東の大地へようこそう
天空を飛行する竜種の集団。現在彼らは高度を上げて雲の上へと出た。
「やっぱりマリーは凄ぇよ! 空は気持ち良いなぁ〜」
「うん! いつ乗っても最高だよ!」
目に映るのは真っ青な大空と雲の絨毯。雄々しく飛翔する竜種たち。この光景は圧巻の一言に尽きるな。自分だけでは見られないだけに心が魅入られた。
「そう言って貰えると嬉しいです」
「この高度まで登れる者は限られてるもんね」
「ああ、改めて竜種の凄さを実感するよ」
魔法で飛翔している俺や羽根の生えた有翼人種でさえもこの高度まで飛翔するのは難しい。
「みんな〜、時間的にはそろそろ到着予定よ〜」
「リリィ。もうそんな時間なのか?」
「そうよ。だから着陸の準備をしておいてね」
相変わらず竜種の移動力にも驚かせられた。人が命を掛けた上で数ヶ月単位を移動に要する大陸間移動を1日で渡ってしまったのだ。
それから数十分後リリィの言葉通り竜たちが雲の下へ降りると模型の様に見えていた海からアマゾンの奥地の様な深緑の大地が広がっていた。
「マリーさん」
マリーの前方を飛翔する黒曜石よりも深く美しい鱗を持った黒竜がスピードを緩めて隣へとやってくる。
「私が先行して降りますので皆様はそこを目印に降下して下さい」
「ええ、宜しくお願いしますね。フィロさん」
そうこの黒竜こそ息子ユリウスの許嫁にして合法ロリのフィロだ。
竜種は人型で判断するべきでないと知っていたがフィロの竜体は男なら感動する程にカッコいい姿をしていた。
「それではいつも通り衝撃に気を付けて下さいね」
先に降りたフィロが開けた丘の上から人型に戻り手を振っている。そこを基準としてマリーや他の竜たちは旋回して順番に降りていく。
そして、降りた者たちは人型へと姿を変えて馬車を組み立て始めた。
「言えば馬車をアイテムボックスに入れて来たのに……」
「いえ、マリアナ様の旦那様にそこまで甘える訳には行きませんので!」
皆を先導していた竜種の男性に声を掛けるとそう返された。
「父からも「ユーリ様を支えよ」と仰せつかっています」
「レギアスさんには頭が上がらないよ。でも、何度も言うけどもっと楽にして良いからね。ヒューイ」
気付いたと思うが彼はレギアスさんの息子さんだ。
だからなのか、俺がフランクにして良いと言っても真面目な彼は力を抜けないでいた。
「……善処致します。それより預かった荷物はいつお渡しすれば?」
「荷物?」
「はい。ダフネ様よりユーリ様に必要な荷物だからと。妖精の箱庭に立ち寄った際に受取りました」
はて? アイテムボックス持ちの俺が他人に荷物頼むだろうか?
ヒューイの話を聞いていて俺の中にはハテナで埋め尽くされた。
「ちなみに荷物はこちらになります。どういう訳かアイテムボックスに入らなかったので他の荷物と一緒に背負って来ました」
そう言って渡されたのはスーツケースサイズの箱だった。
その箱は木の板を組み合わせた様な物ではなく、木々が成長する途中で箱になったかの様にめちゃくちゃに入り組んだ物だった。
しかし、俺には一切見覚えがない。これだけ特徴的なものなら当然覚えているはずなのにだ。
「とりあえず預かる……うおっ!?」
ヒューイから箱を受け取ると俺はあまりの重さに一瞬落としそうになった。まるで子供が入っているのではないかという重さだったのだ。
「まぁ、子供が入ってる事はないか」
そんなマンガな展開でもあるまいし。スーツケースならまだしも箱に居るわけないよな。
そう思いながら俺は箱を開けてみた。
「………」
「………」
目があった瞬間、俺は箱を"パタン"と閉じた。
「いやいや気のせいだろ? だって彼女は家にいるんだぜ?」
なので、もう一度トライ。
「嫁が居るのに閉めるなんて酷い。嫁イジメ。セックスを要求する」
「なんで居るの、シズ!?」
なんと箱の中にいたのは家で留守番している筈のシズだったのだ。
「なんでと言われても当然の結末。森での捜索ならダフネの力必要。確実に召喚される。私留守番。ズルいのでついて来た」
「ズルいズルくない以前に皆の体調を心配したからこのメンバーなんだけど!? 病気になったらどうするの!?」
「そこはユーリがなんとかする。心配なら今から物陰に隠れて祝福を付与すれば良い。私なら量が少なくて済む」
「う〜〜ん」
すみません。成人間際の幼女が誘って来るのですがどうすれば良いんでしょうか?
「どうしたのユー……えっ!? なんでシズがここに居るの!?」
「あっ、ホントです。箱に入って何をなさってるのでしょうか?」
「つっ、ついてきたみた……」
とりあえず、今からする事は決まっている。
「シズ。今から送り返すからな」
「え〜っ、せっかく来たのに。街に着くまでダメ?」
「ダメです。それじゃあ、俺は転移でシズを送り返して来るから」
「いえ、それは止めた方が良いです。何の為にこの大陸を隔離したか覚えて居ますか?」
シズを連れて帰ろうとしたらマリーに止められた。
マリーの言葉で竜種がこの大陸からの出国を監視して、外界から隔離している理由を思い出した。
「竜種を使って大陸からの出国を監視しているのはこの疫病の感染ルートが判明していないからです。もしシズさんを連れ帰って疫病が広がる事が有れば大変です」
「そう。だから仕方ない。これは仕方ない。ユーリは私を連れて行くしかない」
コイツ絶対分かってやってるわ……。
わざわざ箱を用意してうちの住人以外に託すくらいだもんな。
「……分かった。街に着いたら祝福を付けるからね。後初めてでも手加減しないから」
「バチこい。こちとら常に欲求不満で限界だった。受け入れ準備はok」
これは一種の予防ワクチンという事で必要な行為だ。
だから未成年だけど嫁にならしても問題ない。俺はそう思い聞かせる事にした。
その後、組み立て馬車で街を目指す。馬がいないからどうするのかと心配していたら竜種の何人かが召喚獣を呼び出した。
それに荷台や席を括り付けて出発するのだった。




