メルトローナの冒険者ギルド
ポルクスさんと分かれた後、俺たちは予定通りにメルトローナの冒険者ギルドへ到着連絡をしに向かった。
「………」
「どうしたの、ユーリ?」
「入らないのですか?」
冒険者ギルドの扉に手を掛けて少し悩む俺。そんな状態に皆が心配そうに声を掛けてきた。
「いや、何時もなら入った瞬間に絡まれるから少しイメージトレーニングしてただけだよ。それじゃあ、行こうか」
最近、竜王国で絡まれる事は無くなったが他国に関しては相変わらずだった。なので、開けるのを躊躇してしまうのは仕方ない事だと思う。
俺は覚悟を決めて冒険者ギルドの扉を押し開いた。
「ーー以上で終わりになります。長旅ご苦労様でした」
「………マジで?」
何も起こらず手続きを終えてしまった。
あまりにもアッサリしたものだっただから俺は受付嬢に聞き返してしまった。
「はい。完了してましたよ」
「そっ、そうなんですね」
周りに意識を向けてみると新参者が気になって見てはいるものの絡んでくる雰囲気は全く無かった。
「あっ、もしかして他の皆さんの事を気にされてます? そちらに関してならカルナさんが冒険者に戻っての初報告になりますので少し掛かってますよ」
「気になってたんです。ありがとうございます」
受付嬢にお礼を言って、俺は皆に合流した。
「カルナが来たら今後について外の店で話そう」
「その方が良いかもね。かなり注目はされてるみたいだし」
「竜王国以外で絡んで来られないのは新鮮ですね」
「でも、この視線は気になりますね。常に見られているので大事な話も出来ません」
「仕方ないさ。アタイたちはここでは新参者だからね」
「お待たせしました!無事に手続きを終えましたよ!」
「おっ、来たきた。それじゃあ、場所を移そうか」
カルナと合流した俺たちは冒険者ギルドの前にあった店へと場所を移して今後について話し合った。
*******
その頃、俺たちが去った冒険者ギルドでは。
『あの嬢ちゃんたちは何者!?』
俺たちに関する問い合わせを行う冒険者が殺到していた。
「竜王国からいらしたグループですよ」
「さすがは竜王国だな!美人が多いと有名な国だぜ!!」
「なぁ、嬢ちゃんたちの名前は? ランクは?」
「さっきナベリウスって聞こえたけど……あのナベリウスか?」
「関係までは語れませんが……青髪の方がアイネさんで銀髪の方がキティさん。同じ"ナベリウス"名を持ってます。エルフのアスカさんとスイカさん、それから人族で黒髪のユーリさんは"シズ"名ですね。そして、あとの2人……人族の赤髪ショートがミキさん。ゆるふわ茶髪の方がカルナさんです」
受付嬢から名前を聞く度に冒険者たちはメモするのだった。
「それでランクは?」
「ナベリウスのお2人がCランクで、他はDランクとなってます」
「一応、全員が一人前の冒険者なのな。なのにわざわざここに来たって事は……成りたてかな? ここでなら危険も少ないし経験を積む的な?」
「それは有り得るな。ここのクエストは高くてBランク相当だ」
「成りたてって事は、サポートを名目に声をかけるチャンスかも!!」
『それだ!!』
それからどんな風に声を掛けて誘うかを話し合う冒険者たちだった。
「頭、お花畑なのかしら? あんな美人の集団が下心丸出しの相手に靡く訳ないでしょうに……」
そんな彼らを見て受付嬢は呆れ果てるのだった。
「カルナ……だと?」
そんな中、蚊帳の外にいた者がいた。
「何故、彼女がここに居る? エドワードといる筈では? ……少し調べる必要がありそうだ」
目元までフードで隠したその男はポツリと漏らすと席を立ち上がり、浮かれた冒険者たちの脇をすり抜けて冒険者ギルドを後にした。
*********
「リリスは俺たちと一緒に行動な」
「ユーリさん。今はスイカです。周りに人は居ませんが気を付けて下さい」
「あっ、わりぃ。まだ慣れなくてな。気を付けるよ」
スイカはリリスの偽名だ。話を聞いたリリィが付けた。本人も結構気に入っている様だ。
「アタイとカルナは予定通り単独行動で良いんだよね?」
「ああ、2人の身に危険が起きない様にマジックアイテムもしっかり持たせるよ」
2人には堂々と調査して貰い囮の役目を担って貰う予定だ。
その為、アイテムというアイテムを沢山持たせてサポートする事も考えている。
「ユーリさん。ギン……キティさんも付けてくれるんでしょ? なら、十分だよ。男の目線は釘付けさ!」
「ええ、この存在感は女性からしても凄いものね」
彼女たちの視線はギンカの胸へと注がれていた。
その気持ちはよく分かるが……メインはカルナなんだよね。人選間違えたかな?
「それじゃあ、私たちの方はユーリとスイカ、それからアスカだね」
「私もそっちが良いのですが……」
「ゴメンな。連絡役とかもお願いしたいんだ」
「……分かりました。その分の補充は今からして下さるのですよね?」
「えっ?」
俺の手を引いて女子トイレへと向かうギンカ。
「はわわ……ここでも?」
カルナは顔を紅くするも止める気はない様だ。
「「「行ってらっしゃい〜」」」
そして、俺は皆に見送られながらギンカにトイレへ引きずり込まれるのだった。
「補充は十分。コレなら数日戦えます!」
「キティさん、凄いツヤツヤしてる……」
「戻ってきて生気に満ちてる。それに対してユーリさんは……」
「3人共……気を付けてね?」
俺は干乾びかけてカラカラしてる様に見えたのだろう。
カルナからは同情した様な目を向けられた。
「深追いは禁物だよ?」
「ヤバそうだったら、即時撤退する事です。キティさんがいれば途中からも追跡可能ですから」
「はい。各種ポーションを纏めておいたよ」
「「「ありがとう。行ってきます」」」
シズからポーションを受け取ると3人はエドワードを誘拐した人たちの調査へと向かった。
「俺たちも視察を始めよう」
「ワクワクする!楽しみだよ!」
「フフッ、しっかり確認しましょう」
「公正に判断します!」
俺たちは悪戯っぽく微笑みながら冒険者ギルドへ戻るのだった。




