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ネタバラシ

 依頼主の元に向かうと戦場だった。

 傭兵を連れたメギストスが襲撃をかけており、それに対して竜王祭で戦ったヨーゼフがシュヴァルツ家の者たちを率いて抵抗していた。

 戦いは俺たちの参戦を持って終わり、そこで誘拐された筈のエドワードさんと再会したのだった。


「まさか、ヨーゼフがいるとは思わなかったよ」


「竜王祭以降、ユーリ君の躍進は聞こえていたからね。今回はそれを利用させて貰ったんだよ。迷惑かけて済まないね」


 カルナとエドワードは離れていた時間を埋める様に寄り添って、これまでの事を語っているので、俺はヨーゼフと話す事にした。


「お陰で今までで一番人相手に戦ったよ。少しはメッセージでも残して欲しかったよ。例えば、竜王国の商会ギルドで会長している嫁さんのカリスとかね」


「そうだね。説明不足が原因でうちの仲間までユーリ君たちに倒された訳だし」


 それについては済まないと思う。うちは敵対する者には容赦しない主義なものだから。


 でも、それだけじゃない。

 敵も味方も傭兵で判別出来なかったのだ。


「ギンカたちから聞いたよ。商会『シャーウッド』。表向きは商会だけど、裏ではシュヴァルツ家所属の傭兵団なんだって?」


「貴族に仕える傭兵でもそれだけでは食っていけないからね。他で収入を得る必要が有るのさ」


「エドワードを連れ去ったのはシャーウッド。なら、カルナの方はどっちがどっちなの?」


「それはだね……」


 ヨーゼフの説明によると予定通りにエドワードの保護に成功した後、彼の妻子が人質にされる可能性があったのでそちらの保護にも動いた。


 しかし、身内の中に密告者が紛れていたせいで、カルナたちの事が伝わったそうだ。


「まんまと誘拐されてしまったが、なんとか見付け出して撃退出来たよ。でも、騒ぎに乗じてカルナさんたちに逃げられて焦ったよ」


 どうやらカルナたちを連れ出したのは敵勢力で、それを襲撃し撃退したのがヨーゼフたちだった様だ。


 なら、カルナを追って教会に来たのもヨーゼフたちだろうか?


「教会で対応した嫁のミキに追跡者に強そうな人がいたって聞いたけどヨーゼフの事?」


「君の嫁は何人いるんだい? 強そうな人が自分かは置いておいて、教会に来たのは私たちだよ」


「そうか。なら、嫁さんを脅した人に会わせてくれない? ちょっとお話がしたいんだ?」


 状況は分かるが少しは文句を言いたいと思っていた。


「彼の事は済まない。でも、彼は密告者でね。カルナたちを見失った事に一番焦っていたみたいなんだ。だから、あんな態度にもなった様だよ。お陰でこっちは直ぐに気付く事が出来た。

 ちなみに、今頃は……何してるのかな? 強く生きてる事を祈ろう」


 どうやらヨーゼフたちが何かしらのお仕置きをしてくれたらしい。

 その結果、死んでいるかもしれないレベルの様だ。それだけに裏切りは許せなかったのだろう。


「裏切りは重罪。何をされても文句は言えない。でも、彼もまさか団の仲間がホモで自分が掘られるとは思いもし無かっただろうさ」


「ファッ!?」


 遠い目をするヨーゼフ。それが真実で有る事を示していた。

 裏切った奴に多少なりと同情を禁じ得ない。


 強く生きて下さい。そっちに目覚めれば良い思い出になると思うよ。

 俺は絶対に嫌だけどね!


「うぅ〜〜……」


 気絶していたメギストスから声が上がった。どうやら目を覚ました様だ。





「さて、何で襲撃したのかな?」


 目を覚ましたメギストスを取り囲む様にして尋問タイムを開始した。


「貴様ら、よくも私に手を出してくれたな! 覚悟する事だ! 帰ったらそれなりの処罰を与えてやる!!」


「いや、攻めてきたのはアンタでしょ? しかも返り討ちにあって捕虜の身なのにその態度……逆に凄いね」


 なんか悪役貴族らしくて一層清々しい。

 俺は良いけど、お前はダメの理論だろうか?


「私だって本来なら傭兵と共に直接乗り込んだりしないわ! しかし、隠していたアレを誰かに見られるくらいなら……」


「隠し? ユーリが机ごと盗んだ事と何か関係あるの?」


「何っ!? 机も盗まれていたが、貴様たちの仕業か!?」


「はいはい、今返しますよ」


 俺はアイテムボックスから盗んだ机を取り出して目の前に置いた。


「それで目的の物は何処かな? この法外な契約書とか?」


「誰が言うものか! そんな物より見られたくない価値の有る物だ!!」


「そうか。なら、コレは要らないね」


 ビリビリビリッ。


「私の契約書がっ!?」


 魔法処理の無い普通の契約書だったので、目の前でビリビリに割いてあげた。


「あっ、それともこっちとか? 魔法処理もしっかり施されてるから強制力も強いしね」


「それは違っ……」


 目的の物では無いだろうが、見せると青褪めた様子からかなり重要な書類だという事が分かった。


「あぁ〜っ、コレも違ったか? 魔法処理されてるし、()()は手が出せないね」


「あたり前だ!その書類の保護に幾ら金をかけたとーー」


「でも、俺には関係ないけどね」


 ザクッ。


「何ぃいいーーッ!?」


 ナイフ状にしたフラガラッハで契約書を突き刺すと破棄を示す炎と共に灰になってしまった。


「そっ、そんな……アレは反抗する貴族を従える為に……」


 ショックで灰となった契約書を見詰めるメギストス。

 俺はここで更に追い付いを掛けてる事にした。


「もう一層、机ごと跡形もなく消し去るか。盗んだのを知ってても現物が無いと証拠にはならないし」


「何を言って……る?」


「うん? 言葉通りだよ。アビスコア」


 重力魔法によって生み出された球体は、机を飲み込むと圧縮粉砕出来なかった魔法契約書だけを吐き出した。

 それから丁寧に契約書を1枚1枚破壊して燃やしていった。


「………」


 メギストスの感情は無くなったらしく、もうどうとでもなれと言った感じの虚ろな目でその一連を見ていた。


「ユーリ君、流石にちょっと……」


 やり過ぎたのか、ヨーゼフに少し引かれてしまった様だ。


「それで机に入ってた書類も全部消えたけど目的の物は何だったの?」


「あっ、確かに。メギストスさんや? それで目的の物は何だったの?」


「それは……言えない」


「仕方ない。最終手段に出よう」


 俺はアイテムボックスに手を入れて1枚の手紙を取り出した。


「え〜っと……『あぁ、愛しのアフロディーテ。君はどうして美しいんだ! 陽光に輝く髪、陶磁器の様に白きその肌。母性を称えるその双丘。君が歩く度に漂わせる甘い香りは私を理性の檻から解き放ってしまう!出来るならその双丘に手を埋め、貴方を私の色に染め上げたい!』……コレに心辺りは?」


 読み始めた途中から真っ青になって震え出したメギストス。


「なっ、何故それを……貴様が? それは彼女に宛てて出した筈……?」


「正解です。こっちの欲望丸出しで隠していた物は読みたく無かったので……アディさんに宛てたラブレターの方を読ませて貰いました」


 部屋で回収してきたラブレターの山も一緒に見せ付けた。


「貴様が犯人かっ!? いや、それ以前に彼女とどういう関係なんだっ!?」


「アディさん? 彼女は俺の奥さんの母親。つまりは俺から見てお義母さんです」


「なんだと……!?」


「それでは本題。コレを外で拘束されてる傭兵や屋敷の人たちが読んだらどう思うかな? ついでに近隣の貴族にまで送ったりして?」


 公開処刑。もしそれをしたら社会的に死ぬだろう。

 他の貴族たちからも距離が置かれるのは目に見えている。


「まさか!? 嘘だろ? 嘘だよな? そんな事したりしないよな!?」


「それを決めるのは貴方次第ですよ。分かったらキリキリ悪事を暴露しようか?」


 俺がメギストスに笑顔を向けると彼は引き攣った笑みを浮かべ硬直するのだった。


「ユーリさんって、敵に対して鬼かと思う程容赦ないですよね?」


「「それな!」」


「敵になる事が無くて良かったです」


 ホッと胸を撫でおろすアイリスたちなのであった。

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