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シャーウッド

「会長~、入りますのぉ〜」


 ギンカたちが会長と面談しているとおっとりした雰囲気を持つ女性が資料を抱えて部屋へとやってきた。


「おおっ、マリナ君!」


「彼女は?」


「彼女はうちの副会長をしてくれているマリナ女史です。大変優秀な娘で本来ならば会長をするのも……」


「私〜、地位は大事だと思いますの。だって、そうじゃないとしたい事も出来なくなりますもの。でも、登り過ぎると今度はそれで雁字搦めになるので今が丁度良いのですの〜」


「そんな訳で私が責任を背負う代わりに、彼女には色々サポートして貰っているのです」


「そうなのですよぉ〜。会長にはお世話になってますの。それでぇ〜、本題なんですけど? お探しの資料が無事に見つかりましたよぉ~」


「本当か! 良かった! まだ保存されていたのだな!!」


「はいなのですよぉ~。捨てる日を明日にズラしていたので助かったのですよ〜。こちらが皆さんの求める資料ですの」


 そう言って彼女はギンカたちの前に資料を置いた。


「本来ならナベリウス家の縁者だとしても見せられないのですが、今回は犯罪が絡む可能が有ると判断しました。

 なので、我々が同席とこの部屋でのみ資料の閲覧を可能とさせて頂きます」


「こちらがお求めの商会『シャーウッド』に関する資料なのですの〜」


「シャーウッド? どんな商会なんですか?」


「シャーウッドは、シュヴァルツ公爵家が援助している商会だった筈です。

 コレにはマリナの方が詳しいかもですね。なんせ彼女の家も援助してるそうですし」


「「えっ?」」


 会長の発言にミキとカルナは顔を見合わせた。

 もしそれが真実なら自分たちの行動は全てシャーウッドの思惑通りという事になるからだ。


「実はそうなのですの」


「しっ、知りませんでした」


「そんなに身構えなくても大丈夫ですの。援助したと言っても立ち上げの時に名を連ねてるだけですの」


「そうですか。それでどんな商会なんですか?」


「そうですね。成り立ちとしては傭兵や路上生活者の救済の為に生まれた商会です。主に農産物の育成と取り引きを生業としていますが、一部の方たちはその腕っぷしを活かして護衛などもするそうです」


「……そうなんですね。カルナの所とは取り引き有った?」


「シャーウッド……あ〜っ、はいはい。有ったわ! というか、誘拐当日に最後に会ってた商会はそこよ!」


「ああ、会食をしたってやつ? なら、その時に誘拐されたと見るべきなのかな?」


「可能性は高いかもしれないわね」


「キティさんの方は何か……キティさん?」


「ふむふむ……」


 ミキがギンカを見ると手形を持った状態で目を瞑り、時折何かと会話する様に頷いていた。


「キティさん。まさか、何か向こうで有ったの?」


「……ええ、有った様ですよ」


 ギンカは目を開けるとカルナの方へ向き直りこう告げた。


「エドワードさんの生存を伝える者が接触してきたそうです」


「「「「!?」」」」


 これには多少の事情を知っている会長たちも驚いた様子だった。


「おいおい、マジかよ!」


「そっ、それは本当なんですか!?」


「はい、今ユーリさんから来た念話による情報です」


「それじゃあ、ソイツを追って行けばーー」


「無理です」


「どうして!?」


「ワザワザ接触してくるだけあって、ユーリさんは直ぐに巻かれたそうです」


「そっ、そんな……」


「気を落とすなよ、カルナ! とりあえず生存率が上がっただけでも良しとしようや」


「確かにそうね。今まではそういう情報すら無かったもの……」


「ああ、だからアタイたちは出来る事をするだけさ。会長さんたちも違和感が有ったら教えて下さい!」


「ええ、協力いたしましょう」


「疑われるのは嫌なので、私も快く協力しますの」


「ありがとうございます!」


 こうして5人でシャーウッドに関する資料を読み解く事となった。






「これは……」


「何か有りましたか?」


「ええ、出国時のメンバーと入国時のメンバーについてなのですが……」


 名簿を見てくれていた会長はある事に気付いたらしく、出国時と入国時の名前リストを並べて置いた。


「実は入国時に人員が増えているのです」


「「「増えてる?」」」


 会長の指摘に従い、皆で一致する名前を順番に潰していった。

 その結果、とある人物の名前が浮上した。


「デッドラウ?」


「商会に登録されている従業員リストにもないみたいですね」


「門番の記録では、竜王国で雇われた男性だと記載されていますの」


「小さな違和感ですが、そこまで珍しい事ではないです。ただ一応知らせておこうと思いまして」


「ありがとうございます。何か関係有るかもしれないので気に止めておきます」


 その後も資料を漁るが、特にコレと言った成果も得られず解散する事となった。

 外に出ると既に日が落ち始め、結構な時間を費やした事を示していた。


「結局な時間使ったけど成果は無しか……」


「残念だけど、次の酒場を期待ーー」


「その必要は無さそうですよ」


「「えっ?」」


 2人はギンカの声に振り向くと荒くれ者の様な風体をした集団がやって来て3人を取り囲んだ。


「無駄な抵抗はせずにそこのカルナーー」


「ジオグラビティ」


『ごあっ!?』


 そんな彼らに対してギンカは、話も聞かずに重力魔法で押し潰すのであった。


「げっ、ヤバっ!? 皆、済まねぇ!!」


 運良く過重力の空間から逃れた者が仲間の惨状を見て不利を悟ると直ぐに逃げ出した。


「逃がすと思いますか?」


「ギャアァァーーっ!?」


 ギンカは無慈悲な言葉を彼に掛けると魔物体へと姿を変えて背後からその胴体に噛み付いた。

 周囲に逃亡者の血が飛び散り、壮絶な悲鳴が立ち上った。


『ひぃ!?』


「こうなりたく無かったら一歩も動かない事です」


 ぐったりとした逃亡者を置いてギンカが人型に戻ると呆然と一連のやり取りを見ていたミキたちは正気を取り戻した。


「ちょっ、ギンカさん!?」


「やり過ぎっ!?」


「安心して下さい。手加減してます」


「「何処がっ!?」」


 今なお血溜まりを広げていく逃亡者。彼の呼吸は乱れ、その場を動く気配すらない。

 誰が見ても不味いと思えるこの状態を手加減というギンカにこの場にいた全ての者は戦慄を覚えるのだった。


「上級ポーション程度で癒えますよ?」


『それ重症だから!!』


 上級ポーションで逃亡犯の傷を癒やすギンカに襲撃犯も一緒になってツッコミを入れた。

 その瞬間、ミキたちと襲撃犯に不思議な絆が生まれるのであった。


「……それじゃあ、話を聞かせてくれるかな?」


「ああ! アンタたちは命の恩人だ! いくらでも協力するよ!!」


 その後、ギンカを諭して重力魔法も止めさせたカルナたちに襲撃犯は仲間意識を持ったらしく、洗いざらい何もかも暴露するのであった。

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