表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

413/484

採取クエストと同行者

 ギンカたちと分かれて冒険者ギルドの視察の為に再び訪れた俺たち。


「なぁ、嬢ちゃんたち!俺たちと一緒にクエスト行こうぜ!!」


「成りたてみたいだし。駆け出しと一人前の違いを教えてやるよ!」


「今晩どうだい? 俺のイチモツを味合わせてやるよ」


 そんな俺たちを待ち受けていたのは度重なるナンパの嵐だった。

 絡むは絡むでもこっち方面は予想していなかったよ。俺は男なので正直気持ち悪い。


「下心ある人はゴメンです。そして、最後の人は死んで下さい」


 俺は冷たい目で男たちを睨み付けたのだが……。


「ご褒美です!!」


「ああっ、その冷たい目線がなんともっ!!」


「もっと!もっとだ!もっと僕の事を見てくれ!!」


「へっ、変態だ!?」


 逆に喜ばせる結果となってしまった。あまりの変態振りにドン引きする。俺の正体が男だと教えてやろうか?

 というか、よくバレないよな! 俺!!


「私たちも全力でお断りします!」


「そうです。最低でもユーリさん程の実力を身に付けてから言って下さい」


「皆、この人のモノなの。弱い人に興味はない」


 アイリスたちも気持ち悪いと思ったのか、彼らの事を冷たくあしらった。


「弱いだって? だったら力の差を教えてや……えっ? ぐはっ!?」


 ただ、弱いは禁句だったのか?

 アイリスたちの煽りを受けて男たちは逆上し、掴み掛かかろうと手を伸ばしてきた。俺は直ぐ様、間に入るとその手を取って床へと叩き付けた。


「なっ!? てめぇ……ほぁ!?」


「えっ? 嘘っ!? ごはっ!?」


「風魔法。エアーハンマー」


「「「おわぁーーっ!?」」」


 一連の流れで呆けてる間に他の男たちも打ち倒し、トドメとばかりに風魔法でギルド外へ纏めて吹き飛ばした。ゴミの様に吹き飛んでいく様に少しスッキリする。

 酷い様に思われるが、アイリスたちにやられるよりはマシだろう。なんせ全力で仕留める気満々で魔力を溜めていたのだ。

 もし、彼女たちが手を出していたらどうなっていた事か。


「あっ、残念。ユーリが全部片付けちゃった」


「イラッとしたので暴れたかったのですが……」


「私たちの為に怒るユーリも素敵」


 そんな風にひと悶着有ったものの、俺たちは掲示板へと移動して依頼書を選ぶ事にした。

 周りは相変わらず見てくるが、先程の騒動を受けて近付いてくる様子はない。


「ねぇ、ユーリ。そもそも何で視察がいるの?」


 周りに人がいない事を確認してアイリスが尋ねてきた。


「そういえばそうですね? 見ている感じだけですが、特に問題も無い普通の冒険者ギルドの様に感じます」


「それなんだけどさ。俺も良く分からないんだよね」


「そうなの?」


「うん。ギルさんは俺に「ユーリたちがクエストを受けていたら自ずと見えてくる」ってしか言わなかったし」


「つまり初級クエストを受けまくれば良いんだね? サポート体制も見て欲しいって言ってたし」


「まぁ、そんな感じなのかな?」


「それならお薦めある。コレとかどう?」


 シズが一枚の依頼書を指差した。


「ナニナニ……薬草採集?」


 書かれていたのは初級クエストの定番である薬草採集だった。

 目的の物は、インパクトシードと呼ばれる物らしい。一緒に記載されている植物の絵は鳳仙花に似ていた。


「鳳仙花の一種。あまり知られてないけど……種は磨り潰す事で火薬の原料になる」


「そうなのか?」


「従来の調合とは異なり単調な為に知る人は知る草花」


「さすがはアスカだな。草花に関しては勝てる気がしないよ」


 俺は感心しながらシズの頭を撫でた。


「やったー!誉められた。実は他にもね。珍しいのが有るんだよ」


 誉められたシズはとても嬉しかったのか、掲示板に貼られた採集クエストの薬草を説明し出した。


「こっちは一時的に筋肉弛緩させる痺れ効果が……これは猛毒の蜜を溜め込んでて……そっちは水から出すと燃えるんだよ。他には……」


「「「………」」」


 それを聞いた俺たちはその危険性に空いた口が塞がらない。


「(ゆっ、ユーリ!これって不味くない?)」


「(ああっ、普通はシズみたいに知識を持って無いからな)」


「おや、採集法まで記載してるんですね」


「あっ、本当だ」


 依頼書を改めて見ると正しい手順とそれで採集する事が書かれていた。もし、それ以外の採集法なら報酬を減額するそうだ。

 これなら他の冒険者たちも正しい手順での入手を意識するだろう。


「……それしても同じ依頼主なんて珍しいよね? 植物学者か何かしら?」


「えっ?」


「どういう事?」


「依頼主の名前は全部違いますが?」


 シズの指摘を受けて俺たちは困惑した。

 何故なら依頼書に記載されている名前は全部別のものだったからだ。


「うん。良い土の匂いがするよ。ブラウニーも和むくらいに優しい匂い」


「土の匂い?」


「まぁ、普通の人は気付かないかもね? 私は木の精霊の写し身だから良い土には敏感で直ぐに気付いたよ。それにこれだけしっかり付けられてる訳だし」


 話を聞くと同じ草花の匂いが染み付いているのは採集クエストのみ。それもシズが説明した危険な草花のものだけだった。


「とりあえず、インパクトシードの採取を受けて依頼主に会ってみよう」


 現状では考えても仕方ないので直接確認してみることにした。

 俺たちは依頼書を剥がして受付へと向かった。






「ダメです」


「どうして!?」


 依頼書を受付に出すとキッパリとダメ出しされてしまった。


「実はこの依頼書はBランク冒険者が2名以上いる団体のみとなっているんです」


「そういえば、今の俺たちって……」


 アイリスがBランクなだけだ。これでは受注するのは無理そうだ。


「キティを呼び戻す?」


「そうだな。それが一番てっとり「あの~っ、すみません?」……はい?」


 声のした方を振り替えるとそこには人の良さそうな2人の男女が立っていた。


「良ければ私たちが同行しますよ? 私の彼が丁度Bランクの冒険者ですから」


「困ってるみたいだったんで声を掛けさせて貰ったよ。人数が足りないなら力になるさ」


「あっ、他の人みたいに彼に下心は無いので安心して良いですよ? もし、何か有れば私が責任を取ります」


「団体向けなだけあって報酬もポイントも十分だ。どうだろう?」


「俺は構わないけど……」


 その申し出に俺たちは顔を見合わせた。


「悪い人たちじゃないみたいだし。良いんじゃない?」


「人数的にも勝っているので大丈夫でしょう」


「最悪。召喚でダフネたちを呼べばいい」


「Ok。俺たちは貴方たちの助力をお受けします。宜しくお願いします」


「受けてくれてありがとう。皆さんの名前は噂で聞いてるよ。宜しくね。ユーリさん。私はメルフォン。メルって呼んで」


「俺はテルキ。宜しくな」


 こうしてメルフォンとテルキを加えた俺たちは無事にクエストを受注出来、近郊の森へ採取に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ