和国 桂花の冒険者ギルド
和国は、竜王国の様な多種族国家だ。
しかし、原則的には普通人族、天狗族、鬼人族、魚人族の4種族しかいない。その割合は、普通人族4、天狗族3、鬼人族1、魚人族2と言った所らしい。
大陸で4割を占める獣人族は、和国では1%にも満たないそうだ。理由として、獣人の船嫌いが原因らしい。
イナホだけじゃないんだな。フランたちもそうなのか?後で、内緒で連れ出し試してみよう。
「やはり、ここでも普通人族が多いんだな」
「普通人族は、獣人族並みに繁殖力が強いですからね」
そう繁殖力が強いのだ。他の長命種たちと違い、短寿命な事も有り、日頃から子を孕み易い。獣人族の場合、それに加えて発情期が有るので、尚更増える訳だ。
だが、普通人族は数が多いだけで、亜人の様な特殊性が有る訳でもなく、低スペックだ。その為、普通人族にはあぶれる者も多くでる。
「着きましたよ」
卯月の案内で辿り着いたのは、睦月さんが治める桂花の冒険者ギルドだ。冒険者が町に2〜3日停留する場合は、報告義務がある。
建物は、朱色を基調としており、中華風のイメージが近い。周囲の建物が白壁な為に、良く目立つ。
そういえば、卯月の勝負服もチャイナ服っぽい奴で中華みたいだったな。脱がせるのが難しくて良く覚えている。
「それでは、入りましょう」
俺は、冒険者ギルド恒例のイベントが起こらない事を祈った。
「あら、卯月じゃない? 帰ってきたの? マスターに嫁いだって聞いたけど、振られた?」
俺は、絡まれ無かったけど、卯月が天狗族の女性に絡まれた。どうやら、知り合いみたいだ。
「振られてません。これが私の旦那様です」
腕を引っ張られ、女性の前に出される。
「あっ、どうも。ユリシーズ・ヴァーミリオンです」
「へぇ〜、貴方が」
「そして、彼女たちは私と同じ奥さんです」
『こんにちは〜』
「話には聞いてたけど、7人って多いわね」
「………」
俺は、何も言わない。何も言わないよ。
「いえ、全部で27人です」
「あっ、うん。そうなんだ……」
なんか凄く冷めた目で見られてる。ヤリチンだとでも思われてそうだな。自分から率先して手を出した子もいるので、否定出来ねぇ……。
「それだけの甲斐性が有るから大丈夫です。それにほら……」
卯月は、着物の裾を捲って俺と女性にだけ見えるようにする。
「オスとしても完璧です。まだ妊娠してないのに、これですよ」
「ちょっ!?」
「ええっ!?」
一瞬捲っただけだがしっかり把握した。
なんで、パンツ履いてないの!? おかげでバッチリ見えたよ! ありがとう!!
でも、相手の女性も見えてるよ!ほら、しっかりと驚いて……。
「まだ、1〜2ヶ月程なのにナニが消えて、女の子になってる!?」
「そっちかい!!」
驚いたのは、そっちの件に対してだった。 いや、普通に驚くだろうけどさ!!
「一度寝ただけで、メスだと自覚しました。後は、2週間も続ければ、この通り。妊娠も近い気がします」
でも、売春宿とかで使われる避妊の魔法を覚えたからそうそう出来ないと思うよ。赤ちゃんが多過ぎるからね。来年くらいにして下さい。
「あっ、一応、まだ少しは有るのね」
「ひゃんっ!」
その女性は、卯月の服の隙間から手を入れて色々確認していた。それは、俺たちが受付で到着登録が終わり帰って来た時も続いていた。
「そろそろ勘弁してくれませんか? 卯月が可愛そうなので」
「あっ、ごめんなさいね」
「ユーリさ〜ん……穢れてしまいました。後で、ユーリさんの手で清めて下さい」
「私は、汚れか!」
「汚れじゃない? 取っ替え引っ替えしてるし?」
「3人と同時に付き合ってるだけでしょう!」
取っ替え引っ替えは、否定しないんだ。そして、三股中なのね。
「はいはい、喧嘩止めぃ。卯月は、後で念入りにするから覚悟してね」
「はい! めちゃくちゃにして下さい!」
それだと俺が穢す方では?
「それじゃあ、睦月に会いに行くよ」
「睦月様に会いに来たのかい?」
冒険者の女性が聞いて来た。
「ええ、桂花の町に来た訳です。ついでに、挨拶しようよ」
「あ〜っ、タイミングが悪いね。さっき、上位の冒険者たちを全員連れて討伐に出たよ。何でも、封印されていた危険度S+の魔物が目覚めたとかで」
「危険度S+って、厄災レベルじゃんか!?」
例を挙げるなら、ラグスの砂漠にいた砂クジラだ。その巨体や凶暴性により、並みの冒険者では手が出せない。
また、相手をするなら巨体に応じて、複数人のSランク冒険者が必要になる。
「その魔物の名前は?」
「確か、サーペントトータスだったと……」
「っ!?」
「卯月?」
名前を聞いた瞬間、卯月の顔が青褪め始めた。
「ユーリさん!大変です!!急がないと睦月様たちが、死ぬかもしれません!!」
「そこまで?」
「かの魔物は、山と同じ程の巨体なんです!しかも、魔法に耐性が有るんです!」
魔力耐性持ちね。巨体の魔物には、当然備わる性質なのかな?
「なら、どうやって封印したんだ?」
「魔法自体が効かない訳ではないので、内側と外側から魔法を10年程掛け続けたそうです」
「10年って長いな。内側からだと効果は良いのか?」
「はい。ですが、内部に入った者は溶液等で助かりません。だから、人柱として高魔力保持者に魔法陣を刻み、死んでも発動するようにして行使したそうです。犠牲になった人柱は、100人だとか」
「つまり今回も……」
「うちの高魔力保持者……睦月様や姉さんたちが、人柱になる可能が有ります。目覚めて間もないのなら姉さんたちを犠牲にすれば可能だと思われるからです」
おいおい、見知った人が人柱になるとか、凄く嫌だぞ。
「おい、アンタ! 睦月さんたちが発ったのは何時だ? 場所は分かるか? 討伐隊の人数は? ランクは?」
俺は、冒険者の女性に詰め寄り質問攻めにした事で、彼女は後退し壁ドンする形になった。
うちの子以外にするのは初めてだが、今はそんなの気にしてられない。少しでもはやく睦月さんたちの所へ向かいたい。
最低限知りたいのは、場所。知っているなら誰でも良い。最悪、受付の女性に聞けば良い訳だし。
「にっ、2時間程前に出たよ! 後、南西に行った所だって! 他は、分からないよ! 私、低ランクだし! それより、まさか、行く気かい!?」
「当然! マリー、頼む!!」
「了解しました。任せて下さい!」
俺たちは、直ぐ様、竜体に成ったマリーに乗り飛び立つのだった。
 




