミ)

「がはっ!?」


 雷に打たれた様な激しい衝撃が全身を駆け巡る。


「ーーでも、掴まえた!!」


 痺れる手でアイリスの右腕を掴んだ。振り払おうと空いた手が迫りくる。


「ハッ!」

「甘ぇーーぐはっ!?」


 あっさり腕でガードするも、防いだ箇所から再び衝撃が全身を駆け抜け、掴んだ手が緩む。

 そんな隙をアイリスが気付かない筈もなく、逃げられた。


「危ない。危ない……」


 アイリスは戦い方を変え、腕を伸ばすと鞭のようにしならせ容赦ない連撃を行う。

 当然、触れた箇所からは相変わらず衝撃が駆け巡った。


 肉体強化による打撃? 雷魔法による攻撃? 放出魔力による鎧通し? 頭が経験から攻撃を分析しようと働くも、該当する事象が全くない。

 強いて挙げるなら毒だろうか?

 神経毒の様に、アイリスの攻撃が全身に拡がり蓄積していくのだ。


「とりあえず、うぜぇ!!」


 どうせ生えて来るだろうと、大剣で容赦なくアイリスの腕を切り落とした。


「掛かった」

「あん?」


 切り落としたアイリスの腕が足元に落ちると膨張し……爆ぜた。


「うぉっ!?」


 咄嗟に跳躍し、危機を脱する。しかし、それはアイリスの計算の内だった。


「残念。もう逃げられないよ。【鈴蘭毒(リリーポイズン)】!!」


 一方的な蹂躙。会場に白い華が咲き誇った。

 高速で移動するアイリスが、空中のカトレアを落とす事無く強襲する。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーッ!!」


 全身が麻痺したみたいに感覚を失っていき、気付いた時には負けていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆



「ーーという事があった訳だが、何したよ?」

「なになに、気になる?」

「そりゃあねぇ。……そんで、アレは魔導具の効果かい? あんなのをユーリの嫁たちは全員持ってるのかい?」

「いえ、違うと思いますよ。私も持ってはいますが、そんな効果はないはず……?」

「右に同じ」

「じゃあ、何かい? アイリス個人が何かをしたってことになるよな?」

「それが正解。ヒントを出すなら共振」


「「「共振?」」」


 わかってないようなので、詳しく説明してあげることにした。


「分かりやすく言うと、音叉かな? 振動してるものを当てると、相手にもそれが伝わって振動するだろ? 同じ物なら特に振動が伝わり易くなる」


「「???」」


「共振……カトレアとアイリスが……まさかっ!?」


 分かってない2人に対して、どうやらベルは何かに気付いた様だ。


「水……ですか?」

「ビンゴ♪ 流石はベル先生、分かってる〜」

「アイリスさんの特性とヒントが有りましたからね」

「……悪い。やっぱり、分かんないねぇ。教えてくれないかい?」

「考えれば考えるほど悶々としてくる」


 という事で、カトレアたちに種明かし。


「生き物。特に人……人型は8割が水分だと言われるくらい多くの水を含んでいるのは有名だよな? 人をバケツに入った水だとする。外部から衝撃を加えると中の水は振動する訳だが……」

「現実だと肉体強化や障壁で、バケツ自体が厚くて衝撃が伝わり難い状況です。しかし、同じバケツがくっ付いて、片方が揺れたとしたら?」

「もう片方もくっ付いているから揺れるって事さ」

「おいおい、それってつまりは……」

「アイリスにもカトレアと同じ衝撃……ダメージがいってた?」

「そこでアイリスさんの特性です。自身をどんなに振動させても流体なので肉体へのダメージはなしです。なので、一方的に振動を与える事が出来ます」


 魔法でも打撃でもない、第3の技。それがカトレアを一方的に殴れた方法だ。


「尤も、アイリスはそれを有効活用して、内部反発で振動数を上げたり、移動法に使ってたみたいだけどね」

「完敗だな。破る手段が全く思い付かねぇ」

「当然、俺の嫁さんですから〜。カトレアが上級魔法も使いこなす魔法剣士や魔剣使いなら違ってただろうよ」


 そればっかりは、今後に期待したくとも素質やら運やらが絡むので難しいだろう。


「あっ、いたいた! ユーリ、カトレア貸して!!」


 アイリスが慌てた様子で駆け込んできた。


「貸してって、何があったんだ?」

「皆が祭りでのやられ方に不満で、今からリベンジマッチするって言って準備してるんだよ! カトレアを連れて行かないと単独で狙われちゃうの!?」

「よし、アイリス。1人で頑張ってね」

「酷っ!? ユー娘ちゃんも参加したいの? ()()子達も飛び入り参加するから喜ぶよ」

「すまん、カトレア。頑張ってくれ!!」

「……仕方ないねぇ。参加するよ。不満が残るとアイリスたち嫁間に影響出そうだしさ」


 カトレアはアイリスに背中を押される様に皆の元へと向かった。


 うんうん、嫁間で不満が残るのはいけない。


「ベルもシオンも、カトレアに恨みを晴らすチャンスだぞ」

「そうですね。行きましょう」

「今度はハリネズミにしてやる」


 2人も後を追うように向かっていった。

 そして、入れ違いでやって来たギルさんが声を掛けてきた。


「良かったのか? 彼女たちの戦いを止めなくて」

「まぁね。あそこなら怪我の心配ないし、戦って不満が少しでも減るなら悪くないよ」

「いや、そうじゃなくて…………………………お前が良いなら良いんだ」


 何かを言おうとしたが止め、長い沈黙の後に思わせ振りな事を言い残し去っていった。


「何を言おうしたんだろう?」


 その意味を、数時間後に知る事になる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦いで気分が高揚したアイリス達嫁ズに思いっきり搾取されるユーリ?。
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