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Brave spirits  作者: あらと
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ギルドの日常

ギルド”まったりマニー”は、その名を示すように特別な目標も無く、まったりと活動をしている。

決まっている事は、水曜日と土曜日の夜8時から10時まで適当な狩りをするか、何かのイベントがある時に招集が、かかるぐらいである。

ただ、それぞれ個性が強い集まりでありクリプトン王国所属の冒険者の間では、それなりに名前が売れている集まりであった。


今は土曜日PM7:50

集合場所である城下町の南門前に設置されている、テレポートクリスタル前にギルドメンバーが集まりつつあった。


自称ナイトのアングラウスは、フルプレートの鎧と1メートル程もある盾と片手剣を装備している。

自称シーフのファルは短剣を二本と弓矢、革の鎧にマント姿だ。

自称サムライのマサムネは、日本の鎧兜に似せた装備に日本刀に似せた両手剣を装備している。


鍛冶スキルを上げると既製品ではなく自分好みの姿の装備が作れる。

マサムネの装備は知り合いの自称、鍛冶職人に作ってもらったらしい。

まあ、装備を強力に作るにはそれなりの素材が必要になるが。


自称、白魔導士のフィーは、魔法の杖に白ローブと白マント姿。

自称、黒魔導士のクロームは、魔法の杖に黒ローブと黒マント姿。


そして自称、赤魔剣士のカズキは胸・腕・脛だけの部分プレートの鎧に赤いマント、背中には片手剣を背負い右脇腹には小型剣、腰に太めの短剣を装備している。


この世界ではそもそも職業と言うものが無いため、装備品の制限もない。

それでも、プルプレートの鎧を装備しないのは重量が重くなれば動きが遅くなるという設定があるため軽量化をしているのである。

自称シーフのファルは、スピード重視のための軽装備だが、自称魔導士を名乗るフィーとクロームは、そのマントの下にスクロールやマジックアイテムを持っているため鎧を装備すると、やはり動きが鈍ってしまう。

ちなみに、このメンバー全員が、ある程度の魔法は使えるし両手剣などの重装備も出来るが、それぞれのポリシーに従ってこの様な装備で狩りをしているのである。


「さて今日は、どこに狩りに行こうか?」

このメンバーだと自然とリーダー役になるファルが口を開く。

「盾スキル上げが出来ればどこでもいいよ」

アングラウスが盾を振りながら陽気に答える。

他のメンバーも、どこでもいいよと答える。


「ふむ、このメンバーなら大カブト狩りが楽かなぁ。角と甲皮も高く売れるし、キセノン神殿前でいいかな?」

ファルが提案すると一同はうなずく。

「じゃあ、アングラウスさんが盾役で、カズキさんがサブ盾。自分とマサムネさんがアタッカーで、クロームさんがお得意の攻撃魔法で削ってフィーさんが全体のフォローでお願いします」

ファルが作戦を指示する。

このメンバーなら連戦でも対応出来るフォーメーションだ。

「「おっけー」」

一同、同意をして出発前の装備の再確認をする。


「そう言えばさぁ」

フィーがスクロールの手持ちを確認しながら話し出す。

「今日も、フィオナさんとサトマルさんは来ないのかなぁ」

「水曜日も来なかったよね。マサムネさん、何か知ってる?」

アングラウスがマサムネに問いかける。

「うーん、金曜日の素材狩りにも来なかったんだよねぇ」

マサムネは両手剣の状態を確認しながら答える。

「あの二人は基本自由人だし、今日も遅れてひょっこり顔を出すんじゃないのかな」

スクロールの確認が終わったクロームが言う。

「まあ、今居なきゃ仕方ないよね。そろそろ出発しようか」

ファルの問いかけに一同うなずいて、テレポートクリスタルの前に集まる。

「行くよ。テレポート!!キセノン神殿」

ファルの詠唱が終わると一同はキセノン神殿にテレポートした。


キセノン神殿は、クリプトン王国内にある三大神殿の一つだ。

神殿の周囲には強力な結界が張ってありモンスターが入って来られない。

つまり、ここの周辺で狩りをしていれば、もしやばい状態になっても神殿に逃げ込めば安全という訳で、上級者の狩り場スポットの一つだ。

結界の外にパーティの陣を張り、近くの森の中からモンスター化した大カブトをファルが弓矢で釣る作戦だ。


「用意はいいかな?」

ファルの問いに盾役のアングラウスが答える。

「オッケーよ」

これが、このパーティの狩りの合図だ。


森から20メートルぐらい離れた所から矢を射るファル。

すると森の中から大カブトが一匹、ファルをめがけて走ってくる。

それをアングラウスの前にうまく誘導すると、

「スタンブレード!!」

アングラウスの剣スキルで大カブトの突進を止める。

ただ、硬い甲殻に覆われているのでダメージは通りにくい。

「バーニングブレード!!」

カズキの剣が魔法の力で炎に覆われ、大カブトに一撃を加える。

その間に、フィーが全員に「ヒーリング」と「リフレッシュ」をかけ回復役の仕事をこなしている。

「ライトニング!!」

攻撃の隙間を縫って、クロームの電撃魔法が大カブトに炸裂した。

その衝撃で大カブトが動きを止めた瞬間に、ファルとマサムネが狙いすまして甲殻の隙間に強力な一撃を加える。

すると、ヴォーとうなり声のような音が大カブトから発せられ、次の瞬間周りを囲んでいるパーティメンバーに衝撃波が浴びせられ、HP・MP共に削られていくのがわかる。


「ライトニング!!」

衝撃波で動けないパーティメンバーの間をすり抜けるように、クロームの二発目の魔法が炸裂する。

それでもまだ大カブトは倒れずに、今度はクロームの方に向かおうとする。

「シールドバッシュ!!」

すかさず、動けるようになったアングラウスの盾スキルで、大カブトの足を止める。

動きの止まった大カブトに、またファルとマサムネのコンビネーションアタックが炸裂する。

「止めはもらった。ファイアエクスプローション!!」

カズキが近距離から爆裂魔法を使い止めを刺すと、大カブトはひっくり返って動かなくなった。


「いつも、おいしい所を持っていくよなぁ」

アングラウスが笑顔を浮かべながらファル、マサムネ、カズキの前衛メンバーとハイタッチをする。

「早いもの勝ちだよ」

カズキがピースサインを出しながら後衛に控えているフィーとクロームにも手を振る。

「さてと、もう次行けるかな?」

全体のダメージが少ない事を確認してファルが言う。

「オッケーよ」

アングラウスがそう答え次の狩りが始まっていく。

これを夜10時過ぎまで、まったりこなしていくのが、ギルド”まったりマニー”の土曜日の過ごし方であった。



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