第106話≡初めてのクエスト
あるぇ…この話でもうちょい進むはずだったんだけども…
説明が多すぎるのかもしれないですね。
もうちょっと説明を減らした方がいいのかな…
この村を出るのはもうちょっとかかるかもしれません。
のんびりと温かい目で見てくれると助かります
ベキベキベキ・・・
「これが最後っと」
「くぁー、やっぱ魔法ってのは楽だべな。
困ってたもんをぱぱっとだなんてたまげたぁ」
俺は道具屋さんに着くと店主――カッレさんに話をつけて裏庭に案内をしてもらった。
するとそこには雑草が生い茂り、大きな木の幹が何個かあって普通に掘り出すには骨が折れそうだった。
そこで俺は魔法使いということにしておいて、ちゃっかり自然魔法を使いながら木の幹を腐らせて土の栄養にしておいた。
ついでにいうとカッレさんは割とおじいちゃんで背中が結構曲がってて見てて心配になるレベルだ。
「うーむ、やっぱりこっちだと威力がなくなるんだな・・・」
どうやってもあっちで魔法使うよりも威力は下がっちゃうんだな。
まぁ、その文コントロールはむちゃくそ簡単だけど。
「ん?どうかしただべか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。
それよりここの土地って何かに使ったりするんですか?」
「あー、そこさ畑作って野菜さ作っろうかと思ってんだべ。
何ぶん、こんな辺境さ来るもの好きさおらんべ」
ふむ、こんな割と広い土地をご老体に鞭打って畑を作らせるにはいかないっしょ。
「畑ってどこからどこら辺までやるんですか?」
「えーっと、ここからそこら辺までだべ」
割と大きく作るつもりなんだな・・・
さて、少しサービスでもしてやりますか。
「ちょっといいですか」
「ん?なんだべ?」
カッレさんの位置もおk。
畑の作る位置もおk。
魔力もだいじょーぶ。
うし、やりますか。
俺は、土魔法と自然魔法を組み合わせて日本の田舎にありそうな畑を作ってみた。
「や、やってくれたのは嬉しいけど、おらさそこまで懐は厚くねぇべさ」
「あ、これはサービスみたいなものなので報酬どうりで大丈夫ですよ」
「ほんとだべ?ありがてぇの」
これは俺が魔法がちゃんと動くか確かめるための実験的なところもあったしな。
感謝されるのは色々と違う気がするんだよな。
「あ、この畑、俺の好みで耕したので後は自分流に改良してくださいね」
「助かったべぇ。ちょっと待ってくんろ」
さてと、後は報酬を貰うだけだな。
この次は、皆に手伝ってもらって薬草でも摘みに行こうかな?
ついでに女性陣はカッレさんの奥さんと色々と話をしていて割と盛り上がっているご様子。
「ほい、これが今回の報酬だべ」
「あ。ありがとうございます」
「あとこれも」
そう言って渡されたのは報酬の銅貨と、リンゴのような木の実を5個も渡された。
「えーとこれは?」
「なーに、ちょっとしたお礼だべ。
あそこのべっぴんさん達と一緒に食べな」
「ありがとうございます」
うん、やっぱりどこの田舎でもだけど。
田舎の人たちは心が優しい人が多いな。
「それにしても本当に助かったべ。
あんがとう」
「仕事ですからお礼とかは大丈夫ですよ」
「お礼は人としての礼儀だべ。
こればっかりは怠ってはいけねぇべ」
うん。なんか重みが違うね。
重量というか言葉の深み的な?
「そうですね」
「・・・おめぇは尚更面白いなぁ。
今時、じじいの小言なんて聞き流されるもんだべな」
「カッレさんの言うことに重みを感じてしまって。
なんか納得してしまって」
「ははは、珍しい少年だべ。
ほら、皆お前さん待ちみたいだべ」
カッレさんが見てる方向を見ると朱音が手を振っていた。
「そうみたいですね。
ではこれで」
「がんばるんだべ」
俺は一礼してから皆と合流した。
「兄上、きっちりと稼いできたかの?」
「うわ、この歳でそれを言われるようになるとは思わなかったよ」
「稼ぎ頭じゃからな。兄上には頑張って欲しいんじゃ」
うむ、将来ヒモ志望としては頑張りたくないとことだけど・・・
「今回ばっかりはがんばるか」
「うむその粋じゃ」
ふう、とりあえずひと仕事終えたし、また酒場にでも戻るか。
「それでクー君。宿屋はいくらでした?」
「あ」
「・・・クー君?」
「すいません。忘れてました」
うぅ、カッレさんと話をするのが楽しすぎてすっかり忘れてた。
「次こそ。次こそは」
「はぁ。仕方ありませんね」
なんでだろう。最近水奈が俺を見る目が出来の悪い弟をみるような目なんだが・・・
まぁいいか、次のクエストでも目指すか。
俺たちはお金を目指して酒場に向かった。
「可能性は高め。やってみる価値はありね」
俺たちを窓越しに見ている誰かの目には気付くことは出来なかった。
「早いなお前ら」
「まぁ、ちゃっちゃか終わらせましたから」
正直、人力だときついけど魔術を使えばそこまでじゃないんだよな。
ほんと魔術って便利だよな。
「来たってことはクエストか?」
「はい、薬草のクエストがあった気がするので寄らせて貰いまいした」
「あぁ、これだな。
薬草の生えてる場所は森の方だから魔物には注意しろよ。
薬草は冒険者なら分かるだろうから説明は省くぞ」
・・・あれ?おれ薬草なんてわからないんだが。
どないしよ。
「納品場所は村の薬屋だから。
あと、夜までここ閉めるから今日は終わりだからな」
えーっと、なんか店主さんがとっとと奥に消えてしまったんですが・・・
「どうやら、今日最後のクエストになってしまったみたいですね」
「みたいだね」
「あ。でも、薬草の量によって値段が変わるみたいですよ」
あー、そうなると。一日使って薬草探したがしたほうがいいな。
「そしてクー君忘れてません?」
「いやいや、あれは無理でしょ」
「・・・はぁ、確かにあれは仕方ないですね」
なんというか、話すら聞けてもらえそうに無かったし。
お、俺は悪くねぇ!!
「とりあえず、とっとと薬草を採取して寝床を確保しますか。
皆、協力してくれよ?」
「もちろん」「当たり前です」「腕がなるの」「・・・頑張る」
おぉ、皆の心が一つになった。
これでこのクエストは楽勝だな。
俺たちは宿屋を借りるために薬草を見つけに近くの森を目指した。
「どうしよう、心折れそう」
「早すぎやせんか!?」
そもそもだった。
なにも知らないのに探そうとした俺がバカだった。
「クー君、こっちが薬草でこっちが毒持ちの草です」
「・・・どうやって見分けるの?」
目の前には毒々しい色をした草が2束。
うん、全然区別がつかない。
「えーっと、たぶん持ってみればわかるかと」
「ん?持ってみれば?
・・・なるほどな。ムズくないですか、これ?」
毒持ちと言われてる草は土の魔力?的なのが流れていた。
対して薬草は水の魔力?的なのが流れていた。
「はいはい、これで見分けるのね。
でもこれって魔法使いじゃないと見分けつかなくない?」
「そうでもないんです。
薬草は日向に。毒持ち・・・毒草と言うんですがこれは日陰に育つんですよ」
あー、つまり日向を探し回ればいいんだな。
「あ、でも。毒草ってたまーにだけど日向にも生えるんだよね」
「うわー、めんどくせぇ。
どれくらいの頻度で生えてるの?」
「うーん、わかんない」
・・・比率とかあれば結構楽なのにな。
「私たちは鼻が聞くから匂いでわかっちゃうんだもん」
「なんて便利な・・・」
「・・・5回に1回って聞いたことある」
「ん?鳴知ってるのか?」
鳴が知ってるって割と意外だったりする俺がいるんだが。
「・・・旅をしてた時言ってた。
それで何も知らないで食べちゃう冒険者がいるんだって」
「なるほどな。5回に1回なら割と期待ができるな」
俺は鳴の頭を撫でながら周りを見渡した。
「んじゃ、各自あんまり遠いとこまで行かない程度に散策をお願い。・・・ってあれじゃん。俺しか皆の位置がわかんないじゃん」
えーと、石でいいか。
俺は近くの石に魔術をかけて方位磁石的な物に変えてみた。
「ほい、皆これを持って散策してね」
「なにこれ?」
「方位磁石みたいなのを作ってみた。
魔力を流すとこの場所を示すように細工してあるから迷子にはならないと思うよ」
「ありがとうございます。
後、この世界ではマナと言わないと怪しまれてしまいますよ」
あぁ、確かにそう言うのに気を付けないとよくある面倒事に巻き込まれるかもしれないしな。
「おk、気をつける。
さて、んじゃとりあえず10個くらい草を見つけたらここに集合ってことで。お願いね」
皆は俺の言ったことに頷いてくれた。
「あ、武器ってどうしよう」
「クー君からもらった武器は全部影にしまってますよ」
あ、そんな事してたんだ。
なら安心だな。
正直、今はあんまり武器を使いたくないんだよな。
また暴走されても困るし。
水奈は俺が色々と考えてる間に影に潜り込み全員分の武器を取り出した。
「んじゃ、よろしくねー」
俺は一通り確認すると森の中に入った。
んで、確か水のまりょ・・・マナがうんたらかんたらなんだろ?
なら、水のマナだけを・・・お、発見。
俺は水のマナだけを探してみると割と日向に生えていてくれた。
これなら簡単に10個くらい集められそうだな。
それからわずか数分で10個ほど薬草の束を見つけることができほくほく顔で帰ったがまだ誰も帰ってきてはいなかった。
「うん。流石にまだ皆帰ってこないよな・・・
うし、もうちょい探してみるか」
目安は・・・10分!!
俺はまた森に戻って薬草を探して、気がついたら空があかね色に染まっていた。
「さて、全員揃ったかな?
合計は・・・なんかむっちゃもっさりとしてるね」
この量はかぞえたくない。
こういうめんどいのは業者さんに任せてしまおう。
「んじゃ、皆。運ぶの手伝って。
流石に一人じゃつらい。ってか張り切りすぎだろ!!」
皆、なぜか俺が出した10束をかなりオーバーして持ってきた。
そして皆が褒めて褒めてオーラが凄まじかった。
朱音に関しては尻尾がブンブンとふられていた。
結局、夜に皆をマッサージするってことで話がまとめられてしまった。俺、会話に参加してないのにな・・・
「てか時間的に間に合うかが不安だな。
急ごうか」
俺たちは急いで村に戻って薬屋に顔を出した。
「すいませーん。
誰かいますか?」
「あー、はいはい。
今行きますよー。って冒険者さんかい」
店の奥から顔を出したのは30代半ばくらいで細身のおばさんだった。
あれ、俺の知らないとこでなんか有名になってね?
「薬草をいっぱい採ってきたので鑑定してもらいたいのですが」
「酒場から話は通ってるよ。
っていっぱい?」
外に顔を出したおばさんは驚きの表情を隠せないでいた。
「あ、これは全部薬草で毒草ではないことは確認してますよ」
「こ、これはすごい量だね。
3ヶ月は薬草を採らなくて済みそうだね」
おばさんは店の奥に行くとロープのような物を地面に置いた。
そしてその輪っかの中に薬草を置くように言うと何かブツブツとつぶやき始めた。
・・・へぇ、こっちの魔術は初めてだな。
あ、魔術じゃなくて魔法だっけ。
気を付けないとまた水奈に怒られるな。
「ほい、確認終わり。
んじゃちょっと待ってな」
しばらくすると、おばちゃんは判子を持ってやってきた。
「さっさと、契約書をみせな」
「あ、はい」
おばさんは契約書を壁につけてポンッと判子を押してくれた。
「あとこれが今回の報酬だよ」
ジャラリと受け取ったのは小さな金貨1枚と銀貨2枚、銅貨を数枚もらった。
「あ、そうだ。
宿ってここじゃ一人いくらですか?」
「えーっと、確か一人一泊銀貨1枚。大人数だと追加でもう1枚だった気がするよ」
となるとこれだけあれば足りるな。
「ありがとうございます」
「気にすんな。あんたも気をつけるんだよ」
おばさんはそう言うと店の奥に行ってしまった。
さてさて、ではとっとと宿屋にむかってゆっくり休むとしますか。
「あの子が話にあった子ねぇ」
薬屋のおばさんは窓から冒険者を確認すると多少警戒の視線を向けた。
「はぁ、今はまだ何もないようだけど・・・」
そしてふと昼間の事を思い出した。
「あんな事は普通の冒険者じゃできるわけもないし・・・
やっぱり勇者かね」
その声は誰にも聞こえず部屋にそっと消えた。