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リリィと採取に行ってきた

 この世界の病気は、基本ポーションもしくは魔法によって治す。


 基本は、ポーションを優先し、重篤の場合、魔法に頼るやり方だ。


 理由としては、魔法による治療に頼り過ぎると免疫力の低下を起こしてしまう為、最後の手段となっている訳だ。


 また、それだけではない。そもそも、怪我の治療と病の治療は、全く別の魔法なのだ。


 その為、病を治せる魔法の使い手は少なく、治療費も高額となるのだそうだ。


 だから、一般的には、ポーションを使い治療する。


 しかし、その病気を治す為のポーションは、ピンからキリまで多種多様に存在する。


 食べ物のアレルギーの様に薬草にも合う合わないが存在する。


 その上、年齢や性別、果ては種族によって構成を変える必要が有るのだ。


「ーーという訳で、初めの内は、万人向けのポーションを順番に覚えて行くのよ」


「なるほど! だから、痒み止めや腹痛の薬を調合するんですね!」


「えぇ、だから、痒み止めの原料採取しましょう」


「承知いたしました、リリィ先生!」


 そうリリィに返し、薬草を採取し始めた子は、メーアというエルフの少女だ。


 彼女は、リリィの出身であるエルフの隠れ里と交友関係にあるもう1つの隠れ里からやって来た。


 その理由は、彼女の隠れ里にいる薬師が亡くなったそうで、後継者がいないのだそうだ。その為、病を治すには町まで買いに行く必要が有る。


 それでは隠れた意味が無いので、薬師の育成が急務と考えた長たちは、ツテを頼って数人送り出したのだそうだ。


 そして、ツテを頼って来た子の一人がリリィという訳だ。


 最初、リリィは断りの連絡を入れようとしたのだが、ツテに問題があった。


 なんとラファエラさんの紹介だったのだ。


 なので、無下に扱う事も出来ずに弟子にする事となったのだ。


「それでは、この薬草は何処まで知っている?」


「え〜っと……」


 メーアが、悩んでいる様子から殆ど知らない様だ。


 彼女が手にしている薬草は、ドクダミだな。良く痒み止めなどの原料で使われるものだ。


「ユーリ君は、何処まで知ってる?」


 リリィは、メーアの代わりに俺へ聞いてきた。


「その薬草は、ドクダミと言って、湿疹、皮膚炎や化膿症、便秘、整腸などの薬によく使われているよ」


 何度か、虫刺されの痒み止めとして調合した事がある。


 そして、便秘などの腸の働きを整える為に薬草茶として飲む方法を異世界に来て貰った知識で知っていた。


「名前の由来は、ドクダミ……毒を出すという意味だよ。

 生息域は広く、暑くなり始めるこの時期から採取可能だ。基本、平地のやや湿ったところに生えるが、家と家の隙間などの日陰にも生えるね。

 また、独特の臭気のから魚の生臭い草として、『魚腥草(ぎょせいそう)』とも呼ばれるよ」


「そうね。他に、十種の病、全てに効き目のある薬という意味を込めて『十薬』とも呼ばれるわ。薬草の中でも、最もポピュラーだからね。最初に勉強するには最適なのよ」


「俺も最初はドクダミからだったよ」


 タナトス様の知識では、採取場所と使い方が主で由来などの知識は存在しなかった。


 ここら辺は、独学による物だ。


 自身で古本屋を回ったり、薬師仲間のコーリス伯爵に本を見せて貰ったりした。


「なるほど! だから、私をここに連れてきたんですね! ありがとうございます!」


 と、メーアは感謝を述べてきた。


「いや、違うわよ」


 それをリリィは、あっさり否定した。


 俺は、ここに来た目的は別の薬草採取だって知っているから、メーアの為でない事には気付いていた。


「ええっ!? そうなんですか!?」


「ごめんね。今回は、別の目的できたの。その道中の薬草も採取するからついでに説明したの」


「はぁ〜、そうなんですか? でも、勉強になるのは変わりませんね。もっと色々教えて下さい」


 この娘、結構ポジティブだな。


「それで、本命は何なんですか?」


「木の採取よ」


「木ですか? 薬草でなくて?」


「ええ、薬師が扱うのは、薬草だけではないからね」


「実や葉、根が多いけど、樹皮を使う場合も有るよ」


「それで今回の目的物は何なんですか?」


「「『淫香樹』」」


 俺たちは、声を合わせてメーアに告げた。







 それからも各種薬草の採取をしながら5時間ほど歩いた所で、甘い匂いが漂う目的の場所へと辿り着いた。


「うわぁ〜、いい匂いが充満してます」


「メーア。この匂いには注意してね。吸い過ぎは禁物よ」


 リリィは、メーアに忠告する。


「えっ? 毒か何かですか?」


「いえ、違うわ。ただ、後悔しても知らないだけよ」


「?」


 メーアは、意味が分からずマスクを着用し始めた。


 まぁ、分からないだろうな。俺もリリィに初めて連れられて来た時は、そんな効果が有るとは知らなかった。


 なんせ、コイツの匂いはレジスト案件に含まれて、俺には効果が無かったからだ。


「まぁ、大丈夫よ。その時の為に、旦那を連れてきた訳だし」


「あっ、それがメインだったの」


「えぇ、だから、最初は2人で行く予定だったの」


 まぁ、後の事を考えると妥当だわな。


「メーア。今から採取に行く木の時は、絶対2人以上で行くこと。その上、恋人か旦那。もしくは、自分に親しい女の子を1人連れて行くのよ」


「えっ? はい、分かりました。でも、それは何故です?」


 メーアが疑問に思うのも当然だろう。


 なんせ、絶対2人以上、しかも、恋人とか旦那とか。


「採取法に問題があってね。その後の解決をお願いするのよ」


「俺もあんな採取法だとは思わなかったよ」


「アレが確立した採取法なのよ。なんせ、昔は奴隷の女の子とかを犠牲にして採取してたんだから」


「犠牲ですか?」


「そうなのよ。採取出来るのが女性だけだからね」


 そして、俺たちは匂いの元凶であるサルスベリの様なツルツルした木の所に辿り着いた。


「ユーリ君。メーアがいるからテントをお願い」


「はいよ〜」


 俺は、アイテムボックスからテント用具を一式取り出し、組み立てていく。


 組み立てが終わると早速採取に取り掛かる。


「採取するのは、主に実よ。枝や根は、そのまま香木として媚薬に使えるわ」


「あの〜、実がないのですが?」


 メーアの意見も当然だ。


 目の前にある木は、枝のみで実や葉を付けていない。


「大丈夫よ。ある事をすれば小さな種子が出来るの。それを大っきくすれば実になるわ」


 そう言って、リリィは枝の一部を採取する。


「それじゃあ、始めるわね。メーアもよく見るのよ」


 そして、2人はテントへと入って行った。


 それから15分後、顔を真っ赤にし手で抑えるメーアとスッキリした顔をしたリリィが出てきた。


「あんなこと!? あんな事が必要なの!? だから、恋人とか旦那なの!?」


 メーアは、かなり動揺していた。


「いや、必要なのはここからよ。私たちだけだと時間かかるから。それに、今からがヤバいのよ。下手したら一時的に理性を失うし」


「さっき以上って事ですか!?」


「それじゃ、ユーリ君お願いね」


「は〜い」


 という訳で、メーアと入れ替わりテントの中へ。


 その後、2時間程経過。


「これが完全に成熟した実よ!」


 先程より更にスッキリした顔のリリィは、前以上に顔を赤くしたメーアへ拳大の実を1つ見せてドヤ顔する。


「これの内部にある液体を薄めて使うんだ。原液だと発狂しかねないからね」


 賢者モードの俺は、メーアへ使い方を説明した。


 疲れたよ、パト○ッシュ。


 今回は、意識を失わなかったぜ。前回は、気付いたら寝落ちしていた。


 多分、性豪にまで成長したからだろう。


 でも、とりあえず今日は、ここに泊まるとしよう。


「それじゃ、やれるだけ続けましょう」


「「えっ?」」


 さすがの俺もリリィの言葉にびっくりした。


 そして、リリィにテントへと連行された。







 その後、気付いた時には、朝だったよ。隣を見て青褪める。


「んんっ……えっ?」


 俺の隣では、メーアが寝て、今起きました。ちなみに、リリィは、まだ寝ている。


 というか、彼女はいつから参加してたのかな?


 覚えてないんですけど……。


「ユーリさん。昨日の件は忘れましょう」


 開口一番に罵られるかと思ったら、そう言われた。


「あっ、うん。そうだね」


 俺は、覚えて無いので、それしか言えない。超無責任だと思うけど。


「心配しなくても大丈夫です! エルフは妊娠し難いので!」


 それ、洒落になってないですよ!


 だって、こっちはハイエルフを複数人孕ませてますからね!!


「……その時は、責任取るのでよろしく」


「ええ、その時はよろしくお願いします。あっ、お嫁さんたちと別れろとか言いませんので大丈夫です。というか、いないと無理だと自覚しました」


 俺は、一体彼女に何をしたのだろう?


 とりあえず、彼女の心が広くて良かったよ。


 ちなみに、実の内部にある液体は、媚薬以外でも加工次第で色々な用途が有り、高値で売れる。


 だから、俺は木の一部を採取して、妖精の箱庭(フェアリーガーデン)に持って帰ることにした。


 農業試験場に専用の部屋を一室作り、そこに接ぎ木して定着させた。


 次からは、わざわざ山に行かなくてもここで採取出来るだろう。

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