表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【夢幻の大陸詩】 月姫楽土の子供たち  作者: 水城杏楠
一章  惑いの中で
3/51

 月霊ルーシファーは、月明かりの精霊である。

 それは、月姫の愛した地とも言われるこのサーラ国にとって、唯一の絶対的存在にして生きるための糧そのものだった。

 月の暦を使うサーラ国では十五日、三十日が節目とされ、十五の倍数は特別な意味を持つ。三十日ごとに訪れる満月の夜には聖月祭が行なわれ、三十日ごとに訪れる新月の夜はひっそりと静謐の中に身を置き、外出を控える。また子供は十五歳で一人前となり、仕事を始める。

 月霊ルーシファーの姿を見る金の瞳と月霊ルーシファーの声を聞くことができる耳を持っているのが、月明かりの精霊の娘と言われる月姫の巫女である。

 彼女たちは月に住む一族とされ、まだ世界ができたばかりのころ、月よりこの世界に舞い下りた月霊ルーシファーの娘はまだ文化を知らない人間を愛し、子を成した。月姫の巫女はその末裔であるがゆえに、月と同じ金色の瞳なのだという。

 月姫の巫女たる証は、その金色の瞳だった。

 月から舞い下りた娘の名をシスティザーナ、この国の言葉で聖月の乙女という。

 そしてまた、月明かりの精霊は時と記憶をつかさどる精霊でもあった。

 それゆえに、月姫の巫女はシスティザーナの記憶をすべて、受け継いでいる。けっして他人には話すことのない永遠の記憶を。

 哀しみや歓びや、愛や憎悪のすべてを。

 天から舞い下りた月姫の、そうした記憶を、彼女たちは持っている。

 そして今日、その記憶を受け継ぎ、金色の瞳を宿す女性の名を、システィザーナ・アンディア・ルーシファーという。

 秋、暦の始まりは、豊かな果実の月。最初の銀の日を迎え、民はみな一斉に一つ年を重ねる。

 月姫の巫女は三十歳になっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ