第101話≡精神と…和風の部屋?
side朱音
どうしたんだろう?
なんかお兄ちゃんの様子がおかしい?
「…き…な…っぃ……ゎ…」
「お兄ちゃん?」
お兄ちゃんがフラフラと赤い石に近づいて触れるとそれはいきなり起こった。
「お兄ちゃん!!」「クー君!!」「兄上!!」
お兄ちゃんの体から血と大量のマナが溢れ出すと、その血は固まり始め卵のようになり空中に浮いてた。
「…何が起きてるんですか」
水奈のつぶやきには誰も答えれなかった。
だって一体何が起きてるのか私自身全然わかってない。
だって…
「…なんなの、あの卵」
部屋の皆が呆気に取られている中クククッと笑う声だけが聞こえた。
「あははははは!!成功だ!!
やはり、私の研究は間違っていなかった!!」
研究?成功?
あの残念な人は何か知ってるの?
「私たちのお兄ちゃんに何をしたの!!」
「くはは。何、ただ私の崇高な実験の運のいい被験者になっただけだ。
あー、君たちもなんて運がいいんだろうな」
ピキッ
すると、タイミングよくお兄ちゃんの入っている卵にヒビが入った。
「さあ、皆。人類初の現場によくぞ居合わせてくれた。
これが私の研究成果。そう!!」
ドサッ
卵の殻から産み落とされたのは全身が赤黒く光り、尻尾のある生物だった。
「“龍”の誕生だ…」
“龍”と言われた生物は目を赤く光らせると前足を浮かせて口を開いた。
「GYAAAAAAAAAAAAA!!」
“龍”の声にその場に居た全員が脚を竦ませまるで地面に縫い付けられたかのように動かなくなった。
「ククク、アハハハハハ!!
これでこそ伝説の生物だ!!この力こそ私が追い求めていた力だ!!」
“龍”は高笑いして近づいてくる博士に向かってゆっくりと4足で歩みよって行った。
「ほう。飼い慣らすのは難しいと思っていたがそんなことは」
ズシュッ
“龍”の腕の鱗のような短剣は突如、自分に向かい切り刻み血が舞った。
腕は人だった。
てことはやっぱりあの龍の正体はお兄ちゃん?
「ん?こいつは一体」
“龍”が右腕を振り下ろすと血液が腕にまとわりつきブレードのようなモノになった。
スッ
“龍”が腕を振り下ろしただけで博士もろとも天井、床、壁とその直線ににあったモノ全てを切り裂いた。
「GYUOOOOOOOOOOOO!!」
“龍”は博士の死体を口で加えるとポイッと壁に向かって投げつけた。
あ、これはまずい。
私の直感が危険信号をバンバンと出している。
“龍”の尻尾に光が集まりアックスのような形の斧に変化した。
「「皆伏せて!!」」
私は急いでかまいたちに体当たりして組み伏せた。
となりでは一緒に叫んだ鳴が姉の方を組み伏せ、私たち皆は地面に伏せることに成功した。
ブゥン…
“龍”は軽く尻尾を振るうと博士はもちろん棒立ちしていた研究者すらも千切りにしていた。
壁にはもちろん幾度となく斬られたような跡が残っていた。
ん?今度は何をするつもりなの?
“龍”は右腕を仰いで天井を裂くと上を見続けた。
「GUOOOO……」
すると、切り裂いた研究員から血液が集まり“龍”はそれを飲み始めた。
それと同時に死体はカラカラに乾燥し始めミイラ化した。
ドクンッ
“龍”が鼓動すると全身から血が吹き出し全身をコーティングした。
「……龍の力がここまでとは」
ミイラ状態から回復した博士がポツリとつぶやきメスを構えた。
「こんのぉ!!化物が!!」
とち狂った戦闘員が“龍”に向かって魔法を放ち全てぶつけて煙にまみれた。
「は、はは。ざまぁ見や」
ザッザッザッ
煙から飛び出した“龍”は三段跳びの容量で戦闘員に向かい
「ひっ!!来るな…くるなぁぁぁぁぁ!!」
戦闘員の横をすれ違った。
「え?何が…」
戦闘員は三等分されてミイラ化してから地面に落ちた。
「……これは骨が折れそうだ」
ガチャン!!
「なっ!?これは!?」
博士の足は針まみれのトラバサミで動けなくなっていた。
ドスッドスッ
“龍”は一瞬私たちの方を見たあとに博士の方に向き直った。
……お兄ちゃんといえど、やっぱり怖いなあ。
“龍”は博士の前に立ち短剣でできた口を大きくあけた。
「…はぁ。…まさに生き地獄だな」
ズシュッズシュッ
部屋にはなんとも言えないような音が響き渡り研究者や戦闘員は動けなくなってしまった。
それと同時に私の胸元から魔石が飛び出してきてボッと赤い火が灯った。
!?
…でもこれは
水奈が水の球を飛ばす前に手を前に出して防いだ。
「朱音」
「大丈夫、多分これって」
火は跡を残しながら空中を駆け回った。
『あー、うん。俺、桜です。
なんかそっち大変そうだけどもうちょい頑張ってみて。
もうちょっとで多分なんとか出来ると思うから耐え抜いてみて。
てか、被害が大きくならないように戦ってほしいんだけど。
PS,気絶レベルでお願いします』
という文が目の前に現れて消えた。
「…だって。水奈、どうする?」
私たちはお兄ちゃんの言うことに従い地面に伏せながら作戦会議を開いていた。
「…皆、力を貸してください。
クー君を止めますよ」
水奈がそう言うと全員で頷き“龍”へ向き直った。
「私と神楽は後方支援。主に動きを阻害。
朱音と鳴でクー君を攻撃。
目的はクー君を気絶させること」
でも、倒すことよりも気絶させることの方が難しいって言うよね…
「でも、水奈」
「わかっています。
でも私たちのご主人様ですよ?
私たちが全力で攻撃して倒せると思いますか?」
…………
『無理』
そこで私たちはニカッと笑い“お兄ちゃん”に目を向けた。
“お兄ちゃん”も私たちに気づいて赤く光る目をこっちに向けてきた。
うーん、威圧感が半端じゃないよぉ…
「それじゃ、皆さん。
全力でお兄ちゃんを止めて全力で甘えましょう!!」
「うん!!」「当たり前じゃ」「…もち」
神楽が扇を振るいかまいたちを発生させ戦闘の始まりを告げた。
ガキンッ!!
うん。やっぱり硬いね…
私と鳴は同時に駆け出しとりあえず脇腹を槍でつついてみた。
ガキンッ
「くぅ〜…」
手が痺れるよぉ…
とりあえずこれをなんとかしないと…
「GYUAAA…O?」
反対側は強い光が発せられていた。おそらく鳴が電気を加えた突きを試したんだろう。
…あれ?なんか魔術の攻撃は耐性が低い?
「水奈、魔術の耐性はないかも」
「分かりました。
鳴、タイミングを合わせてください!!」
“お兄ちゃん”の周りには多数の水の弾が出来上がり目標へ殺到した。
「GYUO!?」
うん。やっぱり“お兄ちゃん”の魔術防御が低くなってる。
その証拠に短剣でできた鱗は剥がれ落ちていた。
そして水奈の攻撃が止んだ後は…
バチッバチッバチッ!!
「GYAOOOOOOO!!!!!」
“お兄ちゃん”を強い光が包むと煙を出しながら前のめりに倒れピクピクと動くだけだった。
今なら!!
私は素早く動き槍の石づきで後頭部を狙って振り下ろした。
ザッ
そして気づいた時には
「朱音!!」
私は地面に倒れ目の前には短剣でできた大きな口の奥に“お兄ちゃん”が居た。
「…お兄ちゃん」
あぁ、結局食べられるんだな。
ま、お兄ちゃんになら…
そう思って私はそっと目を閉じた。
sideout朱音
sidein桜
…で、何ここ?
てか、あの石を見て…うん記憶にない。
俺がボーっと座っているのは壁のようにタンスが四方にある座敷のような部屋だった。
部屋には薄型テレビが置いてあり博士が切り裂かれる場面が写っていた。
「はぁ、なんぞここ」
「ここはお前の頭の中…いや心の中といった方がいいんじゃろうか…」
声の聞こえた方を見ると紅い人魂のようなものがふよふよと浮いていた。
「…なんでこんなことに…」
「それはの…長話になるが良いかの?」
「あー、色々と説明したいから待って」
てか、そういう話をするならこたつでもあればいいのにな。
気が利かないなぁ…
「…流石、俺の心だな」
気がつくと部屋の真ん中にはこたつが用意されており机の上には日本茶とみかんが用意されていた。
「話すなら、この中に入ったらどうだ?ぬくいぞ?」
「……こいつは今の状況を理解しているのか?」
「話せる状況作ったなら使わなきゃ損だろ?」
「…クククッ。確かにそうだな」
人魂はヒゲの長いトカゲのような姿に変わりこたつに入った。
「ポカポカじゃの」
「だろ?」
「…これはいいものじゃな…」
俺とトカゲの人(?)がついつい和んでしまった。
「んじゃ、質問いいかな?」
「なんじゃ?わしゃが答えれるものならいいぞい」
お?この人(?)意外と話がわかる人であり、ノリのいい人ってのがわかったな。
「んじゃ、まず第1の質問。
あなたは誰?」
「この剣龍人の主“ヴァレリ”と言う。お主の名前は?」
「俺の名前は桜。まぁ、これからもよろしく?」
「お、おおう?よろしく頼む。」
まず、一つ目の質問は終わりだな。
次は…
「んじゃ、ヴァレリさん。二つ目の質問です。
なんで俺はここに居るんですか?」
「それはじゃの…」
ヴァレリさんは日本茶をすすりながらこっちを見た。
「話は長くなるんじゃが」
「できるだけ短くお願いします」
「うむ…
……手っ取り早く言えば、お主の中にパーツが揃いつつあるからじゃ」
「パーツ?」
なんか、物語の主人公みたくなってドキがムネムネなんだが。
「剣龍人とはその強すぎる力が故にその力、一つ一つがバラバラになって世界に散らばった」
…まさか
「その一つ、剣龍人の目がお主の中には入っとる」
「…ですよねー」
「しかも厄介なことに、その一つ一つに本質を閉じ込めるなんてバカな事を術者はやってのけたのじゃ」
…なんか落ちが読めたぞ。
「目は知識。つまりはわしのことじゃな」
「なるほど。
んで、あの石は何を司っていたんだ?」
「あれは血液。
司るものは理性じゃ」
つまりあれは…
うわ、めんどくさ…
「つまりあれはただ暴走してるだけと?」
「そのとうりじゃ」
はぁ、これまためんどくさい事に…
「ヴァレリさんはこの状況を変える術を知ってるんですか?」
「まぁ、知ってはいるが…正直どうなるかわからんぞ」
「…まぁ、たぶん大丈夫だろ」
その場その場で考えればいいし。
「で、その術は?」
「この空間で理性に勝つことじゃ」
…やっぱり筋肉論破じゃないですかヤダー。
てか、それ以外にも問題が山積みなんだが…
「…うん。やっぱり色々と問題がある気がする」
「そうじゃな。それに今のお主には生み出すの力は使えんしの…
元から無理じゃったんじゃな」
おっと、ここで初耳の情報だぞ。
俺はいつも道理に剣を生み出そうとしたが手の平には何もなくマナの循環も見えなかった。
…ん?マナそのものは見えてるってことは。
俺は手の平で温かい氷を作りそれがあることを確認した。
「まあ、お主が諦めるというならここでお主の最後でも見るとしよう。
お主視点の映像じゃがな」
「いやいや、別に諦めませんよ。
その理性?それの場所さえわかれば大丈夫ですね」
「…お主、それは本気で言っとるのか?」
えー、自分からふっといてそんなリアクションしちゃうのかよ…
「いくつか忠告じゃがお主がここで負けたら主導権は完全に理性に奪われ死を意味するんじゃぞ」
あー、流石にリトライとかはないんだな。
いやまぁ、問題はないだろ。
「それにここでモノを作ってもそれはまがい物じゃ。
あやつには一つとして通じんぞ」
「あー、その手もあったか。
いや、まぁ大丈夫だろ。
手っ取り早く言えば剣の力を使わずにそいつを倒せばいいんですよね?」
「…それはそうなんじゃが」
となればもう一つの眼を使えば大丈夫だろうし早くしないといろいろとね。
画面を見てみれば戦闘員が細切れになっていた。
うん、精神的にまずそうな場面になってるし。
「とりあえず、ヴァレリさん。
今すぐにでも理性と戦いたいんですが」
「…死に急ぎたいなら本人の自由にさせるのもわしの仕事か」
ヴァレリさんはため息を付きながらとても失礼なことをいいやがって。
まぁ、目にもの見せてやんよ。
「わしの手を握れ。
一瞬でやつのところまで連れて行ってやろう」
画面を見ると俺が朱音たちを見たので俺はちょっとした魔術を創り発動させた。
「…どうした?こんのか?」
「…うし、今行きますよ」
俺はヴァレリさんの手を握り目をつぶった。
その瞬間、脳が揺れ体が揺れた。
「…ついたぞ」
「…おふ」
うっは、気持ち悪…
この車酔いとは違う何とも言えない気持ち悪さは何なんだよ。
てか、それもだけど…なんというか…
『…………』
その殺気やめてもらえないですかね!!
いろいろと気持ち悪いんですが。
目の前には四本足で黒く鈍く光る剣を全身に纏った龍がいた。
尻尾の先には斧が握られており俺の厨二病心がくすぐられた。
「わしができることはここまでじゃ。
後は頑張るんじゃぞ」
「え、ちょ」
ヴァレリさんが消えると同時にその龍はすごい勢いで走り出してきた。
「だー、もー!!いきなり来んな!!」
俺はまず時を止めてその龍の背後に回りありったけの魔術の槍を創り上げた。
『!?』
「悪いな、今は時間ないから速攻でかたずけさせてもらうよ。
まぁ、次にあったら遊ぼうか」
俺は龍に全弾一斉射撃をした。
するとまぁ、龍は。
『…!?……』
「逃げようとするよね」
龍は自分の影に足を縫い付けられ一切の身動きができないでいた。
てか、俺ならこれには歯向かおうと思わないもん。
「じゃあの」
俺は龍がちゃんと跡形もなくなるように丁寧に殺し尽くした。
「ほい、これでいいんじゃないかな?」
「……お主化け物じゃの」
「うお!?
いきなり話しかけないで下さいよ。びっくりするじゃないですか」
今の俺は気配探知切ってるからヴァレリさんが近くにいることがわからなかった。
「ククク、はははは!!
面白くなってきたのぉ。お主、名はなんといったか?」
「え、あーっと。桜です」
「そうかそうか。
これからもよろしく頼んだぞ、我らが主サクラ」
ヴァレリさんがそういうとふと足元の安心感が無くなり下に落ちてしまった。
だから少しでもいいから休ませてくれって!!!!
で、まぁ。目覚めたらこうなるよね。
「…やっほ、朱音。ただいま」
なんで俺は朱音の上に馬乗りになってんの!?
全身は切られたみたいってか切られてるし!!
朱音は朱音でなんか涙ぐんでるし…
「おにい……ぢゃん゛…」
そしてこの疲労感である。
なにこれ…
「わり……なんか無理そう……」
「へ?お、お兄ちゃん!!」
後は色々任せた。
俺は………