ダンジョン攻略中盤
ダンジョン探索2日目。
「いや〜、まさか、こんな快適に過ごせるとは思わなかったよ」
「温かい料理が食べられるのも良いわね」
「今回も美味しかった」
アイテムボックスには、食材も調理器具も入ってるから、ダンジョン内でクッキング。
昨日の晩と朝飯は、シチュー。
カレーの方が良かったけど、ガラムマサラとコリアンダーを持って来るのを忘れてた。非常に残念だ。次から入れておこう。
「まさか、ダンジョン内なのに、ベットで寝れるとは思いませんでしたよ」
「直に寝るのが、嫌だったからね。背中痛くなるし」
「でも、ユーリ。さすがに、ここで作ると思わなかった」
「材料は、アイテムボックスにあったからね」
キングサイズのベットが2つ。
安全地帯とはいえ、ダンジョン。警戒しておく必要が有るから、寝るのは交代だ。半数ずつが一気に寝れる様に、大っきなのを作った。
「所で、ここを出たらさ。誰か、ベット1つ貰わない?」
「くれるのかい?」
「臨時ベットは、1つ有れば十分だからね」
「アタシは、間に合ってるよ。ビリーが専用の大型ベットを購入してくれたから」
「欲しいけど、部屋にね……」
「入らない」
「私もです」
「……そうか」
まぁ、かさばらないし。問題ないか。
「うん? これは……」
アイリスが何かに気付いたみたいなので、俺も魔力感知を行う。
「誰かが、戦闘中みたいだな」
「今、18階だからそこそこの実力者だな」
「久しぶりの遭遇ね。最後チームに会ったのは、14階だったかしら」
「そういえば、15階まで来ると思ったけど、結局来なかったな」
「迷子になってるんじゃない? 妙に入り組んでいたし」
「有り得るな。しかも、広かったし。というか、下に行くほど広いってどうなってるの?」
「このダンジョンの特色でしょうか?」
「この調子ならフィールドも有るかもな」
フィールドというのは、ダンジョンの中に出来る広域エリアだ。通常は、壁に阻まれた迷宮だが、稀に森や荒野といった壁の無いエリアが現れる。
「一度、見てみたいんだよな。室内の森って奴を」
「なに、アンタなら見れるさ」
「そろそろ、合流だよ」
近付くに従って、キィンキィンという金属のぶつかり合う音が聞こえて来る様になった。
「うん? あれは、ちょっとマズそうだね」
遭遇したのは、魔物と戦う3人組のチームだ。
名称:マスクドキラー
危険度:B+
説明:傀儡型の魔物。両手両足ナイフを駆使したトリッキーな動きで攻撃を行う。
相手の魔物は、残り1体か。アイテムが落ちてる所を見ると元は、2体だったのだろう。
「男性が1人怪我しているな。それを庇いながら戦ってるから2人は本領を発揮出来ないって感じか……こういう場合は、助けて良いのか?」
冒険者が戦ってるいる時は、手出しをしない暗黙の了解がある。理由は、ドロップ品を巡る争いに発展する可能性があるからだ。
「そうさね。アタシから見てもギリギリに見えるよ。一思いに聞いてみるといい」
「確かにもっともだ。おーい、助けはいるか?」
前衛で戦っている男に声をかけた。
「済まない!可能なら手を貸してくれ!ドロップ品は、そっちに譲る!!」
「了解」
さて、戦いに参加する訳だが、両手両足が刃物だから近付きたく無いんだよね。遠距離でいこう。
「フレイムショット」
ジャッジメントから放たれた火球によって、マスクドキラーは消し炭になった。
「怪我人は、無事か」
「両腕をやられた様だが無事だ」
「なら、移動出来るな。セーフゾーンまで案内してあげるから移動しよう」
「済まない。恩にきる」
移動しながら、事情を聞いた。
彼らは、『セレナイト』というBランクのシキをリーダーとした3人組のチームらしい。他のメンツは、剣士のコナン。別に子供じゃないぜ。それからレンジャーの女性、シャアリー。
セーフゾーンに着いたら、怪我したコナンを止血して、シャアリーが包帯を巻き始めた。
「ポーションとか、回復魔法はないのか?」
「先程の戦いで使い切ってしまったよ。応急処置だが、帰るまで辛抱して貰おう」
「帰りも戦うだろう? ポーションを分けてやろうか?」
「ホントか!?」
「怪我したばかりだから下級で良いか?」
「助かる。支払いは……このドロップした宝石でも良いか?」
ルビーの小粒だが、金貨5枚くらいだろう。
「良いよ。下級ポーション3本と交換しよう。これだけ有れば、帰りも心配せずに済むだろ?」
「良いのか? ありがとう。しかし、君たちは、困らないのか?」
「ストックに余裕が有るから大丈夫」
俺たちは、トレードをした後、彼らと別れた。ついでに、この階層の地図も付けてあげた。直ぐに次の階層に行くからあげても大丈夫だろう。
「ポーションを3本売っただけで、この先の情報も手に入ったな」
「普通、分かっててもポーション売らないからな」
「余裕が有るのは、事実だし。問題無いだろう? 下級だし」
アイテムボックスには、かなり入っているし。自分の腰にもある。アイリスたちも携帯しているので、十分だ。
「さて、ボス戦に挑もう」
彼らから貰った情報は、この先にいる冒険者とこの階層のボスについてだ。
ボスは、コナンが怪我した原因でもある。ミステリーピエロという危険度B+の魔物なのだと。特徴は、影分身。5〜7体になって襲ってくるそうだ。
「作戦は、分身する前に叩く。もし、分身した場合、ギンカと俺の重力魔法で拘束。その後、各自1体ずつ倒そう」
「おう、それでいこう。行くぞ!」
俺たちは、勢い良くボス部屋に入った。
「ええっ!?」
「なぁ!?」
魔力感知で、ボス部屋内の個体数を知っていた、俺とアイリスは顔を見合わせた。何故なら、既に7体も出現していたからだ。
「どういう事だ? 魔力感知に1人しか引っかからないぞ!」
「……ユーリ。その感知出来る奴はどれ?」
「一番左端の奴だよ。シオン」
「アレね。爆炎の矢」
シオンの矢が火を纏って、ミステリーピエロに命中した。これで、ソイツは絶命しただろう。
「あっ、消えていきます!?」
「これは、どういう事だい?」
「おそらく本体以外は、ただの幻影。数がいるから本体が隠れながら攻撃したんだと思う」
「3人だったから騙されたと」
「そう」
「だから、1体しか見えなかった訳だ」
「なるほど。納得した」
という訳で、苦戦すると思われたボス戦は、あっさり終了。俺たちは、次の階層に移動した。
そこから安定の快進撃。どんどんドロップ品が貯まっていく。
「最前線のチームがいるって言われたの、この階だっけ?」
20階に来た所でカトレアに聞いてみた。
「そういえば、そうだったね」
セレナイトの人たちに聞いた話だと、男性4人組のチームで、性格が悪いらしい。平気で、妨害工作とかして来るんだとか。
ダンジョン内の為、証拠が無く。冒険者ギルドも罪に問えないらしい。特に、女性冒険者には乱暴するらしい。気を付けてと心配された。
良い人たちだったからポーションをもっと多めにやっても良かったかな?
「居た。曲がり角を2つ行った先の広場に」
「それじゃあ、全員警戒しておいてね」
何が起こっても対応出来る様に、全員武器に手を置いた。
「何故、邪魔をする? ダンジョンは早い者勝ちだろ?」
案の定、男たちに道を塞がれた。
「早い者勝ちだからさ。通りたければ、俺たちを押し退けて進むんだな」
完全に戦闘する流れになってる。
「リーダー。殆どが、女だぜ。そこの男とデカブツ女を倒して、犯しちまおうぜ」
「人数いようが、たかが女だろ?」
「前に会ったチームの女を犯せ無かったからやろうぜ」
「ゲスだな」
「ああ、三下の上に、ゲスときた」
「カトレア。俺たちをご指名みたいだけどやるか?」
「良いね。格の違いを見せる為に、素手でやろう」
「ふざけてるのか?」
「たぶん、閉所で頭がイカれーーべぶっ!?」
カトレアの右ストレートが決まって、頭が壁にメリ込んだ。
「殺してねぇだろうな?」
「きっ、キサマーーぐはっ!?……ぎゃっ!?」
俺は、両足を一蹴りで砕き、ついでに両腕も踏み潰した。
「そういうアンタこそ、エゲツないね」
「よくも仲間を!!」
1人の男が、剣を抜いてカトレアに斬り掛かった。
「ふん!!」
カトレアが自分の筋肉に力を入れると、パッキンという音と共に、相手の剣が折れた。
やっぱり、化物だな、コイツ。
「なぁ!?」
「乙女の柔肌に何しやがる」
カトレアは、アイアンクローでその男を掴む。そして、そのまま壁に打ち付け、2人目も壁に埋もれた。
「剣を折ってる時点で、何処が柔肌なんだ?」
「はっ、聞こえないね!」
「聞こえてるじゃん!」
「うぎゃ!? あっ……あぁ!?」
最後に残ったリーダーの男も同じ様に折ってやった。ただし、わざと片腕を残したけどね。
「さて、そのポーションは直ぐに使わせないよ。使いたかったら這いずって取りに行くんだね」
リーダーの腰に巻かれたポーションを奪って、かなり遠くに置く。
「さて、ここからは君の運の問題です。魔物が来るのが先か、回復出来るのが先か。喧嘩売った事を後悔しながら過ごすんだね。ちなみに、4本だけ残してあげる」
目の前で、下級ポーションを4本だけ残して、全部割ってやった。下級ポーションだと手足の1本程度しか直せない。
「そっ、そんな……」
「もし、助かって復讐を考えた場合、殺すからそのつもりで」
「あばよ」
自業自得な彼らを放置して先に進んだ。近くに魔物が居なかったから、たぶん助かるだろう。まぁ、野郎だから死んでも知らん。
その後、20〜22階層のボスは、そこまで強く無かったので、余裕で終了した。
初日に比べてあまり進めなかったので、23階層にある道中のセーフゾーンで休む事にした。




