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今日も長閑だね

 妖精の箱庭(フェアリーガーデン)に魔法学校の生徒たちが林間学校にやって来た。

 彼らには外にある集会場などに泊まって貰う事になった。

 しかし、浴場はついていないので屋敷の温泉を使う事になる。その為、我が家には大勢の見知らぬ人が出入りする事になった。


「う〜ん、今日も我が家は長閑だねぇ〜」


「この光景を前に長閑だと言える君の環境について詳しく知りたい所だね」


 アダムスの指摘を受けて、俺は目の前の光景に目を向けた。


『わぁーーっ♪』


『待て!!』


 追い掛けられるのが嬉しいのか、笑顔で逃げる俺の子どもたち。それを追い掛けるのはメイドたち……ではなく魔法学校の()()たち。彼らによって繰り広げられる鬼ごっこだ。

 見ず知らずの子たちに萎縮する我が子たちではないからね。全力で遊んで貰っている様だ。


 でも、生徒たちは少し本気過ぎないかな?


「それはそうですよ。なんせ、リリカ様たちが罠を作って生徒たちを嵌めたのですから」


「しかもそこにカグヤ様が水をかけてずぶ濡れにするというコンボ」


「そして、濡れた服を着替えようとしたら予備の下着まで取って逃亡という流れですからね」


「カラフルで豊富なデザインに気になったのではないでしょうか?」


「………」


 なるほど。うちの子たちが握っているカラフルな布は下着だった訳か。

 鬼ごっこなどの遊びではなく、悪戯した子たちから下着を取り戻す為の戦いだった。


「来たな、ガキンチョ!止まれッ!捕まえてやる!!」


「タァーッ!」


「ファッ!?」


 走り回るユリウスの前に先回りしていた男子生徒が捕まえようとその手を伸ばした。

 しかし、息子はその手をかいくぐり、果には大胆にも股抜きをかまして去って行った。


「竜種……にしては身体能力があの年齢にしては高過ぎます」


「ガイアス爺さん曰く、将来の竜王候補だってよ」


 ギルさんが全力で継ぎたくないらしいので、何故か候補として名が上がってしまったらしい。

 俺は本人の意思を尊重するので、嫌なら断れば良いと思っている。

 コレにはマリーやお義母さんのルイさんも賛同しているので多分大丈夫だろう。


「ちょっ、お嬢ちゃん!? 何処に入ってっ!?」


 恐らく子どもの中で一番大変なのはカグヤだなと見ていて思った。


「お姉ちゃんの服のなか〜っ。あったか〜い♪」


「だったら服を着なさいよ!? 裸だから寒……ひゃわっ!?」


「お姉ちゃん。何か濡れてきたよ? 舐めとってあげようか?」


「そっ、それはアナタたちを追いかけていたから汗がっ! やっ、ちょっ、止めっ!?」


「なんか、程よくしょっぱくて……美味しいかも? あっ、何か下の方で多く出始めた所をめっけ♪」


「そっ、それはっ!? ひぐっ!! おっ、お願い、そこだけはっ! ひうっ! だっ、誰か、この娘をっ! あんっ! 引き剥がして!! こっ、このままじゃ私お嫁に行けなくなっちゃう〜〜っ!」


 カグヤが粘液体だとは知らずに背後から羽交い締めにしてしまった女子生徒。全裸だったカグヤは直ぐに姿を変えて制服に侵入した。

 そこでカグヤは彼女の体液を気に入ったらしく、アイリスさながらに女子生徒を蹂躙し始めた。どうやら血は争えないらしい。

 とりあえず、これ以上ヤバくなりそうなら俺が出るとしよう。

 それまでは目の保養という事で……。


「彼女は一目でアイリスさんの子だと分かりますね。しかも魔族の中でも祖先に近い」


「まぁ、魔族の第一世代だからね。それよりあの生徒助けなくて良いの? アダムスに視線を送ってるよ」


「……視線を送る余裕が有るのなら多分……大丈夫でしょう。これ以上、教え子が嫁になるのは……」


 避けたいところなんだね。

 でも、俺の勘が告げてるよ。コレを回避しても次がやって来るとさ。


「天使の子がそっち行ったぞ!!」


「網を借りて来た! コレを使って……も捕まらねぇ!!」


「ぷっ、くすくす♪ お兄ちゃんたちおっそ〜い(笑)」


「「クソガキがっ!!」」


 蝶の様に舞うアテネを捕まえようと男子生徒たちは何処からか虫取り網を調達して対抗する。

 しかし、当のアテネに影響はなく、華麗に回避してから小馬鹿にする。男子生徒たちは怒って一心不乱に網を振るがそれでは一向に捕まえる事は出来ないだろう。


「ママ言ってた。()()()にたいして乱暴するのはメッて!」


「「むっ、虫取り網がぁーーッ!?」」


 アイネが虫取り網に触れると一瞬で燃え上がり消し屑へ姿をかえた。


「あの歳で無詠唱ですか。将来が楽しみですね」


「マジか……。コレには俺も驚いた。うちの子の中では一番速いぞ」


 魔法は喋る様になった頃から少しずつ教えているそうだが、流石に無詠唱で使うとは思いもしなかった。

 どうやら子どもの成長とは親が思ったより速い様だ。


「……さて、そろそろ集合させるかね」


「ほう。それはどの様な手段で?」


「そんなの子供ならではの方法があるだろ?」


 俺はただ一言子供たちに向けて言うだけで良いのだ。


「は〜い、今日のオヤツいる人は集……速いな」


 俺が言い終える前に子供たちは周りにやって来た。


「希望は?」


「プリンが良いです、父様!」


「パパ! 私も私も!!」


「お父様! プリンにクリームもお願いします!」


『プリン!』


「はいはい、今から用意するから手を洗って良い子に待っててね。良い子にしてたらサクランボも付けるぞ」


『良い子になります!』


『………』


 その後、子供たちは洗面所へと向けて嵐の様に去って行き、生徒たちは呆然とそれを眺めていた。


「……確かに優秀な子供たちでした。とはいえ子供は子供。手こずるとは情けない。林間学校の間は予定を変更して私が直々に指導して差し上げましょう」


『そんなまさかっ!?』


 アダムスの宣言を聞いて生徒たちが青褪めた。

 一体、どんな指導をするのだろうか?

 それを知る事になるのは2日目の夕方であった。

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