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準備と祝福

 東の大陸へ渡航する準備には予定よりズレて1週間と思いの外時間を要した。


 それというのも数日で帰る予定のベティと連絡が取れなくなった。竜王国や冒険者ギルドの上層部はこの案件を重く見て独自の調査を行う事にしたからだ。

 その上東の大陸への移動を制限する事になったが、既に動いている者たちもいて対処に時間がかかったそうだ。


 しかし、それはこちらにとっても好都合だった。

 何故ならこちらも準備に手間取っていた。といっても用意する食料やその他諸々は準備する程も無くアイテムボックスにたんまりとあった。手間取ったのはメンバーの選出だ。

 連れて行くなら疫病などに耐性の有る者もしくはそもそも病気にならない者を選ぶ事になる。そうすると自然に該当するのは俺とアイリスしかいなかったのだ。


「捜索もあるからそこそこ人数を連れていきたいんだが……」


「耐性ならまだしも病気だもんね」


 それに大きく頭を悩ませる事になった。

 万能薬エリクサーなら病気も治せなくは無いが、もしもの治療分も考えると止めておきたかったのだ。

 しかも疫病の原因や感染法が分かっていない以上連れていった者たちが何度も疫病に掛からないとも限らない。誰が好き好んで大事な嫁をそんな場所に連れていき危険に晒さないといけないのかという話だ。


「私を連れて行って下さい。捜索の上で私の鼻は大きく役立つでしょう」


「確かにギンカがいると助かるけど……」


「母様の加護で病気にも多少は耐性を持っています」


「エルメラさんが与える加護……大地母神らしく地に接する空間において能力が上昇するっていうパラメーターブースト系の効果じゃなかったか?」


「はい。活性化により身体能力が向上します。その為病気にも掛かり難くなります」


「う〜ん……」


 かなり悩んだ。完全に耐性のある者は殆どいないからギンカなら最適解だけど俺が怖かったのだ。


「……分かった。ギンカを連れて行く」


「ありがとうございます」


「でも、毎日の体調報告を怠らない事と違和感を感じたら直ぐに確認する事を徹底して貰うけど良いか?」


「はい。それでご主人様についていけるのでしたら喜んで」


 結局人数がいる事は変わらないので採用する事にした。その代わり彼女から目を離さないように気を付けよう。


「加護ねぇ〜」


 ギンカとの会話で今回の件には加護持ちを連れて行けば良いのではと思った。

 しかし、加護持ちというのは一国に1人いるかいないか程の珍しい存在だ。むしろうちに加護持ちが2人いる事が奇跡に等しい。

 だから俺は諦めかけたのだが……。


「ユーリさん、お忘れですか!私に付いてるユーリさんが与えてくれた祝福が有りますよ!!」


「えっ?」


 イナホの言葉で思い出したのは彼女に付与された『ユーリ・シズの祝福』だ。

 名前通り俺が与えたものでイナホ以外にも数人それを保持している。


「あ〜っ、そういえばそんなのあったね」


「仕方ないですよ、アイリス。うちでも持ってる人は少ないですからね」


 アイリスもマリーもスキルを保持している者だ。しかし、彼女たちもまたイナホに言われるまで忘れていたらしい。

 与えた本人と付いている者たちが忘れるってるどうなんだろうと思う。


「あの〜、『ユーリ・シズの祝福』とは一体?」


「アイリスさんたちだけでなくイナホちゃんまで……?」


「イナホちゃんが知ってて私たちが知らない?」


 リリスたちから疑問の声が挙がった。イナホと同時期からいるのにスキルの存在を知らなかったらしい。

 まぁ、鑑定持ちはうちにも少ないので仕方ないといえば仕方ないと言えるだろう。


「言葉通りユーリが与えるスキルだね」


「付与する為の条件が少々大変でしたよ」


「その効果とは?」


「えーっと……」


 スキルの効果を覚えていなかったので近くにいたアイリスを鑑定して詳細を確認した。


 アビリティ:ユーリ・シズの祝福

 説明:ユーリの愛した者たちが病に倒れ無いようにとの祈りから生まれた。付与された者は表面に魔力の膜が出来て病気への感染を防ぐ。

 また、この魔力はユーリのもので付与者の魔力は一切消費されない。

 しかし、付与するにあたり……自主規制。


 あ〜っ、記憶をしっかりと思い出したよ〜。

 付与する為の手段の異常な恥ずかしさと罪悪感から俺は記憶を封印してたんだった。

何をしたかだって? 少々マニアックな夜の営みをしただけです。

分類ならアブノーマルにされるんじゃないかな?


「………アイリスたちから聞いて下さい」


『?』


 俺は思い出した事を後悔して黄昏るのだった。仕方なく話を受け継いだアイリスたちが説明すると大騒ぎになった。


「そっ、そんな羨まけしからん事を……っ!?」


「私もまだそこまでして頂いていませんよ!?」


「話を聞くに他にも何人か居るんですね!教えて下さい!!」


「私はしたのに付与されていませんがっ!?」


「えっ、本当ですか!? 私には付与されてる? ヤッター!!」


「お願いします!私にも付与して下さい!!」


 中には付与されている事に気付いていない娘がいたのには驚いた。

 そして、保持していない娘には強請られるのだった。


「それで持ってる娘は……」


 先にあげた3人以外では、リリィ、エロース、ミズキ、モカが持っていた。


「「「また、母さんに先を越されてたぁ〜〜っ!?」」」


 それを知ったリリスたちからは絶叫があがっていた。

 娘より母親を優先している訳だし仕方ないよね。後でしっかりと付与しないとヤバそうだなと思った。


「「「今から付与して下さい!!」」」


「無理。時間が足りない」


 この時の予定では1週間後の出発でなく3日後の予定だったのだ。


「3日後には出発予定だし。付与出来て2人くらい?」


平穏なる小世界(イレーネコスモス)で延長しても上手くいかない事も考えるとそのくらいだね。リリスたちを選びたい所だけど本当に連れて行くなら3人揃ってた方が良いし、今回は許してくれないかな?」


 俺が申し訳無さそうに謝ると三姉妹はしぶしぶと引き下がってくれた。


「帰ったら優先的に付与するから留守番を頼む」


 その後、戦闘力の関係でラズリとマリンが選ばれた。

 それから1週間後竜体のマリーの背に乗った俺たちは他の竜たちと共に東の大陸を目指すのだった。

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