ようこそカリーナの森へ!
俺は話を聞いた時から今日という今日を待っていた。
「皆、例の布はちゃんと持った?」
『OKで〜す!』
妖精の箱庭の入口に当たる場所で俺たちは来客を待っている。
「よし、それじゃあ森に合図を送るぞ!」
俺は手にしていた石を空に軽く投げて魔法銃で撃つと爆音が森に響き渡った。
それを合図に森の奥からは先頭をベル、周囲をイナホたちが警護した集団が歩いてやって来た。
彼らは魔法学校の制服を着ており、校長であるアダムスやエミリアの姿も垣間見えた。
そして、彼らが入口で止まった所で嫁さんたちに持たせていた布を広げた。
『ようこそ! 妖精の箱庭!!』
「林間学校楽しんでね♪」
そう、アルスマグナ魔法学校の林間学校が今始まるのだ。
『………』
「皆、俺たちの歓迎に驚いたみたいだな!」
驚きに目を見開き、彼らは硬直してしまった。それ程までに驚いてくれたのだろう。垂れ幕を準備したかいが有るというものだ。
「いや……アレは多分……」
「魔物であるドライアドたちに驚いて……」
そんな声がアイリスたちから聞こえてきたが気のせいだろう。
だって、ドライアドだよ?
見た目は妖艶な美女で、ちょっと大食いなだけで大人しい魔物たちじゃないか。
「「「うぅ……」」」
そう思っていたら数人の生徒が目眩を起こした様にフラフラしだした。
「おい、大丈夫!? 森で待ってる間に体調が悪くなったのか!?」
「「「グスッ……グスッ……」」」
「本当に何があったの!?」
心配して俺が近付くと今度は数人の女子生徒たちが泣き出してしまった。俺は引率役であるアダムスとベルに聞いてみた。
「「いえ、特に何も有りません。放っておいて大丈夫です」」
「「「うわぁーーっ!!」」」
「この状況で!? マジ泣きしてるけどっ!?」
更に他の生徒たちもよく見ると死んだ目をしていた。
コレで何もないというのはおかしな話だ。
「ちょっと緊張して疲れただけですよ。お風呂にでも入ってリラックスすれば大丈夫です」
「そっ、そうなの?」
「そうです」
「分かった。ベルがそう言うなら信じるよ。体調が悪化したら教えてね。エリクサーを渡すからさ」
「ええっ、その時はお願いします」
とりあえず、ベルたちを信じて宿泊施設として用意していた場所へと案内し、平穏な小世界のお風呂を開放する事にした。
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風呂上がり。男湯では。
「ふう……っ、いい湯でした。妻たちとの旅行先にと提案されていましたがコレは……有りですね。ここなら妻たちも喜びそうだ。それにこの風呂上がりのミルクは特に最高だ!」
大きなお風呂とミルクを堪能したアダムスは満足していた。
「……それに生徒たちもリラックス出来て調子が戻った様ですね」
風呂からあがった生徒たちを見渡すと元の落ち着きを取り戻し談笑している姿が見えた。
そんな中、一人の教師がアダムスの元へとやって来る。
「あっ、あのっ、アダムス校長……」
「はい? どうしました?」
「ここは一体……」
「イナホさんたちのご実家ですよ。そこの一部を好意で貸して頂ける事となりました」
「ご冗談ですよね!? トレントが多数生息する竜王国の危険区域ですよ!? 現に私たちも遭遇して襲われましたがっ!?」
「しかし、事実です。彼女たちの旦那さんであるユーリさんがこの場を一人で造ったそうです」
「それはご冗談ですよね? 私でも分かります。一人で出来る筈が有りませんから」
でも、それが本当なんですよねぇ〜。
まぁ、困惑している人に伝えても意味がないので言いませんが。
「それより生徒たちを置いて私の元へ来たのには何か話があったからではないですか?」
「そうでした。校長……あのドライアドたちの数は? 襲われたりしませんか?」
「あ〜〜っ」
ドライアドは植物系の魔物の頂点に位置する者たちで、人と友好的で有るが目撃談や接触の話は少ない。
それがアレだけの数いれば怯えるのも無理はないだろう。
「それは大丈夫ですよ。彼女たちは温厚ですし、ユーリさんたちに従っていますから」
「あと……一部の生徒たちから『奥様の件は反省しているので帰して下さい』と懇願されているのですが……」
「その子達には『諦めなさい』と伝えておいて下さい。何、3日の辛抱です。頑張って下さい」
「はい……」
『………』
聞こえていたのか、一部の生徒たちは膝から崩れ落ちていた。
頑張りなさい。それを乗り越えれば強くなれる筈ですから!
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風呂上がり。女湯では。
「こっ、コレはっ!? 上級貴族ですら入手困難と言われる石鹸とシャンプーじゃない!? それにこっちの香油は王族御用達のものよ!?」
『!?』
男子生徒たちの様な暗い空気ではなく、貴族出の女子生徒が上げた声を発端に賑わっていた。
「お話した通り、どれも自由に使って貰って構いませんよ」
『本当に良いの!?』
「イナホちゃんの言う通り、うちで作っているものだから遠慮しなくて良いわよ。あっ、使い方が分からなければ先生かイナホちゃんたちに言ってくれれば教えるからね」
『やったーーっ!!』
女子生徒たちはそれを聞いて歓喜の声を上げ、自分を磨く為に手を伸ばした。
「カリーナの森でも女子は変わらないのね」
学生経験のほぼ無いベルは普段と変わらない女子生徒たちの姦しい様子に苦笑いを浮かべるのであった。
そして、風呂上がり。
美しく磨き上げられた女子たちに男子たちが目を奪われる事になるのはそう難しい話ではなかった。




