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エルフ発情

 狂乱の小世界(カオスコスモス)内部にある商業エリアのとあるビル。その一室に俺は現在隠れ潜んでいる。


「どうして気付かなかった……?」


 俺は部屋への侵入者を警戒し入り口を見詰めながら後悔に襲われていた。





 ことの始まりは3日前のラズリからだと思う。シロップ漬けの件で欲情して俺たちは厨房から部屋へと移動する事にした。

 しかし、途中で我慢の限界を迎えたラズリから突然唇を奪われる事になった。


「もう我慢出来ません………んちゅっ」


「んんっ!」


「ちゅっ……あっん……ちゅっ……」


 彼女はいつもより情熱的で舌が別の生き物の様に俺を侵食してきた。


「んっ……今日はヤケに積極的だね。いつもはこういう所でしたがらないのに?」


「……欲情が抑えられないんです。もっとユーリさんを感じろと急かされてるみたいで」


 とろんとした目で見詰めて来るラズリは純粋無垢な印象を受けた。


「ヤバ可愛い!俺が満足……げっ、見つかるっ!?」


「んんっ!?」


 俺は急いでラズリの口を塞ぐと廊下に置かれた花瓶台の物陰へと隠れた。何故ならラズリから迫られて魔法を使うのを忘れていたからだ。

 そろりと物陰から顔を出して見ると廊下にはスルーズとリリンの後姿があった。どうやらバレずに済んだらしい。


「良かったバレて無さそう……って、何してるの?」


「んっ……ちゅぱっ……」


 ラズリの口を塞いでいた手を緩めたら彼女は俺の指を舐め始めた。まるでそれで我慢する様に丁寧に一本一本舐めていく。


「あの〜っ、ラズリさん?」


「………はっ」


 申し訳無さそうに声を掛けると彼女は現実に戻ってきた様だった。


「すみません。我を失ってしまいました」


「相当溜まってる? 香水を付けて誘うくらいだし?」


「香水……?クンクン……」


 香水と聞いてラズリは意味が分からないって顔をした。それから確かめる様に自分の服や俺の服を匂い始めた。


「……そういう事でしたか。ユーリさんお願いが有ります」


「うん?」


 ラズリは俺の手を取って自分の服に入れると耳元で囁いてきた。


「貴方の子種で私を満たして下さい」


 そんな事を女性から言われたら理性が飛ぶってものだよね?

 すぐに抱きかかえて全力で自室へと帰るのだった。


「満足しました。また後で」


「ああ……」


 その後元気一杯の笑顔で自室から出て行くラズリ。それに対して俺は疲れきっていた。

 何故なら一度だけのはずが彼女の要望で二度三度と繰り返したからだ。


「……俺も植物園で昼寝しようかな?」


「あっ、ユーリさん」


 植物園へ行こうと自室を出るとスルーズに声をかけられた。後々思えば彼女が一番核心をついていたと思う。


「やはりここでしたか」


「何か用事? まさか探してた?」


「いえ、違います。少し気になる事があって追っていたら見付けただけです。今お一人ですか?」


「うん。一人だけど?」


 俺が一人だと言うとスルーズは周囲をキョロキョロを見渡した。


「ユーリさん。今から少々お時間を頂いても?」


「良いよ。でも、眠いから手短にね」


「大丈夫です。ユーリさんは寝てるだけで良いですから」


 そう言ったスルーズは俺を再び自室へと連れ戻した。そして、彼女も俺から絞り取るのだった。


「ご馳走様でした。また夜に伺いますね」


「マジで?」


「マジです。それでは」


 ラズリの次は生真面目なスルーズにまで誘われた。彼女たちとは最近あまりしてなかったし溜まっていたのだろうとその時は思った。

 それから再び植物園へと行こうとした。しかし、一度ある事は二度有るという今度はリリィに呼び止められた。


「治療終わったわよ」


「えっ、本当か? ロギアたちはもう大丈夫なの?」


「ええっ、大丈夫よ。しっかり男気を見せていたわ」


「どういう事?」


 リリィの言葉の意味が分からなかった。治療と男気がどう関係するだろう。


「ウンウン。気にしないで。それより報酬を頂こうと思うのよ」


「報酬なら地下に保管してる宝か貴重な薬草を……」


「貴方の子種を頂戴」


「お前もかい!」


「お前も? さては誰かと寝たのね? これは詳しく聞かないとね。ユーリ君。そこの空き部屋に入りましょう」


「えっ、ちょっ!?」


 俺はリリィに引きずられる様に連れて行かれた。

 その後試験管2本分程絞られたよ。多分今日一番大変だった気がする。


「ありがとうね。あっ、ユーリ君。月齢表持ってる?」


「あるけど……なんに使うんだ?」


 俺はアイテムボックスへ入れていた板を取り出してリリィへと渡した。


「なるほど。3日後か。これは準備が必要そうね」


「!?」


 この時リリィの準備と聞いて俺に悪寒が走った。おそらく本能的にマズいと思ったのだろう。

 でも、鈍感な俺には理解する事が出来なかった。





 それから3日後。


「ユーリ君大変!急いでついて来て!娘たちがカオスコスモスに入ったら猫ゴーレムたちが大変な事になってたの!」


 猫ゴーレムは俺の初めて作ったゴーレムで思い出深い物だ。だから、直ぐに反応した。


「マジで!? 急いで行くよ!!」


 俺はリリィと共にカオスコスモスへと移動した。すると見るも無残な姿の猫ゴーレムたちとその前に立つリリスたちの姿があった。


「リリス!一体何がーーっ!?」


 振り返ったリリスたちは瞳に妖しい光を灯しており、更に俺を見てニターっと口が狐の様に吊り上がった。

 そして、彼女たちはジリジリと距離を縮めてくるのだった。


「ヤバい気がするので失礼します」


「逃さないわよ」


 そそくさと帰ろうとして所をリリィに捕まってしまった。逃げられない様に腕をしっかりとホールドされている。


「いや、だって!あの状態はどう見ても正気の目じゃないよね!?」


「まぁ、あの子たちは一種のヤンデレみたいになってるからね。それは仕方ないわよ」


「なんでさ!?」


「エルフの発情期よ。発情。それが今始まったのよ。本当なら今日の満月の晩に起こる筈だったんどけど調整したから今になったわ。

 そして、ヤンデレ化だけど皆のタイミングが狂ってたからここに閉じ込めて調整した結果、我慢が限界突破したみたいなのよね?」


 つまりかなり欲求不満状態で愛を求めていると言う事か。


「なら、リリィはなんで平気なの!?」


「私はコレを一本飲んだからね。今は大丈夫なのよ」


 リリィが自慢げに見せる試験管には見覚えがあった。それは何を隠そう俺から絞りとった物だ。


「私は大人だもの。欲求はコントロールするものよ。前の分は後数分で切れるけど、コレを飲めば今日からまた数日は耐えられーー」


 その瞬間リリィの手から試験管が滑り落ちた。そして、パリンという小気味良い音をさせて綺麗に砕け散った。


「ダッシュ!」


 俺はなりふり構わず出口へと走った。

 うん? 何故転移しないのかって?

 それは彼女たちの計算の内だったらしい。俺の空間移動と魔力感知に制限が掛けられていた。使おうとするまでは気付かないので、俺はまんまと罠に嵌ってしまったのだ。


「って、出れねぇのかよ!?」


 なんとか入口へ先に辿り着いたがロックを掛けられていたらしく出られない。

 背後からリリスたちが走って来ていた。当然その中にはリリィも混じっていた。

 何が欲求をコントロールだ。飲まれとるやん!

 俺は素直に隠れるという選択肢を選ぶ事にした。





 そして、部屋に逃げ込み隠れて今に至るのだ。


「ユーリさ〜ん、何処ですか〜。一緒に愛し合いましょう〜(ズル……ズル……)」


 聞こえて来たのはラズリの声だった。回想している内に側にまで来てしまったらしい。


「この階にいますよね? 出てきて下さ〜い。今裸ですよ〜(ズル……ズル……ズル……)」


「………くっ」


「どんなプレイも受け入れますよ〜。私をめちゃくちゃして下さ〜い(ズル……ズル……ズル……ズル……)」


 如何せん内容自体は魅力的なのだが、問題なのは一緒に聞こえてくるこの"ズルズル"音。まるで重い物を引きずる様な音だった。


「何かを引きずってるのか?」


 魔力感知で殆ど見えないのでかなり近くによる必要がある。俺は気になって確かめようと思い音を殺して扉に近付いた。

 その瞬間、"バキッ!"と音を立てて斧の刃が扉を貫通した。刃が顔のスレスレで停止する。


「ひいぃ!?」


 突然の出来事に悲鳴をあげてしまった。


「あっ、やっぱりいましたね♪」


「シャイニング!!?」


 扉の斧を抜いて裂け目から覗き込むラズリは某ホラー映画を連想させるのだった。

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