第104≡異世界の目覚めは激痛に
ドサッ
「ぐぽっ」
意識を失いかけたが頭から落ちればそりゃぁ、目覚めるよね。
てか、首痛!!
って、ちょ、なにこれ!?腕が動かな・・・腕だけじゃなくて体の自由が・・・
「お兄ちゃん!!」「クー君!!」
「近づくな!!ぐぉ…戦闘態勢で待っててくれ」
てか、今の俺ってどんな事になってんの?
・・・異世界に落ちた時って何もない草原とかがセオリーだけど今回は湖近くなのね。
俺はなんとか這いずって近くの湖に顔をのぞかせると、顔半分が龍化していた
意識を失うことはないけど、なにこれ・・・
ヴァレリさん、説明求む!!
『すまん、パーツが近くなったから理性が暴れているようじゃ』
パーツが近い?
一体どういう事なんだ?
『世界が変わったからの。
距離が近くなったと同時に気配も強くなったんじゃ』
それのせいでこんなことになってんの?
『ちょっと、待っておれ。これくらいならわしがすぐになんとかする』
頼みます。
うげ、腕に刺さってむちゃくちゃ痛い。
「顔に刺さらないところだけは良心的だけど…痛っ」
「大丈夫ですか!?」
「意識は失わないから大丈夫だ」
ただ、無茶苦茶腕が痛い。
「水奈、落ち着いたら手当を頼んでもいいかな?」
「もちろんです」
それにしても・・・・・・くそぉ、あのワン公のせいで腕は痛いし、首もグキッたし、なんかあいつらはいないし・・・
次会ったとき覚えてろよ。毛の一本も残さず消し飛ばしてやる。
カタカタカタ・・・
ん?なんか急に腕が震えだしたぞ?
なにこれ、怖い・・・
『お主、“理性”に酷いトラウマを植え付けてたみたいじゃの』
え?俺がなにかしました?
『むしろ、あれだけの事をしてこっちに聞けるのもあれかと思うがの』
・・・あー、確かにあれは答えるよな。
あそこまで俺の能力を総動員したのもひさしぶりな気がするし。
そんなことを思ってると腕や顔からポロポロと短剣が剥がれ落ちていった。
・・・腕は血まみれだけどね。
『まぁ、これで当分は大丈夫のはずじゃが、できるだけ早く頼んだぞ』
あいすー、頑張ってみます。
まぁ、近くにあればだけどさ。
・・・よし、フラグは立たせた。
「クー君。今、手当しますからね」
「頼ん・・・・・・だ?」
ん?おかしいな。
“理性”のせいでなんかおかしくなったか?
「・・・どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、なんか。
…朱音の耳と尻尾が」
なんでかわからんが、朱音に犬のような耳や尻尾が生えてる。
なにこれモフりた…い!?
「…水奈、もうちょっとやさしく頼めないかな」
「今すぐ終わりますからもうちょっとお待ちくださいね」
なぜだろう。水奈がいい笑顔なのに目が笑ってない。
「…兄、大丈夫?」
「ありがとう、鳴。
だけど、首を舐めるのはやめてもらっていいかな?
さっきから、腕が治る気配がないんだ」
「…水奈、まじめにやる」
「あなたたちが邪魔す…なるほど」
ん?水奈さん、何をしてる!?
なんで俺の腕を舐めてらっしゃるの!?
「こ、こうしないと治らないくらいに酷いけがで」
「嘘つけ!!」
「ずるい!!私も混じる!!」
「童だけのけものなんていやなのじゃ!!」
「ちょ、まっ!?ごふっ」
おかしいよな。
ついさっきまでわりとシリアスな展開だったんだぞ。
「はぁ、落ち着いたか皆?」
『はーい』
たくもう、さすがに皆の動きを止めるのは色々ときついとこがあるんだからな。
多少自重してくれると助かるんだけどな…
「さて、朱音」
「はい!?」
「こっちにきんさい」
いきなり呼ばれた朱音は恐々とこっちに来てぺたんと座った。
「ひゃう!?」
「で、これはなんぞ?」
俺は朱音から生えてる耳を思いっきりいじりながら尋ねた。
「クー君、こっちの世界とあっちの世界のマナは違うって説明はしましたね?」
「ああ、あれね。確か、地球のほうは強力だけど扱いが難しいんだっけ?」
「ぁ、あふっ…んん…」
それのせいで憑き物とか魔物とかってめんどくさいくくりができてた気がする。
あ、尻尾のほうもモフっとこ。
「きゃ!?お、お兄ぃちゃん、そ、そこはぁ…」
「そ、それでですね。
私たちはこちらのマナ・・・・・・呼び方では“魔力”をとってしまうと半獣化してしまうこともできるんです。
まぁ、例としてはこの子とかですね」
へぇ、そんな面白いことになるのか。
「んちょっとまて、それってもう朱音は狼の姿にはなれないのか?」
「狼のような完全な獣の姿になることもできるのですが、一般の魔物がそれをすると自我が保てなくなり暴れだしてしまうんです」
「あー、マナの方を使うからか?」
俺の言ったことに水奈は首を縦に降った。
「こっちには“魔力”だけじゃなくて“マナ”の二つがあるのか」
「地球の方にも一応2種類ありますけど、一般的ではありませんね。
こちらの方では魔物の巣窟や、戦争の跡地などに“マナ”が貯まりやすく、魔物も活発に動いていますね」
「あぅ・・・お兄ちゃんもっと、ゃ、優しくぅ・・・」
「へぇ、そういう仕組みなのか・・・」
つまり、あっちと同じように“マナ”を還元してやれば普通の状態に戻すこともできるんだな。
そこそこには戦いやすそうだ。
「く、クー君そろそろ朱音が危ない状況なので開放してあげてください」
「っち、ばれたか。ま、これからも弄り回すつもりだしな」
「///」
さて、とりあえずは水奈に質問して情報をもらうか。
「しっつもーん。
RPGでありがちなギルドとかってのはあるの?」
「人間のギルドにはいくつかの種類のギルドがあるみたいですね。
傭兵ギルド、冒険者ギルド、商人ギルド等が有名どころですね」
「おお、本当に異世界っぽくなってきたな」
おら、わくわくしてきたぞ!!
「んじゃ、次。
この世界にはいくつの種族があるんだ?」
「それは山のようにいますね。
私たちはウンディーネ種ですし、朱音は人狼族、神楽は妖族、鳴は神獣族と言われるはずです」
「おぉ・・・・・・ヒューマンとか魔族とかっていう大きなカテゴリはないのね」
うん、覚えようとかってめんどくさいことはやめよう。
「でも、この世界に一番多い種族は人間ですね。
そして魔族というのは人間の人たちが言っていた気がしますね」
「あー、なるほど。
結局のところそういう文化の違いは改めて調べる必要があるみたいだな」
・・・この世界を冒険するとなると人間の国にもいかないとな。
あいつらも探してやらないとな。・・・そこらへんに落ちたりしてないかな。
「とりあえずは人間の国を目指す感じかな。
あの禍々しいとこにはいきたくないし」
だってあっちの山の方の雲、なんか紫色なんだよ。
流石にしょっぱなからボス戦とか勘弁だし。
『まぁ、待て。
あっちの方に友人がおるんじゃ。行ってもらわないと困るぞ』
・・・えー、なんであんな目に見えるイベントを踏み抜かないといけないんだ。
「・・・っつても体とか休めたいし。
でどこに行けばいいんどろうな・・・」
ここら辺の地理はわかんないし。
飛んでそこら辺を見るの手っ取り早いんじゃないか?
「それよりも」
「ん?
どうした水奈」
水奈はビシッと朱音を指差した。
「クー君はああいうのが好みなんですか!?」
「ああいうのって獣耳とか?」
「そうです!!」
「・・・にいのベットの下にあった本にも多かった」
「な!?」「やっぱり!!」
「そういえばモンスターものも多かった気がするの」
・・・やっぱりあの家に俺のプライバシーなんてないんや。
「クー君ちょっと待ってってください!!」
そう言うと水奈は近くにある湖に飛び込んだ。
しっかりとパンツを脱いでからいくのな。
一瞬、見え・・・ってなったぞ。
バシャン!!
「どうですか、クー君!!」
・・・水面から勢いよく飛び出し、朝日を浴びる水滴、人影。
そう、まるで神話の人魚のように美・・・てか人魚だった。
水奈は水面を何度か飛んでから淵に肘をついて、こっちに笑顔を向けてきた。
「クー君!!どうですか?」
「うん、服が張り付いて直視しづらいね」
「もーう、他にないんですか?」
「・・・風邪ひくかもしんないから早くあがってこい」
お兄さんには色々と目に毒なのです。
クイクイ
「ん?どうし・・・ブッ」
「ひとの姿を見た瞬間、その反応は酷いと思うんじゃよ」
「・・・にい、鬼畜」
「そこまで言われる!?」
目の前には下半身が蛇のようになった神楽と
ケンタウロスのようになっている鳴がいた。
「いや、だってこう、インパクトが強すぎるんだよ」
「「??」」
「とりあえず、二人は人前であの姿はダメな。
お兄さんとの、約束だぞ」
ま、新鮮で結構・・・
いや、やめとこう。
「さて、ふざけるのはここら辺にして、ちょっと国的なもの探してくる」
「あ、クー君。ここら辺だと村しかないと思うのであまり変な期待はしない方が良いかと。
それとできれば火を用意してくれると助かります」
うん、なぜ湖に入ったのか。
ま、乾かすくらいならなんとか。
「ほい、乾かすならすぐやるから」
俺は火の魔力を風の魔術に乗せて乾かそうとした。
そう、風の魔術を使ってしまった。
「え?ちょ、クー君!?」
「・・・その、うん。ごめん」
そう、俺は・・・
「見ました?」
「・・・・・・・・・見てますん」
まだ、パンツを履いてない水奈を風で乾かした。
そして水奈はワンピースであった。つまりは…そういう事である。
「もうお嫁にいけません!!クー君もらってください」
『!?その方法があったか』
「何とも言なくるような事をいうな!!
そして皆おもむろにパンツを脱ごうとするな!!」
はぁ、結局近くの地形はわかんなかったな。
俺達は一体どこを目指せばいいんだ。