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なんでこんなに冒険者は、血の気が多いんだろ

「やり過ぎた……」


 ピューッと、部屋を風が吹き抜ける。俺は、吹き抜けとなった壁を見て、苦笑いを浮かべるのだった。


 しかも、その周囲では死屍累々。手足が折られたり、殴られたりして、気を失った者たちが転がっている。


 そして、俺の背後では、ドン引きして距離を置く人々。


 俺が何をしたっていうんだ。ちょっと、喧嘩売られたらから買っただけだろう? いや、挑発はしたか。


 とりあえず、テーブルに置かれたケーキを手に取り、口に運ぶ。


「甘いな……」


 疲れた精神を甘さが癒す。ついでに、フィーネのミルクもアイテムボックスから出して飲む。


 うん、気分がスッキリしてきた。相変わらず、美味いな。久しぶりに、直飲みでも……ゴクッ。


 帰ったらフィーネに迫ろう。彼女は、押しに弱いから。


 よし、それでは調子も戻ったし、今回の件を回想でもするかね。




 **********




「おお……!」


 案内された部屋は、3階に有り、内部は思いの外、広く立派だった。そして、置かれたテーブルには、様々な料理が並べられている。


「私共は、外に控えておりますので御用が有りましたら、お呼び下さい。特に、ドリンクからお酒まで色々揃えておりますので、こちらのリストより頼んで頂きますと助かります」


「分かりました」


 案内の人は、ポケットサイズのメニュー表を渡すと室外に出て言った。


「如月さん。ちょっと聞きたい事が有るんですけど良いですか?」


「何でしょう?」


「会議って、どれくらいかかるんですか? 俺、今回初めて同行するもので……」


「そうですね。大体、2時間毎に休憩を取られに来ますよ」


「そうですか。それなら、結構のんびり出来ますね。色々、食べるとしよう。……所で」


 俺は、さっきから気になっている問題に踏み込んだ。


「失礼ですが、その羽根は、収納出来ないのですか?」


「あ〜っ……」


 通路とかで、人とすれ違う度に羽根をぶつけているのだ。議事堂と言う事も有り、通路も広いが羽根のせいで幅を取っているのだ。


「残念ながら、天使族の様に収納出来ないのですよ。彼女たちの様に魔法要素ではなく、根本的に生えていますので」


生態変換(クリエイト)とかは?」


「かの秘術なら可能ですね」


 うん? 秘術? クリエイトが?


「クリエイトって、秘術なんですか?」


「そうですよ。竜種の秘奥義ですね」


「あの〜、うちの周りでは竜種以外で使ってる奴らがいるのですが……」


 主に、アイリスとギンカ。出逢った時から使っているから知らなかった。


「えっ?」


「……これも何かの縁ですし、良かったら教えましょうか? 俺も詠唱とか知ってますし」


「……良ければお願いします」


 数分後。


 邪魔な羽根は、収納された。彼女たちも困っていた様だ。


「助かりましたよ。結構、困る事が多くて。それを取って貰っても?」


「いえいえ、これくらい安いものです。あっ、これですね。どうぞ」


 魔法を教えたりしたので、一緒に食事するくらいには仲良くなった。


「所で、さっきから卯月さんに睨まれてましけど、俺が何かしましたか?」


 魔法を教えてからというもの、めっちゃ睨んでいるのだ。


「何、ユリシーズさんの他の魔法が、気になるだけですよ。あの子は、魔法への知識欲が凄いので。それに私たちのエリアは、魔法使いが少ないですから」


「でも、俺もそんなに使えませんよ。基本は、ルーンを使うくらいで……」


「ルーン! やはり、噂は真実なのですか!?」


 何やらルーンについて、かなり食い付いてきた。俺の手を握って、目を輝かせるくらいに。


「えっ、え〜っと……」


「こら、卯月。失礼ですよ」


 弥生さんに怒られて、卯月さんが手を離してくれた。性別が分からないけど、整っているからドキドキする。


「うぉ〜い、如月共じゃねぇか。相変わらず、小綺麗な姿をしているな。めちゃくちゃにしてやりたくなる。そろそろ、東に付く気になったか?」


 なんか、酒の匂いを漂わせた下品な男がやって来た。


「全力でお断り致します。彼の様に南の方が強いですからね」


 何故か、如月さんは俺を前に出してきた。


「彼は?」


 振り返って、聞こえない様に内緒話で語りかける。


「最近勢いを増している東の大陸の冒険者です。私たち南の大陸の者に、よく絡みます。お気を付けて下さい」


「おいおい、俺を前にして内緒話か? それ以前に見ない顔だな? 新顔の分際で、良い度胸をしてるじゃないか?」


「ああ、悪い。アンタみたいな下品な奴を知らなくてな。如月さんに聞いていた」


「なんだと!!」


 ギルさんに言われたので、一応挑発してみた。


「まぁ、仲良くしようや」


 俺は、余裕を見せる為に、手を差し出した。


「ふん! 良いだろう! 俺を覚えておけ!」


 相手は、握手に応えてくれた。そして、全力で力を込めて来る。護衛なだけあって中々の握力だ。


「ああ、覚えておくよ」


 ゴギィリ! という鈍い音が、相手の手から聞こえて来た。ちょっと力を入れただけだが、潰れてしまった様だ。やろうと思えば、イケるものだ。


「#$%&&%$!?」


 男は、何とも言えない声を上げて蹲った。しかし、それが問題だった。それを機に人が集まってくる。


「おい、南の! うちのを1人やったからと言って、いい気になるなよ!ソイツは、俺らの中じゃ格下だ! 俺が実力というモノを教えてやる!!」


 という感じに、テンプレで連れ達が絡んで来た。


「少し相手をしてやるか……」


 どうやって倒そうか?


 そう考えていたのが、間違いだった。背後から酒瓶で殴られた。寸前で気付いた為に、障壁で防御したが物理障壁だけだった為に、服が酒で濡れた。


「………(ニコッ)」


 いや〜、久しぶりに切れたわ。骨折るのは、決定。


「ごぎゃ!?……いぎっ!? あがっ!? 止めっ!?」


 酒瓶で殴った奴を、既に慣れた動作で両手両足折って砕く。砕くと下級ポーション1本程度では、治らないのだ。そして、更に肋骨を1本1本丁寧に折ってあげる。


 笑顔で肋骨を折り始めた頃には、意識は無くなっていたが相手の事など知らん。全部折る。


 それが不味かったのか?


 そこからは、更に人が増えた。しつこい程に、次々湧いてくる。


「一気に来い! 一気に!! 弱過ぎるんだよ!!」


 頭に血が登った為に、口調が荒くなっちゃった。それは、相手もらしい。武器を抜く者たちが続々出始める。


「流石にそれはーー」


 如月さんの制止が聞こえた気がしたが、武器持ちを順番に殴り飛ばすので忙しくて、最後まで聞こえなかった。


「クソッ!! だったら、俺の魔法でヤッてやる!!」


 1人が詠唱を始めると他も始める。ってか、無詠唱じゃないんかい!そして、お前ら仲良しか!


 それにしても、敵が多過ぎると思ってよく見ると敵対してる奴ら同士で組んでやがった。まぁ、原因は俺だな。勝手に助太刀に入るからソイツらも巻き込んでしまった。


「ホーリーバースト!」


 俺は、面倒くさいので、纏めて吹き飛ばす。ただ、魔力をぶつける方が、詠唱するより断然速い。ってか、無詠唱者はいないんかい!


 でも、それが間違いだった。加減したつもりだったが、壁に大穴を開けてしまったのだ。3階故に景色がよく見える。





 **********




「ゆっ、ユリシーズ殿?」


「あ〜、悪ぃ。ちゃんと直しますんで」


 壁の材料を鑑定で確認。


 ふむふむ。木の格子に粘土を塗り、レンガを並べて組んでいるのか。運が良い事に、材料はしっかりある。


「まずは、これをこうして……次にこれ……更にこれを設置して……魔法で乾燥。ついでに、錬金術で補強して……良し完成」


 10分で、修復は終了した。


「流石、俺。完璧な修復だ!」


『何処が!?』


 おかしい。何処か、ヒビでも入っているだろうか?


 誰がどう見ても素晴らしい木工細工。その上、ガラス入り。しっかりと街が一望出来る………完璧なテラスだ!


 ……うん?


「何で、テラス?」


『こっちが聞きたいよ!』


 まぁ、ただの壁がテラスになっただけだ。些細な違いだろ?


 ちゃんと強度も十分だ。100人乗っても大丈夫!崩れない……筈!


「賑やかですね。これは、何の騒ぎですか?」


 どうやら、また部屋に誰か入って来た様だ。

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