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冬のある日

 冬も半ばに差し掛かり始めた、今日この頃。神社の階段に座り、空を眺める。異世界で初めて見る雪が降ってきた。


「ユーリ、こんな所にいたんだ。何してるの?」


「雪を見てた。積もらないかなと」


 積もったらしてみたい事が、沢山ある。雪合戦に雪ダルマ造り。昔なら、考える余裕すらなかった事だ。


「寒くない?風邪引くよ」


「そうだね。カグヤたちに移したら不味いしな」


 コートのおかげで、寒くない。それに、加護が有るから風邪にならないと思う。でも、赤ちゃん居るし、気を付けるべきだろう。


 屋敷に入り、赤ちゃんの顔を見に行く事にした。今の時間は、フィーネが見てくれてる筈だ。


「2人は、お昼寝?」


 赤ちゃん部屋に入るとカグヤとユリウスは、寝ていた。最近、この子たちは、よく夜泣きをする。


 しかし、うちは、母親とサポートの最低2人が起きているので、特に問題になっていない。交代による保育が上手く行ってる様だ。


 でも、昼間にしっかり寝るから夜泣きするのでは無いだろうか?


 気持ち良さそうに寝る赤ちゃんを見ていたら、そう思った。


「はい、先程、疲れて寝ちゃいました。さっきまで喃語で喋ってたんですけどね」


「それは、残念。所で、フィーネは疲れてないか?」


「大丈夫ですよ。後で、マリーさんと交代する予定ですし」


 今日の配置は、昼間がフィーネ、夜間がマリー。そして、休みがアイリスの様だ。


「きつくなったら直ぐに相談してね。サポート増やしたり、色々考えるから」


「はい、そうします」


 俺は、赤ちゃん部屋を後にした。廊下を歩いていたら、ラズリに遭遇した。ゴスロリを改造した服を着ている。


 エルフが増えたし、新しいメイド服を作ったのだ。ミズキたちと違いが欲しかったのだ。テーマとして、ゴスロリとメイド服のコラボを考えてみた。


 マリーとエロースの協力を得て、デザインが完成。いつもの服屋で注文した。


「よう、ラズリ。問題なさそうだな、その服」


「やっほー、ラズリちゃん。掃除中?」


「あっ、ユーリ様にアイリスさん」


 俺たちに気付いて、ラズリは振り返った。足元にバケツが置いてあるから掃除中の様だ。


「この服は、動き易いですね。日常使いとしてもイケそうです。後、私は窓拭きをしていました」


「その服、可愛いよね?」


「はい、気に入ってます」


「それは良かった」


「夜もこの服なら、着たまま出来そうです」


「………」


 そろそろ気付いた人も居ると思うが、『さん』付けが無いのは、そういう事だ。


 俺が手を出した訳ではない!断じて、俺が手を出した訳ではない!重要なので、二回言わせて貰う。俺は、襲われた方だ!


 エルフの生態は、ギンブナの繁殖で検索して出てくるのと大体同じと確信した。嫌じゃないけど、程々にして欲しい。リリスたちも孕んだばかりなのに。


「やった! 夜の楽しみが増えた!」


「アイリスもこの服気に入ってるな」


「うん♪ちょっとずつ、脱がすのが楽しい!」


 そういえば、アイリス参加でやって無いな。


「今度、やる時アイリスも呼ぶよ。エロースの時みたいにやろう?」


「封印した奴をやって良いの!?」


「良いよ。俺もエロースで練習して縛るの上手くなったし。それに、普通の人の反応を見たい」


「よっしゃあぁーー!燃えてきた!」


「だから、ラズリ。頑張って」


「はい?」


 本人は、よく分かっていない様だ。次が、楽しみだ。たぶん、エロースみたいに気絶するんじゃないかな?


 後日。俺とアイリスの2人だけで、ラズリに色々やってみた。


 結果、俺を『ご主人様』、アイリスを『お姉様』と呼ぶようになった。何をしたかは、ご想像にお任せします。


 俺たちは、ラズリと分かれて、ある目的の為に談話室に向かう。


 この前、商業都市ウェンでアイリスと個別デートした。その時に赤ちゃんの玩具を探して『プレイヤー』に立ち寄った。そこで、俺たちは気になるゲームを見つけ購入したのだ。それを今からしようと思う。


「どっちをする?」


 談話室で、買ってきたゲームを2つ、アイリスに見せる。


 1つは、『デスハウス』と呼ばれるボードゲーム。


 歩数カードと補助アイテムカードを使い、マスを進んで行く。道中、色々な魔物たちがプレイヤーの行く手に立ち塞がる。それを、武力・魔力・知力のコインを選択して討伐するのだ。


 また、このゲームは、敗北によるゲームオーバーは存在しない代わりに、何かしらのペナルティを課せられる。それらの試練を乗り越えて、先にゴールした者が勝者となるゲームだ。


 イメージとしては、『お化○屋敷ゲーム』みたいな物だと思って欲しい。


 もう1つは、『ドラゴンウォーズ』と呼ばれる、子供に人気のシミュレーションボードゲームだ。


 5匹のドラゴンによる陣取りゲームだ。まず、サイコロを振って、各ドラゴンのステータスを決める。その後、自軍エリアに好きに配置して、そこから動かす。勝利条件は、敵の拠点破壊か、敵のドラゴンを全滅させれば勝ちになる。


 ドラゴンのステータスは、3つ。物理・魔法・速さだ。戦う際にどのステータスを使うか選んで勝負し、数値が高い方が勝つ。


 しかし、ステータスには、物理<魔法<速さ<物理の相性が有る。これにより、減点1された状態で勝負する事になる。その上、仲間が増える毎に更に減点1されていくのだ。故に、如何に多数で攻めるかが肝になる。


「ドラゴンウォーズやろう。せっかく、この駒使いたいし」


 アイリスが自分の駒を見せる。水晶で造られた竜だ。彼女が気に入って購入した物だ。そして、この駒こそが子供に人気の理由でもある。


 このゲームの駒は、手作りでも市販品でも、最悪、ただの石を使っても構わない。だから、気軽に遊べる上、市販品の竜は、店毎に違うので集めるのも楽しい。


「なら、俺は手造りのこれを使うわ」


 俺が、翡翠を削って造った竜。翡翠といえば、誰がモデルか分かるはずだ。そう、マリーの竜体だ。


「あっ、ミニマリーだ」


「上手く出来ただろ?」


「凄い!よく似てる!」


「コミカルなマリーにしようとしたらガチで造っちゃった」


「今度、ルイさんで造ってよ」


「ルイさんならやっぱり水晶かな?」


「大理石は?」


「そっちが良いかな? 白が際立つし。まぁ、造る時に考えるよ。それじゃあ、始めよう」


「3回勝負で、負けたら罰ゲームにしない?」


「ok。面白そうだ。手加減しねぇ」


「私も負ける気はしないよ」


 俺とアイリスの間に火花が散る。2人だけの真剣勝負が始まった。


 2時間後、べディやフィロといった観客も集まる程の白熱した戦いになったが、最後はあっさり決着が着いた。


「よっしゃーー!俺、勝利!!」


「ずっ、ズルい!自爆するなんて!!」


「ルール上、問題ないもんね!」


 このゲームには、補助として占拠した砦からフィールドを攻撃する手段がある。ただ、敵味方関係なく攻撃する。本来なら自軍がいない時に攻撃するが、今回は、俺の竜とアイリスの竜の両方を攻撃した。それにより勝利。


「さて、罰ゲームは何にしようかな?」


「痛いのは止めてよね」


「そういうのはしないって」


 でも、罰ゲームって言っても、アイリスには殆ど有効なものが無いんだよね。性的なイタズラも普通に大丈夫だし、恥ずかしい台詞とかも普通にするし。


「料理?」


「リリスたちの料理だけは、止めてよね!?」


 ホントに嫌なんですね。


「そんなに不味いですか?」


「そういえば、マリーさんに『リリスさん達の料理には気を付けてね』と言われました」


 彼らは、まだ食った事が無かったのか。俺は、アイテムボックスに手を突っ込んで例のモノを取り出す。


「これを分けてやろう」


 取り出したのは、バタークッキーの入った包みだ。彼女たちが練習で作った物を頂いたのだ。半年前の物だが、まだ食いきれていない。


 クッキーからはバターの甘い香りが漂い、中央にイチゴジャムのアクセントが付いている。見た目も綺麗で焦げていない。


「えっと……いただきます」


「「………」」


 フィロは、警戒して手を出さないが、べディは、好奇心からクッキーを1つ掴むと口へ放り込んだ。


「ぐばっ!?」


「べディ!?」


 べディは、呻き声を上げて倒れた。そして、そのまま動かなくなった。心配なので鑑定で状態を見る。


 状態:軽い失神

 詳細:視覚、嗅覚と味覚のギャップに脳が混乱を起こしている。一度リセットする為に脳が考えるのを放棄した。


 放棄したんだ。考えるの……。


「命に別状はないみたいだ。アイリスもいる?」


「ノーセンキュー!!」


 アイリスは、自分の前で手を交差して全力で否定した。仕方ない、アイテムボックスに戻すか。あっ、べディどうしよう?


 彼を見るとフィロが介護していた。なら、放置で良いだろう。


「それで話を戻すけど、別に食べさせる訳じゃないよ。ただ、アイリスの手料理食った事無いなって思って」


 アイリスと2人だけの時から料理は、俺担当だ。人数が増えた今は、フィーネやミズキ、その他がしているが、アイリスがしたのを見た事がない。


「何か作れる?」


「作れなくないよ」


「じゃあ、それを晩飯にお願いします」


「了解。鶏ガラの塊、貰って良い?」


「良いよ。後で鍋に入れて渡すわ」


「今から始めるから直ぐに頂戴」


「分かったよ」


 厨房に行き、固まった鶏ガラを鍋に入れてアイリスに渡す。今日の晩飯は、アイリスの手料理で確定だ。


 さて、どんな料理を作るのやら?


 気になるが、見ない様にしよう。その方が面白そうだ。


 そして、晩飯の時間。


「出来たよ♪」


 アイリスが出してきたのは、鶏ガラで煮込んだ野菜スープだった。


「これって……」


 マリーが一足早く気付いた。それもそうだろう。彼女がうちで初めて食べた料理だ。


「いただきます」


 口に含むと、野菜の旨さと絶妙な塩加減が伝わって来た。


「美味い!」


「ありがとう♪」


 その日、アイリスのスープをしっかり堪能した。雪が降る寒い日だけど、心はとってもぽかぽかになった。

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