ギルさんと2人で総会へ
ゴォオオオーー!という音と共に、空気を切り裂きながら蒼竜が大空を飛翔する。
もう、お気付きかもしれないが、うちのギルドマスターのギルフォードさんだ。
「すまんな。無理を言って」
「いや、大丈夫ですよ。むしろ、結構わくわくしてたりします。だって、アイリスたち無しで行くのは初めてですから」
ギルさんの背で、障壁を維持しながら応える。
「本当は、呼べれば良かったんだが、総会の規定で同行者2名以上は禁止されていてな」
「なんで、また。冒険者ギルドのお偉方の集会だから、普通は大人数で行くものでは?」
「それなんだが、ワザとそうしている」
「ワザと?」
「総会の行われる浮遊大陸への正規ルートを辿るのもその一環だ。まず、冒険者ギルドへの反抗勢力の炙り出し。それから、実力のアピールだな」
だから、うちの転移門で移動しなかった訳か。
「でも、死んだら意味なくないですか?」
「そこは、ランクで判断する。マスターにも階級があってだな。階級に応じて、同行者を増やせるという訳だ。ここまで言えば、後は分かるだろ? ユーリは、数より個の力というモノを良く知っているから」
「……大体、理解しました」
俺らSランクがただ力を奮う場合、色々条件は付くが基本小隊1つ分に相当する。並みの勢力だと相手にならない。
「そんな訳で色々あるのさ。それより、向こうでの話なんだが……」
「何か、問題でも?」
「いや、別に問題というものでも無いが、先に言っておこうと思ってな」
ギルさんは、一息つくとトンデモない事を発言した。
「好きに暴れろ」
「……はい?」
意味が分からない。普通、暴れるなとかではないのか?
「暴れるなではなく、暴れろ?」
「うん、暴れろ。正しくは、喧嘩を売られたら片っ端から買って、潰せ。それが、仕事だ」
「えっ……護衛とかじゃなくて? それが、クエストの名目じゃなかったですか?」
「表向きは、そっち。裏向きは、それだな。まぁ、色々有るんだよ。派閥争いとか、派閥争いとか……」
ギルさんが、ため息混じりに2度言った。まるで、超面倒くさいとばかりに。
「はぁ……了解です」
「頼むぞ。後、会議中は、護衛は全員別室に集められる。時間もかかるから立食会になっている。好きに食べて良いぞ。オススメのメニューは、ローストビーフだな。あそこのは、皮はパリッと、中はアッサリしていて野菜と良く合う」
「全力で確保しに行きます。ギルさんの分は、要りますか?」
「おっ、マジか。頼むわ」
クエスト中の楽しみが出来たぞ。ギルさんが言うなら、美味しいのは間違いないな。食べたら、料理スキルを使って再現し、アイリスたちにも食べさせよう。
竜種の超高速飛行によって、3時間程で目的地に到着した。ここは、竜神殿の有る街とは、違う様だ。
「ここは、『タレス』だ。母様がおられる街の南に位置する。距離でいうと30kmくらいか。案外近いぞ」
人から見たら30kmって十分遠いのですが……。
「ようこそ、おいで下さいました。ギルフォード様。それと話にあった、ユリシーズ様ですね」
街の入り口で喋っていたら、馬車に乗った出迎えがやって来た。
「それでは、馬車にどうぞ。ただ、出発に関しては、少々お待ち下さい。そろそろ、もう一組やって来るそうなので、一緒にお願いしたく……」
「構いませんよ」
「俺もです」
「助かります。それでは、馬車に参りましょう。中に冷えたドリンク等を用意しております」
案内に従い、馬車へと向かう。ギルさんが先に入り、俺も入ろうとした時、背後で風が吹いた。
「あれは……」
「うん? ああ、ユーリは初めてか? あれは、天狗族という種族だ」
黒い烏の羽根の様な物を生やした亜人たちがいた。天狗族と言うけれど、別に鼻が長くて紅いという事はなかった。
「ユーリ。前に言った言葉に追加だ。アレとだけは、争うな。凄く面倒くさくなるぞ。そうだな……下手したら一生面倒みるとか?」
「全力で気を付けます」
それは、あの子たちの容姿が関係してるのかな?
男性とも女性とも取れない完全に中性の容姿なのだ。いや、どちらかと言うと女性寄りか? というか、女性では?
アイリスたちに、何処かに出かける度、女性を増やすと言われるから、心に刻んで気を付けよう。
そういえば、馬車は1つしかないな。同席ってことなのかな?
結果、案の定、天狗族の子たちと同席になった。相手は、全部で4人。
馬車の内部は、対面席になっており、1席に3人座れるので、1人はこっちに座る。ギルさんを中心にして左側に座って貰った。
「これは、これは、ギルフォード殿。お久しぶりです」
「ええ、こちらこそ。昨年は、体調を崩されたとかでお休みになられていたので、2年振りになりますね。睦月さん」
ギルさんに話しかけてきたのは、その中で最も年長だろう女性だった。立派な胸が有るから女性の筈だ。
「そして、そちらの子は、初めましてですかね?」
「はい、そうなります。改めまして、ユリシーズ・ヴァーミリオンと申します」
「ヴァーミリオン?」
「妹の旦那に当たります。つまり、俺の義弟ですね」
「知らない間に、兄が出来ていた。そして、初めて義弟と言われた」
「マリーと結婚したんだから当然だろ」
「うん。分かっているけど、改めて言われると恥ずかしい」
「くくくっ……」
俺とギルさんが、いつもの通り喋っていると睦月さんが突然笑い出した。
「失礼。お二人のやり取りが新鮮だったもので。それでは、私も改めまして、桂花のギルドマスターを務める睦月と申します。良しなに」
桂花は、一度行きたい国ナンバーワン。和国の首都だ。だから、和服を着ているのかもしれないな。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「そして、この子たちが私の護衛で右が如月。左が弥生。そちらの席の者が卯月と申します」
「「「よろしくお願いします」」」
「しかし、ユリシーズ殿。貴殿の名には、少々聞き覚えがございますよ。なんでも、竜王祭優勝。クラーケン並びに砂クジラのソロ討伐。果ては、ダンジョン踏破とかですね」
「うちの自慢のエースです。我が大陸において、一二を争う冒険者でしょう」
「それは、大変素晴らしい事です」
「ガチで褒められると流石に照れるんだけど……」
睦月さんと喋っていると、突然、キキッという音がして揺れが収まった。どうやら、本当の目的地に着いた様だ。睦月さんたちから順番に外へと出る。
「ここは、議事堂か、何か?」
俺の目の前には、国会議事堂の様な立派な建物がそびえ立っていた。
「ああ、この街の議会はここで行う。今回は、この街での運びとなったから特別にお借りした」
総会の場所は、浮遊大陸の街と決まっているが、毎回持ち回りで違うそうだ。
「それでは、マスター様方は、こちらへ。護衛の方は、かの案内に従いホールへとどうぞ」
俺と他の護衛たちは、案内の人に従いホールへと移動したのだった。




