なんか、人が増えとる
ガイアス爺さんが、森へ消えたが気にせず宴は続く。しかし、相変わらず、ルイさんの威力は凄いな。
「ん?」
いつの間にか、ルイの隣に、エミリア似の見知らぬ女性が立っていた。容姿が似ていたので、一瞬見間違えたが身長が違うので気付いた。
「あっ、こんにちは。お邪魔していますわ」
その女性は、俺の視線に気付き挨拶してきた。
「どちら様?」
「エミリアの母です。娘や妹がお世話になっています。あっ、母さんたちもでしたね」
「………」
俺は、直ぐに行動する。食事中のマリーに近付き、脇に手を入れて抱える。
「ひゃあ!?」
マリーのおっぱいに手が触れているのはご愛嬌という事で。俺は、この状態のまま、マリーを女性の前に連れて行った。
「マリー。この人って、まさか、ユーフェミアさん?」
マリーの姉のユーフェミア。エミリアの母親でもある。そして、ルイさんの娘さんだ。
「ユフィ姉様!?」
「あら、マリー。おかしな格好になっているわね」
「それは、気のせいです!それより、どうして、ここに!?」
「母さんが、エミリアに会うって言ったから急いで仕事を終わらせて転移門から来たの」
そういえば、娘を溺愛しているんだった。
「ああ、久しぶりに学校外で会えて嬉しいわ。なかなか帰って来ないもの!」
「………」
ユーフェミアさんは、エミリアを抱き締めて頬ずりしている。そして、肝心のエミリアはぐったりしていた。
「ユーリさん、ユーリさん。エミリアさんは、姉様の過剰なスキンシップから逃げる為に学校の寮へと入ったんです」
なるほど理解した。目の前でほっぺにキスとかまで始めたからな。とりあえず、助けてやろう。
「エミリア。さっきベルが呼んでいたぞ。ユーフェミアさんの相手はしてやるから行って来るといい」
「ベルフォート先生がですか? という事なので、お母様離して貰えませんか?」
「うう〜っ、仕方ないわね。貴方の先生だもの」
ユーフェミアさんは、一瞬抵抗したものの、仕方なく娘を離した。
「ベルに会ったら、まずはこれを渡してくれ」
俺は、事情を軽く書いた紙を渡す。ベルなら直ぐに理解してくれるだろう。
「では、改めまして、ユーリ・シズです。よろしく」
「ユーフェミア・ヴァーミリオンです。母や妹から色々聞いてると思うから肩書とかは省略するわね。しかし、良い所に住んでいるのね。マナも濃厚で良い所だわ」
「ユーリさんが1人で作った場所です」
「貴方の旦那さんは良い創り手なのね。仲も良いようで安心したわ」
「はい、ありがとうございます」
ユーフェミアさんからもマリーの旦那として認められた様だ。
「泊まられるのなら部屋を用意しますよ?」
「あら、そうなの? お願いしようかしら? でも、家に帰っても良いわね。転移門のおかげで近いし。少し考えさせてくれないかしら?」
「良いですよ。まだ、時間も有りますし、宴をごゆっくりお楽しみ下さい」
俺は、マリーに後を任せて離れた。たまには、家族で話すのも良いと思ったからだ。止めたくなったらこっちに来るだろう。
「他に増えてないよな?」
エルフの里からラファエラさんも呼んでいるからロロとか来てないよな? アイツは、誘ってないし。一応、魔力感知で見ておこう。
「おや?」
柵の側に生えた木の所に誰かいた。あまりはっきり感じないからロロでは無いようだ。アイツは、長なだけあってそこそこ魔力が豊富だし。
「転移」
確認する為に背後へと転移した。そこにいたのは、蝙蝠の羽根と細い尻尾を生やした幼女だった。宴が気になるのか、木の影から見ていた。
「楽しそう……」
「なら、参加しても良いんだよね?」
「!?」
幼女の身体がビクッと反応し跳ね上がった。そして、こちらを振り返る。俺はしゃがんで視線を合わせてあげた。
「こんにちは」
「こっ、こんにちは」
おっ、警戒してるもののちゃんと返事を返してくれた。
「お嬢ちゃん。悪魔族だよね?」
「……うん」
「ダフネか、ドライアド……トレミーたちに会いに来たの?」
「えっ? トレミーお姉ちゃんいるの?」
「あそこにいるよ、ほら。ご飯を沢山食べてる」
俺の指差した先では、追加で用意した食事を山盛りにしてバクバク食べるトレミーの姿があった。
「あっ、ホントだ!」
「呼んで来てあげるよ」
俺だけだと警戒されそうだし、トレミーを呼んで来ることにした。トレミーを呼びに行ったら、食事を邪魔されて残念そうだったのが、デザートをあげると行ったらついて来た。
「トレミーお姉ちゃん!」
トレミーを連れて戻ると悪魔族の幼女は、彼女に抱き着いた。
「この娘は、例の村の子?」
「あっ、はい、そうですね。村に住んでいた時に会ってます。確か……エミーです」
「違うよ。エリーだよ!」
幼女の名前、間違えとるやん。トレミーが罰の悪そうな顔をしている。
「ええと、エリーちゃん? どうして、ここに来たんだい?」
「楽しそうな音が聞こえたの!大人には、危険だから近寄ってはダメって言われたけど……」
「つい来ちゃった訳か」
カラオケに惹かれて、見に来たらしい。よくトレントに、襲われなかったな。
「よく無事に来れたね。トレントには、会わなかったの?」
「会ってないよ?」
「現在、この周囲にトレントは存在しません。私たちの領域でも有りますからね。彼らは、離れて行きます。それに、村も私たちの認識範囲内なので、道中にはいないでしょう」
「へぇ〜っ、だから、道中は安全だと」
ドライアドは、トレントの上位互換に当たる。彼女たちがいると距離を置くんだな。
「しかし、何故、ここに来るのがダメなんだ? 別に危険でも無いだろ?」
「村の大人たちは、昔の事で他者を警戒していますからね」
「そういえば、そうだったな」
昔、悪魔狩りがなんたらって話をしたな。
「状況は、理解した。さて、エリーちゃん。今日、うちで宴中なんだよ。良かったら、トレミーたちと一緒に参加しないかい?」
「良いの!?」
「ここで見るより間近で見たいだろ? それに美味しい食事も有るよ」
「ここの食事は、絶品です。魔物をそのまま食べるのが馬鹿らしくなるくらいに」
それは、君たちとアイリスだけだよ。あっ、だから、狩った魔物をわざわざ持ってくるのか。
「食べたい!」
「よし、なら参加だね。歓迎するよ」
飛び入りで、エリーちゃんの参加も決定した。ユーフェミアさんもちゃっかり混ざってるから良いでしょ。




