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霊泉で男たちと話し合おう 

 アイリスたちが色々頑張ったお陰で多くの魔女を目覚めせる事が出来た。


 まぁ、それによる問題も発生したけどね。


 例えば、刷り込み。


 よく鳥などで聞いた事があるかもしれない。


 卵から生まれた直後に見た者を親だと認識するとかのアレだ。


 彼女たちも卵から生まれたからなのか、その性質を持っていた様だ。


 そのせいで、大きな子供が3人程出来たのだが、今更的な話だし些細な問題だ。


 ……些細な問題か?


 その後、ネフェルタが報酬をくれた。


 それは、魔女の雫(ウィッチドロップ)と呼ばれる珍しい鉱石だった。


 魔女の秘術。ウィッチクラフトによって産み出されたミスリルをも超えると言われる鉱石だった。


 魔力の伝導率が高く、強度も優れている。


 それが大量に生えた場所に案内された。好きに採取して良いらしい。


「好きに採ってくれて構わないが、専用の工具でもないと硬くて無理じゃな。他の報酬に切り替え……」


「えっ?」


 既に俺が手には採取したばかりの魔女の雫が握られている。

 いつも通り、フラガラッハを変化させてスパッと斬った。


「えっ?」


 これにはネフェルタも目を丸くしている。なので、もう一度採取。


「何故、出来るのじゃ!?」


「あははは……」


 それはフラガラッハが優秀なお陰です。この子は何でも斬れるから。


 そんな事があったけど、採取はバケツ一杯くらいさせて貰ったよ。


 さて、これで何を作ろうか?


 武器にしても良いし、装飾品でも良いんだよな。


 そう思いながら、ここの所、日課となった湯に浸かる。


「ふう〜っ、相変わらず良い湯だな」


 傷は当然だが、筋肉疲労なども癒えるのが感じられる程に効果がある。


「やぁ、今日もお疲れ」


 俺に声を掛けてきたのは、カムラと名乗るエルフの学者先生だ。


 担当分野は、植物学。竜王国の管理する植物園に在籍し、研究を行っているそうだ。


「カムラ先生もお疲れ。仕事は進展した?」


「ユグドラシルの方はダメだね。ボクの知識がなさ過ぎる。一般植物なら変異体をいくつか見つけられたよ」


 彼は、ユグドラシルの生育調査と植物の分布を調べている。


「そろそろ竜種の先生方が来ると思うので、更に進展しそうですね」


 この大陸を覆っていた竜種避けの結界は無事に解かれた。


「解除が大変だったって聞いたよ。まさか、違う国が持ち込んでいたなんてね」


 最初は、ネフェルタに解除をお願いした。


 しかし、彼女は関与してない事が判明した。


 俺たちは、結界の外周を計測し、中央を割り出す事に成功した。


「ええ、大量のアンデットに襲われましたよ」


 結界の基点に行くと大量のアンデットが巣食っていた。


 彼らは口々に「魔王国の為に!魔王国の為に!」と連呼しながら防衛していた。


 この結界が発生する装置は、魔王国が持ちこんだらしい。


 この土地を竜種に邪魔されずに魔王国の領内にするつもりだった様だ。


 連合国の兵の中で竜王国を除けば魔王国が最も力を持っていたからそれも可能だっただろう。


「まさか、大戦の首謀者が魔女でなく、魔王だったとはね」


 これを計画したのは、襲ってきたアンデットたちの話によると先々代の魔王だそうだ。


 各国が大戦により疲弊した所に魔王国が兵を貸すという名目で兵を配置。その後、実質的な支配をする予定だった。


 しかし、その計画は勇者によって断たれてしまった。


 この計画が原因なのか、世界の理が発動し勇者が誕生。魔王を打つために行動を開始した。


「俺も自爆の原因が勇者だなんて思いませんでしたよ」


 魔女が転生できるのに目を付けた勇者は、大規模魔法が失敗する様に細工したようなのだ。


 それにより、魔王は巻き込まれて死亡。


 その他にも多くの犠牲が出ているが、世界の平和の為には仕方ないという考えなのだろう。


 勇者って無茶苦茶だなぁ……。そう思わずにはいられなかった。


「でも、今回の遠征では、過去最大の成果が得られた。これは今までの誰もが為し得てない事だよ。明後日の帰還が、ボクは楽しみで仕方ないよ」


「そうです。……そういえば、前々から聞きたかったんですけど、何故学者にはエルフや竜種が多いんですか?」


 今回、竜種が入れなかったからエルフの学者が多数参加していた。


 だから、ケリュオンの様な人間の学者は浮いていたのだ。


「それは、逆だね。長命種だから学者をしているのさ」


「どういう事です?」


「ユーリ君は、竜種やエルフの嫁を持つって聞いたから分かるかもしれないけど。長命種って、結構寂しがり屋なんだよね。もっと他に言うなら恋しいかな?」


「それは、寿命差が有り過ぎるから?」


「そうだよ。大抵の場合、番とは100年過ごせたらいい方だよね? 場合によっては、それ以上短くなる事もある。だから、それに代わる何かを求めて、学者や役職に就くものが多いのさ。植物を探してフィールドワークしている間は、色々忘れられるしね」


「カムラ先生にも家族が?」


「うん。居たよ。4人。毎回、最後は絶望して死にたくなるけど、子供たちに止められるんだよね。子供を残して死ぬとは何事だって。エルフが嫁なら違ったかもしれないけど、外に出たエルフは嫁をエルフにしようと思わないからね」


 そう言って黄昏るカムラ先生は、うちの男エルフたちによく似ていた。


 昔、色々あったのだろう。お気持ちをお察しします。


「まぁ、竜種に比べたらマシさ。彼らはボクの倍は生きるからね。寂しさや恋しさは人一倍強いだろうさ」


「………」


 俺は、マリーの顔を思い浮かべた。


 帰ったらしっかり埋め合わせをするとしよう。


「全く……短命種の俺から見たら羨ましい限りだな」


 声の主は、タオルを巻いたケリュオンだった。


「こっちは人外生命体の秘密が分かったってのに、その応用法を考えるだけの時間が足りないのだぞ」


「魔力コントロールが上手くなれば、人でも100歳超えられるって。それか、エリクサー飲む?」


「そうですね。もうちょっと放出量を滑らかに出来れば大丈夫だと思いますよ」


「そこまでして伸ばそうとは思わんわ。目的がケモミミハーレムを作ることだからな」


「ハーレムを作る宣言を堂々するとは……!? ケリュオン、そこに痺れる!憧れる!」


 清々しいまでにハッキリした男だ。マジで尊敬すら覚えるよ。


「お前、馬鹿にしてるのか? 既にハーレムを作ってる癖に」


「色々あって、食われたり食ったりした結果です!」


「そういえば、エルフも多かったね。辛くなったら、何時でも相談に乗るよ」


 カムラ先生から慈愛の眼差しを向けられてしまった。


「そういえば、ミコトは?」


「スフィンクス相手にまた暴走したからシキナが回収した。今頃、彼女の部屋じゃないか?」


 また、アイツは暴走したのね。


「呼びました?」


「噂をすればなんとやらだな。もうお説教は済んだのか?」


「ええ、何時も通りシキナを堪能してきました」


 コイツのワザとやってる疑惑が強くなってくる。


「愛想を尽かされる前に何とかするんだな」


「あはは、そうですね。気を付けます」


 そして、ミコトも湯に浸かる。


「それで、他にはどんな事を話していたんですか?」


「それはな……」


 ここからは、誰得なのかも分からない男たちの雑談会が続くのだった。

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