再会
朝になって俺たちは、例の採取クエストの件を報告しに依頼主の元を尋ねた。
「エルフ怖い。エルフ怖い……」
「テルキ……気を強く持て!」
「メル……俺も君みたいに魔導師の適性あったら今頃は……」
リリスたちから距離を開けて歩くテルキは怯えていた。
彼はリリスたちのシゴキによって植え付けられたトラウマから未だに抜け出せずにいる様だ。
しかし、彼はエルフの本当の恐ろしさをまだ知らない。
本当にヤバいのは夜の彼女たちだ!!
獰猛な狩人の如く用意周到に策を練り、獲物(俺や男エルフ)を仕留めるのだ。
俺たちの場合、高魔力による肉体活性からくるスタミナで助かっているが並の男なら廃人になるだろう。
「それにしてもスイカ……リリスさんたちは、なんか妙にツヤツヤしてませんか?」
メルたちには昨夜の件で素性を明かしたので、人のいない所では本名を呼ぶ様になっていた。
「それは今の私たちが気力に満ち溢れているからでしょうか?」
「リリスはお母さんや妹たちがいなかったから存分に甘えられたもんね」
確かに昨日のリリスは積極的に甘えてきた。
お願いされた後ろハグから耳マッサージをしてあげると、くすぐったさと恥ずかしさから彼女が悶えている姿は特に可愛かった。
あまりに可愛かったのと嗜虐心が相まって全力で責めてしまった。
その結果、やり過ぎると彼女のスイッチを押してしまう事を学んだよ。
「どういう事ですか?」
「夜に運動でストレス発散したって話だよ」
「なるほど! それならスッキリしますね!」
「ヤバいよ、ユーリ!この子、ピュアだった!?」
「まぁ、薄々思ってたけどね」
「ん?」
メルは一連の話を理解出来なかった様だ。
わざわざアイリスが口を濁したのにそれを彼女は本気と捉えてしまった。ちなみに彼女の相棒は理解した様だ。
「メルらしいよ……。何時になったら僕らは進展するのかな?」
遠い目をしたテルキ。
彼は彼なりに女性関係で色々苦労している様だった。
……あとで相談に乗ってあげよう。
なんなら竜王国へ連れ帰り、お気に入りの酒場へ連れて行くのも有りだろう。
「彼女と比べたら私たち汚れてるのかもしれませんね?」
「みっ、認めたくないな……」
「なら、こう考えれば良いんじゃない? 汚れたじゃ無くて染められた」
「「それだ!」」
それで良いのか?
色々ツッコミたいが彼女たちがそれで納得するのならそれで良いかもしれない。
ウォオオォォーーッ!!
「ナニアレ?」
依頼主の屋敷へと辿り着くとそこは怒号の飛び交う戦場と化していた。
屋敷の周囲は既に取り囲まれており、依頼主は防衛戦を強いられている様だった。
「アレが元凶みたいだね」
アイリスの指差す先を見ると屋敷の門前に陣取る集団があった。
「我が家から奪った物を返して貰おう!!」
集団の中央では守られた人物が屋敷へ向かい語りかけていた。
その人物をよく観察してみると見覚えのある人物だった。
「メギストスじゃん。ギンカ。雄叫びよろ」
「了解しました。……アオォオォォーーン!」
『!?』
彼を見付けた時点でどっちが悪いか直ぐに判明。直ぐにギンカに魔物体へと姿を変えて貰い雄叫びを上げて貰った。
突然聞こえてきた魔物の雄叫びに争っていた者たちの手が止まる。彼らの視線は当然俺たちに向けられた。
「防衛中の皆さ〜ん、聞こえますか? 撤退して下さい! 巻き込みますよ?」
『?』
「っ!? 撤退! 団長命令だ!! 急ぎ戦闘を放棄して屋敷に逃げ込め!! ルーン魔法の巻き添えを喰らうぞ!!」
俺の考えを理解した人物がいたらしく、屋敷の塀に登って叫んだ。
それを聞いた者たちは困惑しながらも撤退を始めた。
「嵐と氷をベースに……」
ルーン文字は単体で意味を成すが、組み合わせる事により新たな効果を生み出す事が出来る。
「雹槍天幕」
宙に書いた文章が完成すると同時に空は曇り気温が下がった。
そして、残った者たちの上にオーロラが生まれると彼らはその美しさに見惚れた。
「綺麗だ……えっ?」
束の間の和らぎ。そう例えるのが妥当だろう。
何故ならそんな彼らへ向けて容赦ない攻撃が降ってきたのだ。
『ギャアァァーーッ!?』
槍の様に降りしきり雹による殴打と凍結は、彼らの声を呻き声に変えるのにそう時間はかからなかった。
雹が止んだ後に喧騒は消え、静寂が辺りを包み込んでいた。
「それじゃあ、一緒に来ようね」
「………」
「他の人たちの事は宜しくお願いします」
『お任せ下さい!!』
あとの事は屋敷の人たちに任せて、俺は顔がパンパンに腫れたメギストスを連れて依頼主に会いに屋敷へと入った。
「カルナ!」
部屋で少し待たされると一人の青年が駆け込んできてカルナへと抱き着いた。
「えっ、エドワード!? 無事だったのね!!」
「ああ、君には事情を話せず心配をかけてしまった」
「ううん、良いの。貴方が無事ならそれで……」
2人は再び強く抱き締め合いお互いの無事を確かめあった。
「無事で良かったね、カルナ」
「貴方がユーリさんですね。ここまで妻をありがとうございます。彼から貴方の事を聞かされていました。彼の提案もあって貴方に託して正解でしたよ」
「うん? 彼?」
今、エドワードは託してと言ったか?
というのは、カルナが俺の所に来るのも計算された事という事なのだろうか?
「エドワードさん。つかぬ事を伺いますが、彼とは一体……?」
「うん? 2人はお知り合いだと聞きましたが?」
「誰にですか?」
「シュヴァルツ家が抱える傭兵団『シャーウッド』の団長ヨーゼフからですよ」
「ヨーゼフ!? あの弓兵の!?」
その名前にはしっかり覚えがあった。
何故なら彼は竜王祭において、自分に異世界で初めての怪我を負わせた人物だったからだ。
「思い出してくれた様だね。この前は気付かなかった様だけど」
店で聞いた覚えのある声に振り向くとあの時と同様にフードを被った男が立っていた。
でも、今なら彼が誰か分かる。
「ヨーゼフ」
「久しぶりだね。元気してたかな?」
フードを降ろした彼は2年前と全く変わっていなかった。




