21 魔法少女、片付けをする
サーチェさんと一緒に住むことになったので、気になったことがあるので尋ねる。
「もしかして、サーチェさんって、エルフなの?」
初めは気付かなかったけど、話しているときに耳が長く、尖っていることに気付いた。
「あら、知っていたの?」
だって、金色の長い髪に少しとんがった耳。
まさしくファンタジーの世界に出てくるエルフだもん。
「あなたの世界にもエルフがいるの?」
「いないけど、物語や伝説に出てくる種族です。エルフは美人で、綺麗な人が多いって。サーチェさんは美人だから」
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね」
満面の笑みだ。
別にお世辞を言ったわけではない。
本当にサーチェさんは綺麗だ。
それから、わたしは洗い物を片付け、寝る場所について尋ねる。
「今日はそのソファーで寝て。部屋は2階の物置になっている部屋があるから、明日は、そこを片付けましょう」
……2階、……物置、嫌な予感がする。
1階は酷い状況だった。
階段にもいろいろとあった。
わたしは見ないようにしたけど、明日は確認しないといけない。
わたしはサーチェさんに部屋の明かりの消し方を教わる。
壁にスイッチがあり、押せば明かりが付いたり消すことができる。
わたしは部屋の明かりを消すと、ソファーの上に倒れ、今日洗濯した大きめのタオルケットを被る。
そこに子熊化したくまゆるとくまきゅうがタオルケットの中に潜り込んでくる。
わたしはくまゆるとくまきゅうを抱きしめる。
安心する。
1人だったら、心細くて泣いていたかもしれない。
「くまゆる、くまきゅう、ありがとうね」
「「くぅ~ん」」
いろいろなことがあった。
幼いときにお母さんが亡くなって、お父さんと2人だけになった。
でも、魔法少女になって、くまゆるとくまきゅうに出会えた。
くまゆるとくまきゅうのおかげで寂しくなくなった。
でも、お父さんが殺された。
そのときもくまゆるとくまきゅうが傍にいてくれた。
猫神様と魔法少女に襲われても、わたしを守ってくれた。
でも、くまゆるとくまきゅうはわたしを守るために死んだ。
だけど、今はわたしの胸の中で生きている。
今度は絶対に守る。
二度と、くまゆるとくまきゅうが死ぬところは見たくない。
でも、この子たちは、同じことが起きたら、わたしを守ってくれると思う。
だから、くまゆるとくまきゅうが生きるために、わたしは強くならないといけない。
そんなことを考えながら、眠りに就いた。
体が揺れる。
目を開くと見知らぬ天井。
天井を見ていると、わたしの顔を覗き込むくまゆるとくまきゅうがいる。
「おはよう」
「「くぅ~ん」」
わたしはソファーから立ち上がり、背を伸ばす。
他人の家で、自分のベッドじゃなかったけど、眠ることができた。
これも、くまゆるとくまきゅうが一緒にいてくれたからだと思う。
わたしはくまゆるとくまきゅうの頭を撫でると立ち上がり、窓を開け、部屋の空気を入れ替える。
窓の外は見知らぬ風景が続く。
本当に異世界に来たんだ。
「それじゃ、朝食の準備をしようか」
「「くぅ~ん」」
わたしは勝手に食材を使い、朝食の準備をする。
昨日も思ったけど、ちゃんと水道が完備されている。
ボタンを押すと蛇口から水が出てくる。
水道管が繋がっているわけがないから、地下水でも汲み上げているのかな?
そもそも、この水って安全なの?
海外の水事情を見たことがあるけど、水道水を飲めるのは日本ぐらいだと聞いたことがある。
まあ、サーチェさんが普通に水を飲んでいたから大丈夫だと思うけど。
あとこの世界はパンが主流なのか、パンの在庫はたくさんあった。
お米はないのかな?
異世界に転移、転生した日本人がお米や醤油、味噌を欲しがる理由がなんとなく分かる。あとカップラーメンとか。
わたしは思い出す。
元の世界の家にあったものを全て異次元ボックスに仕舞ったので、お米や醤油も味噌も異次元ボックスに入っている。
長持ちする物は安いときに買い置きもしていたので、予備もあるけど、増えることはないので大切に使わないといけない。
わたしはパンを切り、卵を焼き、サラダを作る。
朝なら、このぐらいで十分だ。
わたしは朝食をテーブルに並べると、階段を見る。
この上にサーチェさんの部屋がある。
わたしは階段を上り、2階に上がる。
2階の廊下にも物や本が転がっている。
昨日、見なくてよかった。
見ていたら、片付けたくなっていたと思う。
いくつか、ドアが見える。
でも、サーチェさんの部屋はすぐに分かった。
1つのドアの前だけ、ドアが開くために物が置いていないからだ。
他のドアの前には本や道具が無造作に置かれている。
わたしはドアの前に立つとドアをノックする。
「サーチェさん、朝だよ。朝食もできたよ」
「…………」
返事がないので、勝手にドアを開ける。
うん、予想どおりに部屋の中は物で散らかっている。
ここにも本が大量に床に積み上げられている。
だらしない女性の見本みたいな人だ。
物置の片付けもしないといけないけど、この部屋も片付けないとダメだね。
まずは、部屋の空気を入れ替えるため、窓を開ける。
「サーチェさん、朝だよ」
「誰?」
枕を抱きながら尋ねてくる。
「昨日からお世話になっているユナです」
「えっ、昨日のあれは夢?」
「寝ぼけているの?」
「あっ、ユナ」
「朝食もできているので起きてください」
「ええ」
サーチェさんが起きるのを確認したわたしは一階に下り、席に座ってサーチェさんを待つ。
しばらくすると、眠そうにしたサーチェさんが階段を下りてくる。
しかも寝間着のままだ。
まあ、自分の家だし、わたしも朝食を食べてから、着替えをしていた。
「用意してくれたの?」
「簡単なものだけど」
「十分よ」
サーチェさんは椅子に座ると食べ始める。
朝食を食べ終わると、今日の仕事に取り掛かる。
まずは、わたしが使う部屋を確認する。
部屋の中は物がいっぱいだった。
いろいろな道具や物が散らかっている。
しかも、ここにも本がある。
「くまゆる、くまきゅう、この部屋とサーチェさんの部屋、この家にある全ての本を昨日作った書庫に運んで」
「「くぅん!」」
くまゆるとくまきゅうは動き出す。
「サーチェさんは昨日の続きで、書庫の中で本の整理、今日は本を読んだりしないでくださいね」
ちゃんと着替えたサーチェさんに言う。
「やるから、そんな母親が子供に言うような表情で言わないで」
どんな表情なのか分からないけど、ちゃんとやってくれればいい。
「くまゆる、くまきゅう、サーチェさんがサボっていたら注意して。クッション代わりになっちゃダメだからね」
「「くぅ~ん」」
「それでも、サボっていたら、わたしに連絡を」
「「くぅ~ん」」
「わたしが、この家の家主よね」
サーチェさんの言葉は無視して、それぞれが動き出す。
まずは、本をドアの前に運び、くまゆるとくまきゅうに運んでもらう。
「これは、外に物置を作ったほうがいいかな」
家の外には1階にあった道具などが放置されたままだ。
わたしは一度、外に出ると、サーチェさんに書庫を作ったときと同様に道具を仕舞う倉庫を作る許可をもらう。
「いいわよ」
サーチェさんから許可をもらうと書庫の隣に道具を仕舞う倉庫を作る。
倉庫に中には簡易的な棚も作る。
「くまゆる、くまきゅう、本以外の物はここに運んでおいて」
「「くぅ~ん」」
細かいものはくまゆるとくまきゅうに任せ、大きいものはわたしが異次元ボックスに仕舞い、倉庫に運ぶ。
ちらっと書庫を覗いてみたけど、サーチェさんはちゃんと本を並べていた。
わたしは部屋に戻り、片付けを再開する。
花瓶なんて、サーチェさんに花を飾る趣味なんてあるのかな。
ないから、放置されていたんだと思う。
それとも、昔は花瓶に花を飾るようなことをしていたのかな?
せめての救いは枯れた花が刺しっぱなしになっていなかったことだ。
ちなみにわたしも、花を飾る趣味はもっていない。
花より団子じゃないけど、お金を払うなら食べ物のほうがいい。
漫画やゲームに使いたい。
お父さんは漫画やゲームが好きだったから、その手の理解はあった。
サーチェさんはエルフでした。
※異世界編より、投稿は2~3日おきに投稿させていただきます。
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