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Brave spirits  作者: あらと
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異世界への誘い

狩りも終わり神殿から城下町に戻り、戦利品の大カブトの角と甲皮の分配をしながらフィーが、

「今日もフィオナさんとサトマルさん、来なかったね」

と、呟く。

「確かにあの二人が、2回連続でそれも揃って休むのって珍しいね」

アングラウスが相づちを打つ。

「まあ、リアルで用事でもあったんじゃないのかな」

ファルが答える。


実際ギルドメンバーとは言え、所詮はゲーム内の事なので、リアルの用事を優先するのは仕方がない事だ。

でも、メッセージも残さないのは、あの二人には珍しい事だ。

カズキは、そう思ったが言わなかった。

言っても仕方のない事だ。


「じゃあ、今日はこれで解散だね。皆さんおやすみー」

ファルがそう言ってパーティを解散すると、

「おつかれー」

「またねー」

「おやすみー」

と、それぞれ一声かけて皆、去っていく。


カズキも

「おやすみー」

と皆に手を振って行きつけの道具屋へと向かう。

今日のパーティでの狩りの前に集めていた、大イノシシの牙を売りに行くためだ。


「こんばんはー」

カズキは勢いよく道具屋の扉を開ける。

「へい、ラッシャい」

少しいかつい顔の店主が出迎える。

もちろんNPCだ。


「おやっさん、この前言っていた大イノシシの牙を集めてきたよ」

カズキが、テーブル上に布袋を出しながら付け加える。

「1本1000ビルで買い取ってくれると言ってたよね?」

「まあ、物の状態次第だが」

と言って、店主は布袋から牙を取り出しながら1本づつ眺める。

「これは良いけど、こっちのはいまいちだなぁ」

店主は牙をランプの光に通したり、両手でつかんで強度を確かめたりしている。


おいおい、普通のRPGなら決まった値段で買い取るだろう。

カズキは、そう思いながらもこのゲームのAIの凄い所であり、商人という設定のこの店主の値踏み具合を少し恨めしく思った。

「牙の先が欠けているのは700ビル、ひびが入っているのは500ビルだな」

店主がそう言っても、カズキは食い下がる。

「1本1000ビルで言ってたよね」

「それはきれいな状態の物だけだよ。おまえさんの折り方が悪かったんだからあきらめな」

店主も後には引かない。

「そんな訳で、全部で13500ビルだな」

「20本も集めたのに、それじゃ少ないよ。せめて18000ビルにしてよ」

「だめだめ。相場は常に変わるものだし品質も大事にしなきゃ。不満なら買い取らないよ」

うーん、とカズキはうなる。

さすがに暇つぶしのソロ狩りとはいえ、2時間かけて13500ビルの稼ぎじゃ少ない。

「それじゃさあ、今日他に狩ってきた大カブトの角と甲皮、この店で売るからおまけしてよ」

「ほう、それは珍しいな。見せてみな」

本当は鍛冶ギルドで売りたかったが仕方ない。

大カブトの方は少し売値が下がるが、合計で上がればそれなりの儲けが出る。

「ふむ。角と甲皮は良い物だな。これなら50000ビルで買ってもいい。牙の方も16000ビルにしてやるよ」

店主が言う。

実際、角と甲皮は鍛冶ギルドでも50000ビル以上で売れるとは限らない。

「じゃあ、全部で66000ビルだね」

カズキが折れる形で商談は成立。

このゲームのNPCは個性がありすぎて、妙に憎めない。

もしかしたら商人は全員、関西人の設定なのかと思う。

「まいどありー」

店主の声を背に受けながらカズキは道具屋を出た。


「さてと、今日はそろそろ落ちるかな」

カズキは独り言のように呟いて、クリプトン王国で借りている宿屋に向かう。

屋外でもログアウトは出来るが一応、アイテムの補充や装備の確認もしたいので宿屋の個室部屋で整理をするのだ。


部屋に入ると机の上に封筒が置いてあった。

「あれ?珍しいな」

ゲーム内でのやりとりは、メッセージ機能を使う方が簡単だ。

普段、自分の部屋の机の上に置かれているのは、フレンドから送られてくるアイテムや素材のプレゼントだ。

それが今回は封筒である。

一応、差出人を確認する。

「むっ?」

カズキの顔が少しこわばる。

差出人はフィオナなのだ。


「おかしい……」

夕方にログインしたときは、机の上には何も無かったはずだ。

と言う事は、夕方から今の間にログインして送るしかない。

しかしフィオナなら、今日がギルドの狩り日だという事を忘れてる訳がなく、メッセージも残さず封筒だけ送ってログアウトするだろうか?

不振な点は残るが、とりあえず封筒を開けてみると一枚のカードが入っていた。

「巫女姫の召還状?」

カズキは呟く。

今まで見た事の無いマジックカードだ。


とりあえず今日パーティを組んだギルドメンバーにメッセージを送ってみる。

10分ほど待ってみたが誰からも返事がない。

「そりゃ夜の11時すぎてれば、特に用事がなきゃみんな落ちちゃうよな」

カズキはカードを見つめながら、ぽつりと呟く。

「どうしたものかねぇ」

そして夜は更けて行くのであった。





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