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第110話≡理不尽ってこういうことを言うんだね

「お前!!いきなりなんなんだ!!無茶苦茶いてぇじゃねぇか!!」

「まあまあ、一回冷静になれって」


音もたてずに俺は二人の間に飛び込んだ。


「だ、誰?」

「ちょっとした冒険者だよ」


そう言って狼男の方を向いた。


えーと、子供目線で色々としないとだから…


「おのれ悪党。子供に手を出すとは許せない。成敗してくれる」

「誰が悪党だ!!俺は何もしちゃいねぇ」


正論すぎてヤバい。


「い、行くぞ」


俺は片手に水の刃を作って狼男に迫った。


「冒険者風情がなめんな!!」


ギンッ


「人の前ではあんたと話ができない」

「な!?てめぇ!!」


狼男の爪と競り合った時にこっそりと言うと視線を女の子の方に向けてくれた。


「どこを見ている。行くぞ」

「くっ、どういうことだ」


俺は水の刃で狼男を切りつけながらガラスを全部抜いてあげた。


「お前どういう」

「あまり派手に動かないで、取りづらい」

「す、すまん」


ガキンッ!!ガキンッ!!


「どういうつもりだ」

「怪我も治して逃がしたい。 協力しろ下さい」


俺は狼男に押されるような形で距離を取った。


「くっ、なかなか強い。

君、立てるかい?」

「え、あの、えーと」

「君を庇いながらは勝てない。頑張って立ってみてくれ」


なんだろう。ヒーローショウしてる気分。


「冒険者ー」

「よそ見をしてるすきに、卑怯な」


狼さん、叫び方が棒読みになってきてますよ。


俺は切りつけかわしながらも狼男の傷口に回復魔法をうって怪我をなくした。


「これから指示するところに動いてください」

「…わかった」


とりあえずミーティング終了。


「これで最後だ!!」

「な、何!?」


狼男を切りつけた刃から赤い液体が噴出。

狼男を斬るように見えるはず。


「く、くそ。こんなんで」


狼男が地面に手を着いた。

今だ!!


俺は土魔法と風魔法を使って砂を巻き上げ狼男の姿を隠した。


「ちっ、逃げるな!!」


俺はそんな事を言うと同時に砂の中に入り狼男に耳打ち。


「これを持って後ろの茂みに大きくジャンプして下さい。

後は隠れる感じで」

「わ、わかった」


狼男は石を握ると大きく後ろにジャンプ。

タイミングを合わせて赤い水で尾を引かせれば…

ほら、パッと見撃退。


「ちっ、逃げられたか。

大丈夫か?」

「……う、うん」

「それならよかった。

ちょっと待ってね」


女の子に清浄の魔法を使って綺麗にしてから手を差し出してあげた。


「立てる?」

「ち、力が」

「腰が抜けちゃったんだね。

よいしょ」


持つ分にはやっぱりお姫様だっこの方が楽だな。

やっぱり子供って事もあって軽いな。


「わわわ」

「今から村に戻るけど、どうしてこんな時間に森の中に?」

「それは…あれが」


女の子が指差した先には蕾を着けた植物があった。


「あれは?」

「月の花っていって月の光で育つ花。

ここにしか咲いてないから…」

「そうか。あの花を持っていかないの?」

「だってまだ蕾だし…」


…そういえばここの村には鉢植えなんて1個もなかったな。

花瓶はあったけど。


俺はしゃがんで土に手を着けて土魔法で鉢植えを1つ作った。


「これがあれば家でもあの花を育てられるよ」

「本当に?」

「ああ。ちょっと待ってね」


鉢植えの中に土魔法を使って土を移動。

そのあと自然魔法を使って月の花を鉢植えに動かして…完璧。


「ほら、君が持って」

「わぁ、ありがとう」

「どういたしまして。

それじゃ急いで帰るから舌を噛まないようにね」


俺は転ばないようにそしてバレないように風魔法で空気を蹴りながら凄い速度で森を駆け抜けた。


やけに女の子が俺の顔を見ていたが視線が合うと照れたように視線を外すのがやけに可愛かった。


「さて、着いたよ。

両親にバレないうちに帰りなさい」

「うん。ありがとう冒険者さん」


女の子はそう言って宿屋に入っていった。


「…宿屋!?

宿屋の子だったのか」

「…あの人、結婚してた。意外」

「こらこら、失礼だぞ。

あの女将さん、結構いい人らしいんだからな」


なんて言って鳴の頭をぽんぽんとした。


「…鳴さん?どうしてここに?」

「…にぃの匂いしなくなった。

だから来た」

「匂いってそんなのでわかるの?」

「…ん。朱音も気づいて起きてた」


この子たちは匂いで俺の事を認識してるのか?


「…にぃ、眠い。

帰って枕になる」

「枕になることは変わらないのね」

「…もち」


だけど枕になる前にもう1仕事残ってるんだよね。


「先に帰ってて。

ちょっと残業」

「…残業なら仕方ない。

早めに帰ってきて」

「ありがとう。別に俺を待ってなくて「起きてるから早く」…はい」


俺は二人の安眠のために空を飛んで狼男のところに向かった。


「よっと、お待たせ」

「お、おう」


狼男、律儀に待ってくれてるとは思わんかった。


「それで確か…迷子だっけ?」

「な、なんでそれを。

てか、お前どうして俺の言葉が」

「それは説明してると長いから不思議生物とでも思ってくれ」


説明してると多分、夜が明ける。そうなると俺は鳴や朱音に怒られる。すごく困る。


「とりあえず、森はこっち…えーと、石を貸してくれ」

「あ、ああ。これか?」


えーと、北が…わからん。

よし、太陽の昇る方にしよう。


「この石を乗っけると太陽の昇る方に向くから頑張って。

森は昇る方にまっすぐいけば抜けるはずだから」

「お、おう。助かるぜ。

…なんで俺を助けて」

「質問はなしの方向で。

そんじゃわしは帰る」


そうしないと明日俺は起こられてしまう。


「な、名前だけでも。

名前だけでも教えてくれ」

「本当に気にしなくていいから。

そんじゃいい夢を」


そういうと俺はとっとと村に帰るべく空気を蹴った。


「い、いつか絶対に恩を返させてもらうからなぁ!!」


多分会わないから大丈夫だって。


俺が村に戻ると俺の泊まっている部屋の窓が空いていた。


…普通に怖いな。あそこに帰るの。


「た、ただいまぁ」

「…ん。お帰り」

「お帰り、お兄ちゃん。

ささ、早く寝よう」


…明日の朝がわりと怖いです。


俺は闇魔法を使ってデコイに潜り、デコイを解いた。


「それじゃ、お休みね。お兄ちゃん」

「……すみ」


いつもよりも二人とも抱きつく力が強くありませんか?


「ふふふ、心配させた罰だよ」


朱音はさらに耳をペロペロとなめてきた。


「お休みお兄ちゃん」


ちゅ


…どうしよう。また眠れなくなってしまったかもしれん。


それと鳴お腹に潜り込むのはやめなさい。

くすぐったいから、色々と当たってるから、眠れなくなるから。





バサッ


「ほら、起きてください」

「お、起きてないよ」

「だから、起こしてるんですが…」


しまった、寝ぼけて変な事を言ってしまった。


「朝御飯もできてるみたいですからシャキッとしないと」

「すまんすまん。どうも朝は起きれなくて…」


結局、ブーメランしてしまった。

なんでだろうな。朝だけは本当に起きれない。


「ご飯もできてるみたいですからいきますよ」

「おk。

てか、この子たちはどうして」


布団を剥がれた俺にコアラのように3人が抱きついていた。


「起きてるのに抱きついてるんだ?」

「…バレた」

「バレないと思ってたの!?」


どうしてだろうな。

たまにこの子たちは頭のネジが緩みまくる時があるんだよな。


「ほら、早くご飯を食べにいくよ」

「お兄ちゃん、おはようのちゅー」

「いつもやってるみたいな雰囲気をだすな」


朝からキスとか難易度高すぎませんか?


「昨日の事を」

「これで許してくれ」


昨日の事を二人にバラされるのはもっとまずいので今のうちにほっぺにキスをしておいた。


あー、もう。恥ずかしいったらありゃしない。


「…にぃ私にも」

「はいよ」

「…深いの」

「ほっぺにしてくれ。頼むから」


朱音と同じくほっぺにキスをしていると、なにやら視線が…


「ずるいのじゃ!!わらわにもちゅーを所望じゃ!!」

「そうです!!ここは平等にですね」

「これ以上は俺のメンタルが持たないので止めてください!!」


現状で|顔面クリムガン<赤面>なのに俺の心臓に負担をかけるのは止めてください。


「ほら、とっとと下に降りるよ」

『はーい』


たくもう、朝からこんなことするから時間がなくなるってのに…


「待ってたよ、あんたたち」

「あ、おはようございます。女将さん」


…なんだろう。女将さんがいるのはいいんだが雰囲気が違う。

それに…


ざわざわ…ざわざわ…


なんか店の外にも人が結構いるな。


「村長から話があるみたいだよ」

「えーと、はい?村長から?」

「そうだよ。村長お願いします」


…どうしたんだ?なんかやらかしたっけか?

あ、昨日助けた女の子が涙目で見てくる。

…嫌な予感がするんだが。


「すまないがあんたたちにはこれからこの村を出ていってもらう」

「…なんでまた急に」

「昨夜、狼の魔物が近くに来たそうじゃないか。

偶然かもしれんが君たちが来てからだ。

これ以上、この村に危険因子をおいとくわけにはいかない」


…なんというか酷い言い分だな。


「君たちが直接的な原因でなくても村民達で決めたことだ。

ここに、数日分の食料やナイフ等が入っている。

人数分とはいかないがこれを持って村を出ていってくれ」


…出ていかせる準備は整ってるって事ね。


「ちょ、ちょっと待つのじゃ!!なぜわらわたちが」

「神楽、これは村で決めたことだ。俺たちがいつまでもここにいるわけにはいかないだろ?」「それはそうじゃが、納得がいかぬ」


うん、神楽のいいたいことも理解できる。


「遅かれ早かれこうなるみたいだし、大丈夫だろ」

「それはそうじゃが…」

「後で文句は聞いてやるから」


って言ってもわりと俺もショック受けてるしな。

なんとか落ち着いた対応しないと話が進まない。


「さて、皆。朝飯はここじゃ食えないみたいだし次の村を探してみるか」

「そうですね。ここで時間をかけるよりも進んだ方がいいですね」


よかった水奈は落ち着いていてくれた。

本当、こういうときに助かる。


俺達は催促をされながらもこの村を出ていくため荷物をまとめた。


「冒険者のお兄ちゃん…」

「ん?どうした?」

「……ごめんなさい。

私がお母さんたちにあんな事言わなければ」


あー、結局問い詰められてのパターンか。


「これは仕方ないさ。

君も風邪引かないように暮らすんだぞ」


女の子の頭をぽんぽんと撫でるとリュックの口をキュっと結び、背負った。


「さて。皆、行こうか」


皆を見てみると全員身仕度が終わり、俺待ちだったようだ。


あ、そういえば皆さん荷物は私の影の中でしたね。

なにこれ恥ずかしい。


「とりあえず、足が痛くなることは覚悟だな」

「お兄ちゃんは筋力がないもんね」

「走り込みはしてるのにな」


そんな事を話ながら俺達は最初の村を後にした。

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